ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫 46)

著者 :
  • 岩波書店
3.98
  • (56)
  • (41)
  • (57)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 442
感想 : 38
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (578ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140460

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読み終わった~~!
    うちの7歳児に読んでいるネズミのガンバと仲間達の三部作最終話。570ページを子供に音読するのはかなり長いぞ~~~~。

    こんども「ガンバと15匹の仲間達」なのですが、ノロイ戦で三匹離脱したので、代わりにノロイと一緒に戦った島ネズミたちが三匹加わったので、メンバーちょっと変わってます。
    しかしアニメの影響で私の脳内イメージがシジンは酔いどれべっぽこ文士のおっさん、イダテンとイカサマは同じ奴(実際この二匹はノロイ以前からの仲間で言動も似ている)のような気がしてしまい、読むにあたってのイメージ修正にちょっと手間取った(笑)

    挿絵は動物挿絵薮内正幸さんによる”ネズミそのもの”なのですが、儒学者のような髭のガクシャと、黒っぽくて耳からサイコロが見えてるイカサマ、でかくて前の方を走るのはヨイショ、でかくて後ろの方を走るのがマンプクくらいは見分けられるようになった!
    ちょっと残念なところは野犬たちの挿絵が獰猛というより可愛らしいってことか。うちの7歳児も「野犬かわいいね??」と言ってましたよ、映画版では怖い野犬だったんですけどね(笑)

    ★★★

    シジンの恋人、ナギサさんが南の島に渡ったっきり連絡が途絶えた。
    南の島に向かうガンバと仲間達。

    ナギサを探す謎かけ「汝ドウドウ鳥を見しや」(イカサマ流に言うと「おめえドウドウ鳥を知ってるかって聞いたんだよ」)。ナギサは”ドウドウ鳥”つまりは絶滅したと思われるニホンカワウソと行動を共にしていると思われる。

    ナギサとカワウソを探すガンバたちの行く先々であざ笑うかのように置かれるネズミやウサギ、イタチの死体。
    それは野犬たちの警告だ。彼らはただ狩る。犬だから狩る。ただ殺すためだけにカワウソを探している。ガンバたちがカワウソを探すから後をつける。そして見つかればカワウソもネズミたちも殺す。

    ガンバたちはカワウソを見たという一匹のネズミと行き会う。名はウキクサ。カワウソのが野犬に襲われるところを見たという。
    ウキクサの言葉に違和感を覚えるネズミたち。ウキクサは野犬のスパイなのか、カワウソへの情は本物なのか。

    ついにガンバたちはナギサを見つける、そして奇跡のようにカワウソを見つける。
    怪我をした父親と、娘のカワモ、そしてまだ幼い別家族のカモク。
    奇蹟のドウドウ鳥が生存していた!沸き立つネズミたち。

    しかしここは危険だ。野犬が来る。人間に見つかる。川が汚染される。
    野犬の来襲に、父カワウソは囮となり皆を逃がす。
    二匹のカワウソとガンバたは言い伝えの「豊かな流れ」を目指す。

    そしてカモメのキマグレ。ガンバたちの前に気紛れに表れては彼らをバカにする。
    「翼を持たぬ者は嫌だねえ、私のくちばしでちょんとつつくくらいの地面しか見られずに、それでもいつでも隠れようとして。かわいそうもんだねえ地を這うものたちは」
    しかし我らがネズミたちも負けてません。「おめえは森をみてもその中を知らない、岩陰に何が生きているか、ちっちゃい木の下にうごめく虫の事も知らない、土の柔らかさ、あったかさ、冷たさ何も知らない、おめえが上から見ている物なんてつまらんもんよ」(byヨイショ)
    憎まれ口を叩き合いながらも、キマグレは毎日ネズミたちの元を訪れ共にカワウソを守りカワウソたちが住める場所へ向かう。

    しかしカワウソたちの疲労は限界だ。
    自分たちは、種族最後の二匹ではないのか。仲間はどこにもいないのではないか。永久に自分たちは迷子なのではないか…

    旅の末に彼らが辿りついた「豊かな流れ」。仲間のカワウソたちはいるのか…。

    ★★★

    今回は直接的に自然破壊、絶滅種への警告が語られます。
    人の中にも自然と共に生きられるものはいるのか。気づくのか。
    物語は夢のような理想郷で終わりますが、むしろそれが現実にはもうそんなところはないんだよ…と言われているような気もします。

    またシリーズ最終話のためか今回の話ではネズミたちの心情が語られます。
    リーダーガンバは、ノロイと闘うために初めて海を見た時は船を走り回り「これもこれも海なのか~~」と感動していましたが、今度は大川をみて「この水どこからくるんだ!どうしてこんなにたくさん水があるんだ!なくならないのか~~!」と驚いてました(笑)。
    読むのもつらくなるような焦燥の旅をひっぱれるのもガンバだからこそ。とても信じられない夢物語でも信じてるふりして大声出してみんなを引っ張ります。

    シジンはガンバたちと行動を共にする前は、旅の語り部のようなことをして、そして港ネズミの総まとめ、忠助オヤジの後継ぎとされていたらしいです。「冬の嵐を騙したネズミの話」はかわいらしくてそのまま短編になりそう。

    船の中ではイカサマが自分とサイコロとの因縁を語ります。
    自分がまだ子ネズミの頃、瀕死の年寄ネズミから渡されたサイコロ、そのネズミもやはり子ネズミの頃に瀕死の年寄ネズミから渡されたという。自分も死ぬ前にきっと若いネズミにこのサイコロを渡すのだろう。…まあそんなイカサマとサイコロの因縁は驚きの結果へと向かうのですが。

    さらに今回頑張ったのは食いしん坊で足が遅いマンプクです。
    「おれが美食家になったのは、いや食いしん坊になったのは物心つくまえに母親がいなくなったせいらしいよ。おれはやせっぽち腹空かして泣いていた。毎日毎日泣いていた。
    (…中略…)
    おれは眠ってうまいものの夢をみていた。夢も見ながら死んじゃうんだろうと思って眠っていた。そんな俺の所に、やっぱり俺みたいに腹を空かした子供ネズミがやってきて俺に怒鳴ったんだ。立て、そして食い物を探せとな。おれはそいつが恐ろしくなってそいつに着いてったよ。
    だがおれは食べ物なんて自分では探せなかった。最初はそいつがみんな探してくれたんだよ。今俺がこうやって生きて腹空かして騒いでいるのもそいつのおかげさ。
    ガンバの幼かりし頃の物語だ。
    カワモさん、おれ、またこのまま横になると、子供の頃と同じように食い物の夢見ながら死んじゃうかもしれない。ああ、食い物を夢見ながら死んじゃうなんて一番惨めだよ。まだ食い物を探しながら死んだ方がましだ。
    カモクもおんなじ。まず起こして道を走らせないと、その子、食い物にありつけないよ。食えば走れる。走れば食えるってもんだ。
    起こしてください!そしておれのこの腹のために道を走ってください」P366

    なんという業とそれと共にしっかり進む、こいつらほんとうに児童文学のネズミちゃんなんでしょうか。

    ガンバシリーズはあと新しい方の劇場映画(夏発売予定♪)と、劇団四季版(夏観劇予定♪)があるのでもう少し子どもと楽しめます。

    • だいさん
      おつかれさま!
      おつかれさま!
      2016/06/06
    • 淳水堂さん
      ありがとうございます!

      音読すると感情が直接伝わってきますね。
      途中でカワウソたちが精神的に追い詰められて錯乱する場面を音読すると、...
      ありがとうございます!

      音読すると感情が直接伝わってきますね。
      途中でカワウソたちが精神的に追い詰められて錯乱する場面を音読すると、
      自分もかなりしんどかったですよ。
      2016/06/06
    • だいさん
      お子さんが羨ましいですね
      私は母に本読んでもらった記憶はないなぁ
      将来いい子になりますよ!
      お子さんが羨ましいですね
      私は母に本読んでもらった記憶はないなぁ
      将来いい子になりますよ!
      2016/06/07
  • ここにいても危険ならば、夢にしろ、幻にしろ、神話にしろ、なんだっていいから歩き出した方がいいような気がするなぁ
    これでお別れだ。楽しみなよ、あんた達の旅!死ぬまでに、どっちが多く楽しんだか、勝負しようよ。

    あいかわらずの心を打つ言葉の数々。
    カワウソのために一心不乱にやるべきことを模索しながら前に進むガンバ一行。迷いながら困難に打ちひしがれながらもそれを乗り越える、そんな姿に勇気をもらう。

    ガンバの冒険は終わらない。

  • なんだよなんだよ、みんな格好良すぎだよ…
    間違いだってするし、わからないこともいっぱいある。
    無謀なこともあるし、指摘されることもある。
    でも、会えるかわからないけど、あるかわからないけど、じっとしているより動いた方が可能性があることがいっぱい詰まってる。
    一生懸命生きる姿は"気まぐれ"の気持ちをも動かす。
    途中、カワモもカモクも辛かったな…
    エンコウのくだりは泣いてしまった。
    前作めっちゃイタチ怖かったけどイタチまで優しい…。自然に住む生き物、古い友だちたち、あたたかいな。

  • 名付けはイカサマのしごと。

  • 『冒険者たち』
    『グリックの冒険』
    から続くガンバと仲間達のシリーズ第3弾。

    表題通り、
    ガンバ達と2匹の日本カワウソ達の大冒険記です。
    この本を小学生時代に読んだ後
    カワウソに関して
    色々調べて
    自然の大切さや
    人間の愚かさを
    小さいながらにも
    深く感じる事ができた
    素晴らしい名作です。

    もちろん
    他のシリーズも
    面白く、感動的ではあるのですが
    僕にとって
    思い出すだけで目頭が熱くなる場面がありまして、
    詳細は読んでいただければと思うのですが、
    あの崖のシーンは、
    本当に
    今でも
    鮮明に思い出すことが出来る
    なんともいえない場面です。

    そして出来るならば
    文庫版ではなく
    分厚い方を選んでいただいて
    読んでいただければと思います。

    なぜならば
    表紙をめくった後に
    書いてある地図。

    この地図が
    読んでいる読書の想像力を
    更に膨らまさせてくれるのです。

    少年少女にとっても
    大人にとっても
    読み終わった後に
    大事なものを
    気づかせてくれる
    素晴らしい名著、お勧めです。

  • ガンバ3部作の最終巻。
    面白かったです!(^o^)
    前半はイカサマがかっこ良く、
    後半はキマグレがいい奴過ぎて素敵でした。
    前半かっこ良かったイカサマは
    後半完全にデレていました。
    3部作それぞれに面白かったけど、
    これが一番好きかもー

  • 「ガンバと15ひきの仲間は,ゆくえ不明のネズミをたずねて,四の島に渡ります.探しあてたネズミのそばにいたのは,死に絶えたはずの2ひきのカワウソでした.凶暴な野犬と戦いながら,カワウソの仲間が生き残っているかもしれない伝説の河「豊かな流れ」をめざして冒険がはじまります.そこには,想像をこえる体験が….」

  • 「冒険者たち」が孤島を舞台にイタチから隠れながらの戦いだったのに比べ、こちらはカワウソを探すということでかなり動きがあり読んでいて楽しかった。しかし、カワモ達以外は絶滅してしまったかもしれないカワウソの仲間を探す内容は終盤なのかけてどんどん重く暗くなっている。
    途中、カワモの記憶が混濁したりするところは読んでいて辛かった、、いい子でいなきゃいけなかったカワモはどんなに辛かったのだろう。キマグレの「甘えるな!」の言葉もわからなくはない。どんなにキツくても現実を見ないといけない時もあるんだよね。だけど、自分を支えてきたものが崩れていく時って本当にキツい。
    これは児童書なのだろうか。今読んでも考えさせられる。

  • ドブネズミになって一緒に冒険したいと何度も思ってしまった笑
    イカサマが「冒険者たち」の時と比べてガンバ、ヨイショ、ガクシャに並ぶくらいに安心感あるキャラになってて惹かれた
    ガンバの戦隊のレッド感も好き
    カワウソ元々好きだったけど飼いたくなっちゃった

  • ガンバのファンブック的に楽しめるシジンやイカサマの過去、キマグレに代表される魅力的な新キャラ、そして、死体に次ぐ死体に次ぐ死体。飢えと寒さと狂気。
    あまりに悪路過ぎてゴール見落として振り向いた、ぐらい長い苦難と短いハッピーエンド。

全38件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

斎藤惇夫 1940年新潟市生まれ。小学校一年から高校卒業まで長岡市ですごす。長年子どもの本の編集に携わり、現在は、著作と、子どもの本の普及活動を続ける。著書に『グリックの冒険』『冒険者たち』『ガンバとカワウソの冒険』『哲夫の春休み』(以上、岩波書店)、『おいで子どもたち』(日本聖公会)、『現在、子どもたちが求めているもの』『子どもと子どもの本に捧げた生涯』(以上、キッズメイト)、講演録に『わたしはなぜファンタジーに向かうのか』(教文館)などがある。

「2017年 『河童のユウタの冒険(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斎藤惇夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
宮部みゆき
荻原 規子
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×