おやすみ おやすみ

  • 岩波書店
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001112443

感想・レビュー・書評

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  • 表紙の、一見、奇妙に見える絵に気後れを感じる人もいるかもしれませんし、いろんな動物の眠り方を紹介する内容というのも、前情報で知っていたのですが、これ、予想以上に良いですよ。

    まず、惹き付けられたのは、本書の大半を占める、落ち着いた色合い(藍鼠が近いかも)であり、これがなんだか、目にも優しく、ほっとひと息つきたくなる気分にさせられて、それを背景に、見開きの左手には、「シャーロット・ゾロトウ」の詩的な文章を(ちなみに文字のフォントも素朴さを表したかのようで良い)、その右手には、「ウラジーミル・ボブリ」の、これまた優しい色合いに、ピースフルな和む絵柄が印象的であり、これの繰り返しで本書は進行します。

    最初から見てみると、幸せそうな寝顔が印象的な、巣穴で眠るクマは、永い冬の終わりを願いながらも、まずはゆったりと時間をかけて、自分の英気を養っている様子が、その絵から感じられる。

    次に、何羽も重なり合うような構図に、思わず心も安らぐ、ハトたちは、実際からだを寄せ合って眠るそうなので、それをそのまま再現しているだけといえば、そうなのだが、これまた幸せそうな寝顔が印象的。

    その次のサカナは、目をぱっちり、口をぱっくりと、そのユーモラスな様子に和みつつも、ハト同様、お互いにからだを寄り添っている姿が印象的で、眠る事にも愛があるんだと感じさせる。

    そして、この後も様々な動物たちの眠り方が登場し、ウマは、やはりお互いに顔を寄せ合いながら、立ったまま寝ていて(しっぽでハエを追い払いながら)、アザラシの、ひとりペタリと氷の上に寝そべる姿も、孤独な寂しさというよりは、どこか平和的な、のほほんとした安らぎを感じさせるし、シラサギの片脚ですらりと立って眠る姿は、ゾロトウの言葉通り、池にぽっかりと咲いた花のようで、読んでいく内に、この誰もが当たり前にしているであろう、『眠る』ということは、神聖で不可侵なものであると共に、誰もが、ありのままの姿をさらすことの出来る(防衛本能も活かしながら)、平和の象徴にも思われてきて、それは、眠る事で必ず訪れるであろう、明日への確かな希望のように感じられました。

    それから、いぬは、大好きな人のベッドの側で寄り添うように眠り、こねこは、家でいちばんあたたかい場所をよく知っていて(そして、のどをゴロゴロ鳴らして眠る)、それが人間との信頼の証であることは、私を嬉しく愛おしい気持ちにさせてくれる。

    そして、最後に眠るのは・・・


    本書の絵を書いた、ウラジーミル・ボブリは、ウクライナ生まれであり、オリジナルは1960年ながら、私の中では、時代に捕らわれない普遍性を持ち、目の付け所の素敵な児童文学作家、シャーロット・ゾロトウと共に描いた、この作品のメッセージの素晴らしさを、今こそ未読の方にも感じて欲しいと思いました。

    それは、眠るということが、どれだけ穏やかで、平和で、心安らぐ幸せな時間なのかを実感させられるとともに、互いに寄り添い、庇い、支え合って、その存在を尊重し合った、純粋で確かな美しさは、ごく自然な形で、今日まで続いてきたはずです。

    おそらく、それを失わせる事など容易に出来るのでしょうが、私はこれからも、それぞれの動物たちが安心して、幸せな気持ちで眠る事が出来るような、そんな世界を望み続けます。

    ちなみに、表紙の絵は、昼と夜の境目にも見えますが、私は、眠りに入る瞬間の境目だと思ってまして、それはまさに安心感を得られた瞬間でもあり、こういう瞬間の大切さに、もっともっと気付いてくれればいいのにな。


    『おやすみ おやすみ よいゆめを』


    私も、なんだか眠くなってきました。

    これを実感出来る幸せを、今まで以上に大事に噛みしめながら、私も、もっと平和について考えたい・・・

    ・・・おやすみなさい。

  • たださんのレビューで出会うことができました。ありがとうございます。
    表紙のあくびがまた可愛らしい。
    シャーロット・ゾロトウ(1915-2013)文 アメリカの児童文学作家、詩人
    ウラジミール・ポプリ(1898-1986)絵 ウクライナ生まれ、ロシア革命期に国外へのちにアメリカニューヨークへ移住 グラフィックデザイナー、アートディレクターなど多方面で活躍

    背景の色合いと動物たちの色彩が眼に優しくて特徴的なフォントも惹きつけられます。
    いろんな動物の寝ている様子があたたかくぬくもりが感じられて癒されます。
    句読点と一文字あけが効果的で余韻を漂わせます。
    音読しているとそのリズムが心地よくなります。
    包み込まれるような優しさの比喩でうっとりします。

    ガは「まるでちいさなはっぱみたい」
    シラサギは「いけに ぽっかりさいたはなのように」
    カメは「いしのようにしずかに」
    クモは「くろい インクのしみ みたい」
    「おやすみ おやすみ、よい ゆめを。」
    締めくくりの言葉で眠りに誘われます。
    平和な時間が続くことを祈るような素敵な絵本でした。

    • たださん
      ☆ベルガモット☆さん、こんにちは♪

      私の感想で読まれたと知り、とても嬉しいです。ありがとうございます(^^)

      この絵本、とても大好きで、...
      ☆ベルガモット☆さん、こんにちは♪

      私の感想で読まれたと知り、とても嬉しいです。ありがとうございます(^^)

      この絵本、とても大好きで、淡々と進行していく中でも感じられる、眠りの時間の心地好さは、当たり前なようでいて、決して無くしてはいけない大切なものだということも、強く実感した、まさしく平和の素晴らしさを教えてくれた、素晴らしい作品だと思います。

      また、機会がありましたら、他のゾロトウの絵本も是非読んでみて下さい。

      素晴らしいレビューをありがとうございます(^^)
      2023/05/17
    • ☆ベルガモット☆さん
      たださん、こんばんは♪
      コメントおねだりしちゃったみたいで、おつきあいありがとうございます!
      たださんのご指摘の「眠りの時間の心地よさ」...
      たださん、こんばんは♪
      コメントおねだりしちゃったみたいで、おつきあいありがとうございます!
      たださんのご指摘の「眠りの時間の心地よさ」「平和の素晴らしさ」に惹きこまれる、めくるめく不思議な時間でした。
      たださんのレビューの素晴らしさに触れ、この本を手に取るきっかけとなりました。また本棚お邪魔しまーす☆
      2023/05/17
    • たださん
      ☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます♪

      いえいえ、おねだりだなんて、そんなこと思っていませんよ。
      私も、スマホの電波の調子が良...
      ☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます♪

      いえいえ、おねだりだなんて、そんなこと思っていませんよ。
      私も、スマホの電波の調子が良いときに、また本棚お邪魔します(^^)
      2023/05/17
  • 生きとし生ける者たちの、安らかな微睡みの至福のときを描いた、アメリカの児童文学作家とウクライナの美術家による「眠り」をテーマにした絵本(原題:SLEEPY BOOk)。 ・・・クマ、ハト、サカナ、蛾、ウマ、アザラシ、シラサギ、バッタ、カメ、イモムシ、蜘蛛、イヌ、子猫たちの眠りの姿・・・「夜風がそっと木々を揺らし、星が静かに瞬くころ、〝子どもたち〟は、布団にすっぽり包まって、ぐっすりスヤスヤ眠ります。 おやすみ、おやすみ、よい夢を」・・・。

  • 詩のような簡潔て美しい文章に、親しみやすくて解りやすい切り絵ふうの絵が、すごくマッチしている。

  • みんな思い思いの場所で思い思いのかっこうでおやすみ。
    魚は目を開けて眠る。
    ツルは片足立ちで眠る。
    馬は互いを支え合って眠る。
    などなど、動物たちの眠るときの格好が分かる。

    シックな色遣いで、夜の月明かりの下の暗い世界の色。
    昼間見るには暗いけれど、眠るときにはぴったりの
    色遣い。

  • さまざまな生き物の眠るすがたが、特徴をとらえて美しい絵でかかれている。イヌは「だいすきなひとのベッドのそばで」眠る。安心安心。

  • 2023.1.26 4-3

  • モノトーンが珍しい絵本。いろいろな生き物が眠る姿の情景描写のことば選びがすてき。
    0歳5ヶ月。やたら手を伸ばして興味津々だった。

  • <SLEEPY BOOK>

  • かわいいイラストと味わいのあるセンテンス。スタイリッシュで入ってきやすい。

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著者プロフィール

1915-2013年。米国ヴァージニア州生まれ。ウィスコンシン大学卒業。出版社で50年以上にわたり児童図書の編集者として活躍するかたわら、絵本作家として60冊以上の作品を出版。主な絵本に『うさぎさんてつだってほしいの』(冨山房)、『かぜはどこへいくの』(偕成社)、『ねえさんといもうと』(福音館書店)、『あらしのひ』『いつかはきっと』(ほるぷ出版)、『はるになったら』(徳間書店)などがある。

「2018年 『かあさん、だいすき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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