- Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001105049
感想・レビュー・書評
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シリアの少年が主人公。政治が腐敗している中、イキイキとした庶民の生活を日記で綴る。生きることは素晴らしいこと。そのことを伝えてくれる大人がたくさん出てくる。
終わり方に余白がありすぎる気がする。
一方で男たちの性欲のものすごさも愉快にきっちり描かれていて、笑ってしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ダマスカス、シリアなどを舞台とした作品です。
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シリア・ダマスカスの旧市街のパン屋の息子14歳の少年が主人公。
彼の14歳から17歳までの日記。
パン屋の職人の父、きれいな母、妹のライラ。日曜には教会に通う家族。
彼は詩が大好きで、(特にハリール・ジブラーン)、自分でも詩を書く。
学校の成績が優秀で、新聞記者になることを夢見ていたが、パン屋の父に辞めさせられてしまう。
しかしパン屋の配達から、彼は新聞記者のハビープさんと知り合い、彼のやりたかったことが少しづつ、できるようになっていく。シリア革命の不安定な時勢で。
友人マハムートは芝居を書き、ヨゼフは将校に憧れている。
カーティブ先生は、生徒たちの可能性を信じ、いろいろな機会を与える。
それにより傷ついたり、勇気や自信になったり。
一番の親友であり尊敬しているのはサリームじいさん。
若いころは御者をしていた。いろいろなことを知っているし、話を聞かせてくれて、きちんと怒ってくれる人。
怒り方がふるっていて、みんなの前ではないところで、ちゃんと話してくれる。
彼が一番愛している少女はナディア。
父親は秘密情報機関で働く。
後に収監されるスズメを連れた変人。
「字を知ってりゃ、わしはいまでも、山や原っぱや谷間だけじゃなく、
バラのとげひとつひとつまで思い出すことができるんだよ。それにしても中国人ってのは、偉大だなぁ」というサリームじいさんの言葉から、日記をつける決心をした。
彼から見た、シリアの生活、父親や母親など大人、政府、彼の夢、価値観、怒りなどありとあらゆる普通のものが描かれていて、まったく知らないシリアの生活を一緒に暮らしているような気分にさせてくれる。
キリスト教徒の家庭で育ち、イスラムの習慣を外から見られる立場であるという幸運でありながら、自身もの習慣に組み込まれて生きなければならない部分もあるという不幸。
そしてシリア政府の元で生きる貧しい家庭の悔しさ。
それをはねのける地下新聞の発行。
彼の著しい成長記を読みながら、現在のシリアの子どもたちを想うと辛い気持ちでいっぱいだ。
*これはちょっとしたサプライズだったのだけど~
今回、読了したのでブクログにまとめようと検索したら、自分のHNがでてきてびっくり。これから読む本として2年前くらいに登録していたものだった。
そうとは知らず(すっかり忘れて)、今回図書館で手に取り、読もうと思った自分がいた。
読むことができてとてもよかった一冊だった。
下のメモ書きがあったのだけど、若林ひとみさんの別の訳本からこの本を読もうとしていたのか、何がきっかけで「これから読む本」に分類したのか、不明・・・
「同じく若林さんの訳による『片手いっぱいの星』は、シリア出身で現在はドイツに住む作家ラフィク・シャミが、故郷での少年時代を追憶して書いた物語です。不安定な政情のもとで、かけがえのない人生を生きるつましい人々の日常が、14歳の少年の日記という形で生き生きと描かれています。若林ひとみ」 -
圧政下のダマスカスに暮らす14歳の少年が主人公。物語は彼の綴る日記という形式で進む。近所に住む老人との深い交流や牢獄帰りのジャーナリストとの出会いを経て、やがて彼はペンを武器に権力と闘う道を志す。
旅行者に詐欺師に行商人に… 人々でごった返す市場、モスクと教会、アラブ人の精神… 様々なことが織り交ぜられダマスカスの人々の暮らしぶりが描かれており、通りの埃っぽさと喧騒が伝わってくるようだ。主人公の、いつも前を向いて進む姿に胸を衝かれる。