月曜日に来たふしぎな子 (岩波少年文庫 104)

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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141047

感想・レビュー・書評

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  • ああ、これは読んで良かった。久々の児童書は6編の短編集。
    神宮輝夫さんの訳と聞くだけでファンの方は飛びつきそうだが、それだけではない。
    アーディゾーニの挿絵が本当に素敵で、大きな本の世界をのぞく表紙絵の子どもたちの姿に、胸がときめくものがある。
    そう言えばファージョンもアーディゾーニだった。両者はほんの少し雰囲気が似ている。

    作者のジェイムズ・リーブズは、日本ではほとんど知られていない。
    1909年のロンドン生まれ。作家になる前は教師として働いている。
    神話・伝説・昔話やマザー・グースなどの昔から伝えられている文学を大切にして、その魅力を子どもたちに伝えようと数多くの再話を残したひと。
    6編のお話はどれも聞いたことがあるようで、どこか不思議で懐かしい。
    深い意味を含み、でもとにかく面白くて、幸せな気持ちで読み終えるものばかり。

    表題作の「月曜日に来たふしぎな子」は、善良で働き者のパン屋さん一家にやってきた、「とんでもなく悪い子」のお話。この子にめちゃくちゃにひっかきまわされ、何一つ上手くいかなくなるが。。
    二話目の「おばあさんと四つの音」は、貧しい独り暮らしのおばあさんの家で鳴る四つの音の話。
    床板や窓やドア、そしてネズミの音。ところがおばあさんはその音が大好き。
    うるさいから直してやるという大工さんがあらわれ、おばあさんのしたことは。。
    実に完成度の高い創作で、こういう昔話があるかのような気さえしてくる。
    つつましく暮らすおばあさんの、心豊かな別世界のお話だ。
    私はこのお話が一番好きで、幸せとはどういうことか教えられたように思う。

    アンデルセンの「すずの兵隊さん」を彷彿とさせる三話目。
    四話目は英国民話の「トム・ティット・ティット」にとても良く似ている。
    日本版なら「だいくとおにろく」だ。
    美しい王女に、焼き物師がけなげな愛を捧げる五話目は不覚にも泣いてしまった。
    そして六話目は、何一つ学ばず働かずただ遊んで暮らす国に、将来を危ぶんで革命が起きるという話。とても子供向けとは思えない皮肉とパンチの効いた設定で、現代日本を見るようだ。

    完璧とは程遠く、理想的とはとても言えない主人公たち。
    その歪みといびつさが、何故か心に豊かさを運んでくれる。
    ほんの少し視点をずらすだけで暮らしに味わいが生まれ、色々なものが見えてくるのかもしれない。価値観て何だろうって、しばし立ち止まって考えさせるお話たちだ。
    このところ気持ちが沈みがちだったが、読んで良かった。
    岩波少年文庫は、いつだって身体に良い最高の食事を与えてくれる。

  • ほのぼのとした語り口の中に寓意と軽い皮肉が効いて、その絶妙なバランス感が読んでいて心地よい短篇集。「おばあさんと四つの音」「水兵ランビローとブリタニア」「フーの花瓶」が好き。「11羽の白い鳩」はタイトルとなった白い鳩にどんな意図が込められていたのかよくわからなかった。

  • どこか懐かしいお話。

    民話風のどこか懐かしい物語が数編含まれた短編集。ゆったりとお茶でも飲みながら楽しみたい。

  • 6つのおはなしか入っている。
    私か特にすきなのは「おばあさんと四つの音」

  • なかなか面白かったです。

  • 民話風のお話6編
    ふつうに面白い

  • 神話・伝説・昔話などの再話を多く残したリーブスの作品集。6話収録。

    「おばあさんと4つの音」は絶品!
    アンデルセンの「一本足の錫の兵隊」を連想させる「水兵ランビローとブリタニア」も切ない恋物語でよかった。

  • 作者はイギリスの詩人・作家。
    短編が6つ、それぞれ趣は違うが、なかなか面白かった。昔話風の仕立てでありながら、ちょっと独創的でユーモラスな味わいがある。
    こうした不思議な雰囲気にまたぴったりなことに、挿絵はエドワード・アーディゾーニのペン画が添えられている。

  • どの作品にもどこかで読んだり聞いたりしたことがあるような素朴さと懐かしさがありつつも、ちょっぴりピリっとくるようなエスプリや現代感覚があり、なかなか新鮮な読後感でした。

    個人的にかなり気に入ったのは「おばあさんと4つの音」と「水兵ランビローとブリタニア」、そして「フーの花瓶」の3作品です。

    他の人ならノイズと感じ、心がささくれている状態だったら神経に触る音とさえ言われちゃいそうなドアのきしむ「キイーイ」という音や床板の「キュキュ」ときしむ音、窓枠が風で「ガタガタ」なる音、小ネズミが走り回る「トコトコ」いう音が実は一人暮らしのおばあさんを見守っている妖精(+小動物1匹)たちの生活音という設定に何とも言えないぬくもりを感じました。  これらの音を「騒音」として排除しようとする親切な隣人にも悪意はなくて、「おばあさんのためを思って」これらの音が出ないように大工作業をしてあげようとするんですよね~。  で、おばあさんは彼の好意を無にしないように機知にとんだ解決策を見出し、大工さんとの隣人関係も妖精たちとの暮らしをも守るという物語に深い安心感を覚えました。

    (全文はブログにて)

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