モモ: 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)

  • 岩波書店
4.19
  • (1980)
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本棚登録 : 8814
感想 : 1151
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001106879

作品紹介・あらすじ

時間におわれ、おちつきを失って人間本来の生き方を忘れてしまった現代の人々。このように人間たちから時間を奪っているのは、実は時間泥棒の一味のしわざなのだ。ふしぎな少女モモは、時間をとりもどしに「時間の国」へゆく。そこには「時間の花」が輝くように花ひらいていた。時間の真の意味を問う異色のファンタジー。小学5・6年以上向き。

感想・レビュー・書評

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  • 効率を追い求めるあまり心の余裕を失っていく現代人を諷刺した、ちょっぴり辛口のファンタジー。「親が子供に読ませたい本」というのはよく聞くが、これはもしかすると「子供が親に読ませたい本」かもしれない。私はか大人になってから読んだので、子供がこれを読んでどう感じるのか本当の所はわからないけれど。

    ひとの話を無心に傾聴するという特技だけで勇敢に戦うヒロイン・モモをはじめ、脇役の大人も子供たちも、美点も欠点もひっくるめて実に魅力的である。私のイチオシはカメのカシオペイア。30分先のことまでなら正確に予見できるという頼もしいような心もとないような微妙な能力を持ち、しかもその戦い方は、敵がどこを通って追いかけてくるかを予見してその場所にうずくまり、敵が自分につまずいて転ぶのを待つという前代未聞の戦法である。こんなに健気でキュートな戦士がほかにいるだろうか!

    ところで、大型書店のレイアウトは大体どこも同じだが、私が足繁く通う某書店では、絵本・児童文学コーナーは店の一番奥にある。そこに辿り着くには、1階の話題書コーナー、文芸書コーナーを通って2階へ行き、ビジネス書コーナー、参考書コーナーを経由して2階の端っこまで行かなければならない。

    その間に必然的に多くの本のタイトルを目にするのだが、改めて眺めてみると、これがまた何とも示唆的なのである。「必要な知識を15分でインプットできる速読術」「本当に頭がよくなる1分間勉強法」「残業ゼロ! 仕事が3倍速くなるダンドリ仕事術」等々。「時間をお金で買う技術」なんてのもある。絵本コーナーでは、賑々しい音や光の出る幼児向け絵本(電池式)が目につく。それらを横目に通り過ぎてようやく児童文学コーナーに着くと、奥の棚にひっそりとこの本が置かれているというわけだ。

    時短系ハウツー本を否定できるほど、私は高尚な人間ではない。とはいえ、やはり殺伐とした感は否めないそれらの本をかきわけて行った突き当たりにエンデの「モモ」があるという事実は、私の心をほんのりと暖かくしてくれる。もちろんそれは、単に本屋のレイアウト上の必然に過ぎないのだが、発行されてはすぐに消えゆく流行本の間をすり抜けて最奥部に辿り着いた者だけが「モモ」を読むことができるというのは、なかなか面白い話ではないかと思うのだ。

    大人がめったに足を踏み入れることのない本屋の奥で、今日もモモやマイスター・ホラが笑って手を振っている。カシオペイアの甲羅には「ズット ココニイマスヨ」と、この本を読んだ人にだけ見える文字が浮かんでいる――そんな光景を連想させてくれる、楽しい物語だった。

    • 佐藤史緒さん
      ベストセラーは置いてない本屋。
      うわー面白そうじゃないですか!
      猫丸さんは関西猫だったのですねー^-^
      ベストセラーは置いてない本屋。
      うわー面白そうじゃないですか!
      猫丸さんは関西猫だったのですねー^-^
      2020/09/05
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      佐藤史緒さん
      ヴィレヴァンを上品にした感じかな、、、
      猫は、日本の全てを関西化するコトを目論む秘密結社「関西ファシス党」の、、、
      佐藤史緒さん
      ヴィレヴァンを上品にした感じかな、、、
      猫は、日本の全てを関西化するコトを目論む秘密結社「関西ファシス党」の、、、
      2020/09/05
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      佐藤史緒さん
      にゃーん

      大阪人の弱点は、多分「雪」
      チョッと降っただけで三歩進むごとに転んでしまいます。
      雪かきだなんてシャベル...
      佐藤史緒さん
      にゃーん

      大阪人の弱点は、多分「雪」
      チョッと降っただけで三歩進むごとに転んでしまいます。
      雪かきだなんてシャベルでもスコップでも無理!尊敬の眼差しになります。
      2020/09/05
  • 「はてしない物語」でも似たことを書いたが、児童文学という枠だけでは捉えられない、普遍的な作品だと思います。

    子どもも大人も読む価値があると思うし、お子さんのいらっしゃる親御さんは、一緒に読むだけで、心穏やかに楽しく人生を送るひとつの指南を得ることができるでしょう。

    時間を可視化したような美しい表現を想像することで、時間の大切さを知り、時間を節約することで、心に余裕が持てなくなり、逆に人生を悲しくつまらないものにしてしまうこと。

    また、そうした人達が集まった場所の、どこかイライラした剣呑な雰囲気は、正に現代社会の通勤ラッシュに通じるものがあることなど、今の世の中にも当てはまることを、1973年のこの作品で提唱していた、エンデ自身がマイスター・ホラなのではないかと思えるくらい、どこか哲学的で、予言めいた別格な凄みを感じずにはいられなかった。

  • 大人にも子供にもいろんな方に読んでもらいたいって思える本、バリバリ現代人の私の心にビシビシ突き刺さってくる物語で忘れがちな大切なことを思い出させてくれる本

    どんな自己啓発本やビジネス本を読むよりまず「モモ」を読んだ方がいいってくらい色んなことが学べる!

  • 18冊目『モモ』(ミヒャエル・エンデ 著、大島かおり 訳、1976年9月、岩波書店)
    時間どろぼうの”灰色の男たち”にたったひとりで立ち向かう少女モモの活躍を描いた児童小説。
    ファンタジーの体をとってはいるが、内容は強烈な風刺劇。日々に忙殺され心のゆとりを無くした現代人に対し警鐘が鳴らされている。
    モモと街の人々との交流はとても可愛らしく、またロマンチックでもある。第一章に流れる豊かな幸福感には、それだけで涙腺が刺激されてしまった。

    〈たとえおまえがなんであれ、ひかれ、ひかれ、小さな星よ!〉

  • 少し難しいけど、何回か読むとわかる。

  • 30年以上前に読んで、感動した記憶が。娘にも読ませたくてもう一度読んでみました。
    いやー、ショック!ストーリーを全く覚えていない。
    こんな難しかったんだなぁ。あの頃は、汚れてなかったんだろうか。

    かめのカシオペイアがいい味出してた。
    モモは、どんなに素敵な人生を送ったのでしょうね。

    時間は大切だけど、ゆっくり流れる「時」こそ大事にして、丁寧に生きていけたら幸せだね。これから、そういう時は、モモを思いだそう。

    娘にはまだ難しいかなとも思ったけど、とっても純粋なのでさらりと感動 しちゃいそう。

    再読も良いですね。新たな読書の楽しみ方を教わりました。

  • あるビジネス雑誌の裏表紙に、「成功する人は、週末を無駄にしない。」という広告がありました。私はそれを見るなり「この時間どろぼう!」という気分になり、『モモ』を読むことに決めました。

    『モモ』は、小学生時代、日本語補習校の図書室にあった蔵書の中で一番記憶に残っている本であり、
    2020年に読んでよかった本ベスト5には入る『ゆっくり、いそげ』で著者が取り上げられていて感動の再開を果たした本であり、
    再読したいとは思っていたんだけど、ついにその想い果たしました。

    「忙しい」は「心が亡くなると書く」。そんな言葉が耳に痛い今読んで思うことは、シンプルにやっぱり『モモ』は面白い!ストーリーにのめり込めた素敵な時間でした。モモ、ありがとう。

    あと余談ですが、物語に登場するカメの名前がカシオペイアで、「あれ、時計のブランドもCasioだからギリシャ語で時間を示唆する何かなのかな?!」と思って調べたら「Casioの由来は創業者の名前の樫尾」でした。

  • ずーっと知ってたけどずーっと読んでこなかった本。
    そしてドラマ「35歳の少女」でモチーフとなっていたので手に取った。

    児童文学作品だからすぐにさらっと読めるだろう…と思っていたけど、360ページという、小学生が読むにはかなーりボリュームのある本だった。
    だけどハリーポッターとか読むんだし、本好きな子にとっては大したことないのかな?


    時間が「聴こえる」女の子モモが、時間どろぼうに立ち向かう冒険小説。

    時間の大切さと、想像力の大切さ。
    子どもの頃よくしていた「空想」って、大人になるにつれいつのまにか全然できなくなったなあと気づく。

    誰にも操られない、自分だけの時間を大切にしよう。
    自分でしっかり操れるようになろう。

    子ども向けに限定してしまうにはもったいないくらい濃い内容で、むしろ忙しい現代社会を生きる大人向けの作品のように思えた。

  • 「時間」をテーマにしたファンタジー。名作です。

    私が生まれたころ、1970年代の作品ですが、まったく古さを感じない、まるで現代のこと、あるいは、これからの未来のことを描いたような、不思議なお話です。

    「時間」は誰にも平等に与えられた大変貴重なリソースで、誰もがそれを蓄えることも、増やすこともできない、大事な大事なものです。

    しかし「時間」の価値を、人は常に考えます。

    無駄を削り、効率を高め、「時間」の価値をどんどん高めようとしています。

    しかしそこで高められた(ように見える)「時間」の価値は、果たしてすべての「時間」に対して平等に還元されているのでしょうか?

    誰かにとって大事な「時間」、貴重な「時間」は、その人にとって、大事であり貴重であって良いもので、誰もが、誰かにその「時間」の価値を評価され、無駄だと他人に判断された「時間」をその他人に奪われるようなことはあってはならない、そんなことを考えさせられる、なんだかとっても不思議なお話です。

    心の豊かさは、経済的な豊かさとは必ずしも一致しません。

    「時間」の価値を、誰かの尺度ではなく、自分自身の尺度でしっかりと見極められる、そんな心の豊かさを持ち続けたいなと、モモを読んで思いました。

  • 言葉が熟すまで待たないといけない…という部分が、何度読んでも印象に残ります。
    星の声に時間の花など、美しく壮大な情景が大好きです。
    翻訳本なのに日本語が綺麗で、特に各章のタイトルがいい味を出しているな、と思って読み返しました。

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