エリコの丘から (岩波少年文庫 56)

  • 岩波書店
3.42
  • (4)
  • (9)
  • (15)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 114
感想 : 11
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140569

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大好きなカニグズバーグですが、図書館でなかなかこの一冊は手に取れなかった。
    裏のあらすじを見て、穴におちる?元女優に頼まれて透明人間になり宝探し?サスペンスの謎解き?
    私がカニグズバーグに求めている、リアルな少年少女の精神世界とはなんだか遠い気がして、敬遠していたのだ。

    今回ようやく読んでみる。
    出だしは面白いが、やはり地下世界(冥府?)に行って、タルーラと話すところで、へ?となり、フリーズ。
    二つの事件の解決まで見て、ようやくタルーラの立ち位置がわかってスッキリ。
    残る謎解きは楽しく、ドキドキハラハラしながら読み終えた。
    主役の少女と少年の性格がうまい。
    学校にいっぱいいる、クローン人間とはうまいこと言うなあ。
    透明人間になることと、スターになること。
    親子もみんな、親の役と子の役をそれぞれ演じている。
    舞台、役者、人生。
    タルーラの言葉がいい。
    一見、シビアなことを伝えているようだけど、示唆に富み、結局は少女たちを励ましてくれる。
    いぶし銀の奥にかすかに照らして見せる人生讃歌に、やはりカニグズバーグだ、読んで良かったと思えた。
    謎解きの結末も明るくて、そこに安心できた。

    私のなかではタルーラは、グレタ・ガルボか、デートリッヒみたいなイメージ。

    やはりアンダーラインをひきたい箇所の嵐で困った。
    以下に転記することでメモとしよう。

    p9
    去年、担任の先生から一滴の水のなかに住む微生物のスライドを見せてもらったけど、準成人映画の指定にしたほうがいいんじゃないのかと思った。だって、肉眼では見えない世界は、凶暴かつセックス満載、しかもそれを埋め合わせるような社会的意義はいっさいないのだから。

    p16
    (主人公の少女は偶然道で見つけた小動物の遺体を埋葬しようとする。そこに居合わせた少年マルコムが手伝ってくれる。葬式なので、短冊にこの生き物への弔いの詩を書いて、一緒に葬儀に使おうと提案する主人公。なぜ、と少年にきかれて)
    「そうやって短冊に書いた言葉を届けるの。風でこすれて、太陽にあたって色あせて、雨で洗われて、詩は、この世界の一部になるってわけ。」

    p20
    (小動物の葬儀を終えて。今までは死体の空気を吸うと病気になると思い、呼吸を少なめにしていた主人公の独白)
    松の穏やかな香りと、夏の仕事を終えて休憩中の葉っぱの甘い香りがする。深く息を吸い込んで、すばらしいこのにおいを全部吸い込んでしまいたい。(…)今日が何曜日なのか、何年なのか、教えてくれるものは何もない。二十世紀なんだとわかるものは何もない。薄らいでいく午後の光だって、夕暮れではなくてあけぼのの光なのかもしれない。

    p27
    (マルコムから、墓地に名前をつけようと提案される。ペット共同墓地にしようと言われたけど、当たり前すぎるし、あれらはペットじゃない、と主人公は却下する。)
    「なんて呼ぶかは、わたしが考えるから。」
    わたしは、そう言った。どうせ何か思いつくだろう、コカコーラみたいにぴったりで、IBMみたいに偉そうなのを。(…)
    「この場所、エリコの丘と呼ぶことにしようよ。」

  • 夢を叶えるために何が必要だと思う?

    ジーンマリーとマルコムが亡くなった動物を埋めようとシャベルを地面に突き刺したとき、2人は地中に吸い込まれ、そこで元女優のタルーラに会った。タルーラは2人にある仕事を頼む。それは自分が死んだ時に誰が宝石を持っていったのかという謎を解くことだった。

    女優になりたいジーンマリーと科学者になりたいマルコム。まだ完成しきっていない年頃の少年少女を著者はよく描く。自分のことをもてあまし、クラスや友人との関係に戸惑い、大人の欺瞞には敏感だ。

    ジーンマリーと母親が一緒に映画を見に行ったシーンが印象的。働いて自分をあまり構ってくれない母親を理解しつつ、たまにはそれをちらつかせて母親との時間を作ろうとするジーンマリー。恐れずに自分を出していくことが大事と知った彼女は、たとえ女優になれなくても、実り多き人生を送るだろう。

  • 自分はみんなと違うと感じながらも、そこから踏み出すことができない少女ジーンマリー。そんな彼女が亡き女優タルーラの幽霊と出会い、透明人間となって彼女の課す謎解きに挑むという不思議な物語。ファンタジーのようなSFのような体験を通じて徐々に自分というものを見定めていくジーンマリーと、「スター」を体現するタルーラの関係が爽やかだった。

  • 10代の少女と少年の内面が繊細に、繊細に書いてある。
    そして、あの地下の女優は、なんだったのだろうか。示唆に富みすぎている。
    死体が入口ということは故人が、死が学びをもたらすと言うことか。論理的にも直感的にも。

    明示はされていないが、少女のお母さんと少年のお父さんが善良なロールモデルであることは分かる。一緒に映画を見るシーンは忘れがたい。

    宝石にすがってしまった人も印象深い。セーブしていては成功はないということか。

  • 登場人物が多く、舞台もあちこちに飛ぶため、ストーリーの流れを掴むのに時間がかかり、結局、最後まで入り込めずに手こずってしまった。

  • ヒロインとその相方が地中で出会う元女優のタルーラの曰く、が毎回面白かった。
    どことないクボタイ感。
    思春期全開の児童文学は読んでてむず痒いっていうかなんというか…。

  • ふむ、なかなか面白かった。
    異世界へ行くお話が上手。
    女優タルーラと、そのタルーラのお願いを聞いてお仕事する?推理する?マルコムとジーンマリーの話。

  • ジーンマリーとマルコムのペアが好きでした。
    こんな相方がいたら、心強い。

  • 「孤高」という言葉が頭に浮かぶ。

    ジーンマリーは、学校でも透明人間だった。
    誰も、自分の名前を呼んでくれない。
    誰も、自分の将来の夢を気づかない。

    それと同時に
    仲良しグループをつくり、ひとりになれないクラスメートを
    「クローン人間」と呼び、
    汚いもののように、毛嫌いした。

    最後にエマジーンに厳しい言葉で訣別したのは、
    彼女がジーンマリーの陰画だったからだ。

    世界を拒絶し、「孤立」していたジーンマリーは、
    「孤高」の態度を身につけ、世界に向き合い挑戦していく。

    タルーラみたいに、
    真っ直ぐに子どもに何かを伝えられる人になりたい。

  • 女優になりたい女の子と科学者になりたい男の子が
    女優の幽霊に頼まれて
    宝石を探す話
    ‥でいいのかな

    透明になる

    なんだか説明不足というか
    わたしの想像力不足というか
    上手く想像できなくて
    置いてかれました

全11件中 1 - 10件を表示

E.L.カニグズバーグの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×