こわれた腕環―ゲド戦記 2

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001106855

作品紹介・あらすじ

アースシー世界では、島々の間に争いが絶えない。力みなぎるゲドは、平和をもたらすエレス・アクベの腕環を求めて旅し、暗黒の地下迷宮で巫女の少女アルハと出会う。小学6年、中学以上。

感想・レビュー・書評

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  • ゲドがテナーに贈った
    「あんたは、決して、残酷さや闇に奉仕するために生まれてきたんじゃない。あんたはあかりをその身に抱くように生まれてきたんだ。」
    という言葉が好き。
    「とうとう、わたしたちふたりを自由にしてくれたね。」「ひとりでは、誰も自由になれないんだ。」
    とかも好き。

    まだアルハなテナーが最初、ゲドに惹かれつつ彼を迷宮に閉じ込めていたぶろうするのも典型的な純真無垢&天真爛漫なヒロインじゃなくて良かった。

    だからってテナーの本来の姿が残酷だとは思わないし、実は優しい女の子でした!って弁護したいわけでもないんだけども… 
    テナーが三人の罪人を生き埋めにした後、夢で水と食べ物を与えなくては、てうなされるシーンが、テナーの魂の本来の清さを示してると思う。でも、狂っていたとはいえそれでテナーの罪が帳消しになるとは思わないし、テナーがめちゃくちゃ後悔してます!アピールしてたら冷めてたかもしれない。テナーが「いけないこと」をしたから罰として孤独のままにして欲しい、とわりと淡々と言い出したところがストイックで好きかな…

    迷宮を抜け出した後、テナーとゲドが意気揚々と内海に帰るんじゃなくて、ギクシャクしてるのもなんかいいなぁ。

    シリアスな物語だけど、ゲドがテナーに魔法でドレスを着せたり、テナーがゲドに抱きとめられて赤くなったり、可愛いなコンチクショウ!てなるシーンもある。
    あの!ゲドが!女の子にドレス着せた!

  • 凡俗なファンタジー小説なら、ゲドとテナーが墓を脱出したところでハッピーエンドとなるのに、そこからじっくりとテナーの心の描写をするところが素晴らしい。

    ++++
    彼女が今知り始めていたのは、自由の重さだった。自由は、それを担おうとする者にとって、実に重い荷物である。勝手のわからない大きい荷物である。それは、決して気楽なものではない。自由は与えられるものではなくて、選択すべきものであり、しかもその選択は、必ずしも容易なものではないのだ。坂道をのぼった先に光があることはわかっていても、重い荷を負った旅人は、ついに坂道をのぼりきれずに終わるかもしれない。
    ++++

    自由への不安と奴隷の安逸さへの誘惑から、思わずゲドへ向かってナイフを突きつけるテナーの姿こそ、この物語のクライマックスだと思った。

  • 「ゲド戦記」の2巻目。
    テナーの少女時代の物語。
    大巫女アルハの生まれかわりとして5歳の時から親元を離れ、古い神殿で一生を送る定めでした。
    孤独な生活の中で次第に成長し、高位の巫女が権力を楽しんでいるだけで信仰心がないことに気づき、衝撃を受ける。
    そんな頃、誰も入れないはずの地下墓所に見知らぬ男が入り込んでいることに気づく。
    魔法使いとして力を蓄えていた青年期のゲドとの出会い。男子禁制の神殿のさらに大巫女以外は入れない迷宮で、殺さなければならない相手との緊迫したやりとりが続きます。
    ゲドは一巻目よりはずっと成長しているが、魔法の使えないところに閉じこめられる危険を冒して太古の腕輪のために乗り込んでくるとは、ある意味冒険家みたいな。
    原題はアチュアンの墓所といった意味。
    少女の視点なので感情移入しやすいが、特異な状況をこれだけ描写されると何とも凄い…ぐっと来ます。

  • 暗い地下墓所の空気、
    多くを語らない男の雰囲気、
    杖の先から放たれる光の眩しさ。
    子どもの僕はそういうものに心動かされたなあ。
    ただの紙と、その上に文字の羅列。それだけなのに。
    本とはそういうものか、と考える。

  • Iとはまた違うお話しの展開も、夢中で読み終えました。ルグウィンの、物語の世界へ読者を引き込む力に圧倒されます。一度読んだだけでは拾い切れない、何か取りこぼしているのではと思わせる濃厚な世界が広がっていました。Iから成長したゲドの姿に寂しさも感じましたが、こうして偉大な魔法使いになっていくのだろうなぁと思わずにはいられない続編でした。自由とは、人の闇とは、孤独とは…何度も読み込んでいきたい作品です。時を置いてまた読みたいです。なんにせよ続きが楽しみ。神殿や地下迷宮の描き方も素晴らしかった。闇の世界をゲドとアルハとともに歩いたようでした。胸に残ります。

  • ううーん、やっぱりあんまり手放しでは賞賛しきれない。多分、これより後の時代のファンタジーをたくさん読んでしまったからなのかも、と思います。
    玄室の美しさ、テナーの選択とか胸を打つところはあるのだけど、好きかと問われると唸ってしまう…
    でも続き読みたい。
    マナンをからかうところで、「ホー、ホー、ほていさん」とからかっているんですが、訳者さん上手いなぁと思った。なるほど、ほていさんなら日本人にもわかりやすい。

  • 第19回奈良県立図書情報館ビブリオバトル テーマ「こわい」で紹介した本です。
    http://eventinformation.blog116.fc2.com/blog-entry-839.html

  • 2014/07/27
    自由は与えられることではなく選択していくこと。これ、中学生の必読書にしてほしいな。幼い頃は、親の庇護を受けて、自分では気づかないけど、しかれたレールの上をただひたすらに走っていく。でも、おとなになるにつれて、選択を迫られることが増える。なるほど、自由とは選択の連続である。だから、子どものうちから自分で考えて決める訓練をしておかないといけない。また、ゲドが若いときにしたように、自分自身としっかり向き合って、理解しておくことが大切である。
    それにしても、宗教や村の伝統って何か怖いなぁと思った。自分の思ってる当たり前は本当に当たり前なのか、自分の価値基準を秤にかける意味でも、外の世界に出て、比べてみるべきなのかもしれない。

    2019/05/26
    生きて、この世にあるということは、思っていたより、はるかにすばらしく、不思議なことではないか。
    5年ぶりに再読。何だろう、このファンタジーの圧倒的な力強さ。テナーの葛藤があまりにもリアルでとっくに成人になった私まで苦しくなる。
    さて、あれから5年経った今、私は自由を謳歌するための選択ができているか、組織や慣習、読む必要のない空気に隷従してはいないか。自分の真の欲求に忠実に、人やものことと信頼を育める人でありたい。

  • テナーのものがたり。
    魅惑的な話でした。
    玄室の美しさ、見てみたい。
    テナーの心がよくわかって、
    マナンの最期なんて、涙が出そうでした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「魅惑的な話でした。」
      最初の3冊の中では一番好き。静かで信念を持ったゲドが格好良く見えました。。。
      「魅惑的な話でした。」
      最初の3冊の中では一番好き。静かで信念を持ったゲドが格好良く見えました。。。
      2013/04/09
    • hemiola7さん
      ◎nyancomaruさん◎
      私もこの巻がいちばんすきです。出会えたことがとてもうれしいです。
      ◎nyancomaruさん◎
      私もこの巻がいちばんすきです。出会えたことがとてもうれしいです。
      2013/07/22
  • 女性向け、というか、自分の限界・世界を決めちゃってきた人たち向け。かな。
    テナーがずっと痛々しくって辛い…!
    新しい生活に踏み出しても幸せになれないんじゃないかと不安になってしまったよ…

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著者プロフィール

1929年10月21日-2018年1月22日
ル=グウィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。

代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。

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