天国を出ていく―本の小べや〈2〉 (岩波少年文庫)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140835

感想・レビュー・書評

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  • 『ムギの王さま』に続くファージョン短編集。

    風刺をまじえたものから昔話ふうのものまで様々なので、好きな話は分かれるかもしれません。

    『小さいお嬢さまのバラ』は、ストーリーテリングでもよく語られるお話です。

    石井桃子さんの翻訳は原書の雰囲気をふまえておられ、素晴らしいと思いますが、本(特に翻訳物)を読み慣れていない子には理解が難しいような気もします。



  • 懐かしいあの日の思い出。

    ファージョンの短編集。昔読んだ懐かしいお話がたくさん収められている。覚えていないものも、なんとなく懐かしい。

    「サン・フェアリー・アン」いつも難しい顔をしているキャシー。その理由は。子どもには説明したくない世界がある。それを掬い上げてくれる優しい大人のありがたさ。

    「しんせつな地主さん」ケチなお金持ちのチャードン氏が、しんせつな地主さんとして知られるようになったのは。財産を残すとはどういうことか、考えさせられる話。

  • 『リンゴ畑のマーティン・ピピン』はもう庭井さんのリストに入っていましたが、ファージョンと果物ならば、私はこちらの話の方が印象深いです。天国に住んでいる3人の王子様が食べているのが”煮た果物”ですがリンゴも使われています。二人目の王子様が天国を出て行かなきゃならなくなったときに、お皿にポンと出るのがまるごとのリンゴです。これは、フランスの子どものまりつき歌?を耳にしたファージョンが空想をたくましくしてお話に仕立てたもので、ちょっとナンセンス感があります。

  • あーよかったっていうお話がいいです
    小銭を持って駅で一日を過ごすのが何とも楽しい「十円ぶん」
    ひぃおばあちゃんとのあったかいおはなし「ねんねこはおどる」
    くじをひく「ボタンインコ」
    人形との再会「サン・フェアリー・アン」

  • 女性らしい作品

  • 子供の頃読んだ時はただ退屈だった記憶。でも今ファージョンを読むとただ涙が出る不思議。なんて美しくて優しくて、懐かしい世界なんだろう。

  • ≪県立図書館≫

    「サン・フェアリー・アン」がとても気に入った。
    「コネマラのロバ」も、先生がややひいき気味だが、かわいくて素敵なお話だった。
    「十円ぶん」も、かわいい。
    子どもの描き方が素敵だ。
    「しんせつな地主さん」では、最後、やたらと感動した。
    きれいな、と表現すればよいのだろうか、かわいくてとても素敵な本だった。

  • 全体的にのんびりしている。いかにも児童向けという短編が多い。
    フランスやイギリスの風土や歴史を感じる描写も多く、向こうのスラングから成る話などはなるほどと面白く読めた。

    特に、どうでもいいというフランス語をイギリス語のスラングに直したものが基盤となる「サン・フェアリー・アン」など、人形と共に長い歴史が語られ、一人の女の子の幸福の物語に収束しつつも、結局はその穏やかな幸福の姿にすら「Ca ne fait rien!」と軽やかに口ずさみたくなる読後の味わいが良い。

    あとは、一人の王女が「美しいから」と兵に命令し守らせ続けたものが、いつしかただその命令だけが残って意味不明に兵はその場所を守り続けて形骸化してしまう、「むかしむかし」も好きだ。

    また、敢えて書いておきたいのが、「しんせつな地主さん」という物語の、なんとも言えない不愉快さだ。
    この物語は一見すると、傲慢で強欲な男だった地主さんが改心して人々の愛に包まれる幸せなお話だと思うし、作者ももしかするとそれを意図したのかもしれないとは思うが、私はそうは思わなかった。その幸せへの終着がなんとも気味の悪いものだと思えたのである。
    この物語が真に幸福を語っているのは、地主さんが迎えた妻と生きた短い時の間だけで、その後に長々と語られる娘との物語は彼の破滅の物語だと思う。
    愛しい妻の忘れ形見として地主さんの愛を何の苦労もなく一身に受け取れた馬鹿な娘が、その馬鹿な無垢から無知蒙昧に人々を誑かせ、自分が何かするでもなく自分の為なら何でもする父親を陥れて、そうして人々からの愛すらも欲しい儘にしたのは、私としては不愉快極まりない話であった。父は疲弊し、(娘によって)神経は麻痺していった。娘はそれに対して何の悔恨も無い。
    この愚かな娘は、「ガラスのクジャク」に登場する少女と対象的な存在であると思われる。ガラス~の少女はその笑顔によって人々に幸福を与え、また、自らを犠牲にして与える事で人々からのささやかな愛を克ち得た。しかしこの愚かな娘はそうではない。自らはなにもせず、愛を享受するだけなのだ。
    傲慢で強欲だった元の地主さんが良かったというわけではないが、彼がまともに人を愛しその心が真に真っ当で幸せであったのはやはり、妻と暮らしていた間だけなのだと、やはり私はそう思う。
    だから私はこの物語は大嫌いではあるが、地主さんのその儚さは好きではある。

  • 色んなタイプの話があったけど、どれも良かった。
    どの話も登場人物たちのやりとりが面白い。

    『小さいお嬢さまのバラ』『コネマラのロバ』『《ねんねこはおどる》』『サン・フェアリー・アン』『しんせつな地主さん』『パニュキス』が特に好き。

  • この本、一つ一つの物語もキラキラしていてとっても素敵なんだけど、それよりなにより惹かれてしまうのは挿絵です。  どれ1つをとってもため息ものなんですよね~。  モノクロ(表紙は彩色されているけれど、それでも色数をぐっとおさえてある)なのに、色が浮かび上がり、静止画なのに空気や風が香り立つような感じ・・・・・とでもいいましょうか。

    そしてそれにさらに輪をかけて素晴らしいのが石井桃子さんの美しい日本語です。  これにはもちろん著者であるファージョン自身の持っている品格・・・・のようなものも大いに寄与しているとは思うのですが、それを石井さんの甘すぎず、かと言って淡々とはしすぎない絶妙なバランス感覚で選び抜かれた日本語がさらに素敵なものにしてくれている・・・・・そんな素敵な短編集だと思います。

    (全文はブログにて)

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