ハイジ 上 (岩波少年文庫 106)

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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141061

感想・レビュー・書評

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  • アルプスの高原で孤独に暮らす老人のもとに、5歳(推定)の少女ハイジが連れてこられます。
    天真爛漫なハイジにとって、山の生活は全てが輝いていました。干し草のベッド、搾りたてのヤギの乳、ヤギの牧草の番、焼き立てのパン、作りたてのチーズ。そして輝く草原に山の向こうから出るおひさま。
    頑固なアルムのおじいさん(アルムは牧草地という意味)、山羊飼いの少年ペーター、ペーターのおばあさん、孤独だった人々はハイジに触れて人生の幸せを知ります。
    しかしハイジは、フランクフルトのゼーゼマンさんのお屋敷のお嬢さん、クララの話し相手として都会に引き取られていきます。
    何もかも人工的な都会もお硬いお屋敷のしきたりもハイジには馴染めません。とくに女中頭のロッテンマイヤーさんの厳しさといったら!それでも体の弱いクララや、屋敷の使用人たちにとって、ハイジの起こす騒動は愉快なものだったのです。
    やがてハイジは心を病み、心配したゼーゼマンさんたちの判断により、アルムに帰されるのでした。


    ハイジ5歳から8歳くらいまで。
    牧草地の生活がもうキラッキラですね。
    出てくる食べ物が美味しそう美味しそう、生活用品が楽しそう楽しそう。
    なにもかも楽しい、誰も彼も大好きというハイジの真っ直ぐさが輝いて見えます。
    フランクフルトに移ってからも、ハイジは寂しくてしょうがないけれど、読者としてはハイジが持ち込む騒動がかなり楽しい。
    まあ大人になると、お屋敷の厳格なロッテンマイヤーさんがどんなに大変かも想像がつくので、ハイジに厳しくしても「…あなたも大変よね…」と思えるし。しかし私がこの屋敷に居たら、ロッテンマイヤーさんの見えないところでハイジの騒動をクスクス笑って歓迎することだろう(笑)
    当のハイジは、クララや、クララのおばあさん、お屋敷の使用人セバスチャンたちのことは大好きで仲良くなるけれど、それでもアルムを恋しがり、でもそれを表に出すことは失礼だと言われて心を病んでしまいます。人間は感情を抑えるとどこかで無理が出ることが身に迫るように書かれています。
    そしてハイジに神様の言葉を教えたクララのおばあさん。神様にお祈りなさい。必ず見ていてくれます。今は叶わなくても、最後には良いことをしてくださいます。
    欧米のキリスト教社会の小説を読むと、人としてのあり方が読み取れますよね。

  • デーテおばさんに連れられて、ハイジはアルムの山の上のハイジのおじいさんの所に行きました。麓の村ではおじいさんのよくない話ばかり。いい仕事に巡り会えたデーテおばさんはハイジをおじいさんのところに置いて世話をしてもらうことにしたのです。
    気難しいおじいさんにも、山羊使いのペーターや山羊たち、そして雄大なアルムの山々の自然にもすぐに打ち解け親しんだハイジ。山での暮らしがすっかり気に入りました。

    子どもの頃から大好きなアニメ。原作をやっと読みました。
    昔の訳だと少し難しい表現かなと思っていましたが、全くそんなことはなくスイスイ読み進められました。
    私が最も感動したことは、アニメで省かれているエピソードがほとんどないということです。
    先にアニメを知っているので、読めば読むほどアニメーションのハイジ達が頭に浮かびます。どの場面でも浮かんでくる。それってすごい事だなと感動しました。
    原作を読んでもやはり、ハイジのいじらしさやまっすぐさに涙します。私の原点だなぁとしみじみ感じます。

  • 最近では学習塾のCMでも知られている、言わずと知れた児童文学の古典的名作。
    何度読み返しても感動し、幸せな気持ちでいっぱいになる。
    ストーリーを知っている人も、ぜひ改めて読んでほしい。

  • アルプスのおじいさんのもとで暮らし始めることになった少女・ハイジの物語。昔見ていたアニメの原作を読んでみたいと手に取った一冊。上巻ではフランクフルトに住むクララとの出会いから、アルムへと再び帰ってくるところまでが描かれる。

    アルプスの自然描写がとにかく美しい。風景の壮大さ、風に運ばれる花の香り、夕焼けに燃える山並み。アニメを見ている影響もあるとはいえ、目の前に浮かぶように感じられるすごさ。おじいさんの山小屋も風情があるよね。屋根裏部屋での干し草のベッド、下の谷まで見渡せるのぞき窓、こんなところで眠れたら癒されるだろうね。もちろん、パンと焼けたチーズにヤギのミルクもおいしそうで食べてみたい!

    ペーターのおばあさんとのやり取りも大好き。目が見えないおばあさんの目をなんとか見えるようにしてあげたいと純粋に願うハイジ。そのハイジの思いに心動かされるおばあさん。ハイジと出会えたおかげで、目が見える以上に世界は明るくなったんだなと伝わってきて素敵だった。山へ戻ってきた時に白パンを渡すやさしさもいいよね。白パンも食べたくなる!

    フランクフルトではハイジのつらさがどんどん伝わってきて読んでいてつらかった。ロッテンマイアーさんってこんな意地悪だったのかと。クララもハイジの様子に気づいてあげられたらよかったのにね。使用人ではゼバスチャンがやさしかったな。そして、ゼーゼマンとおばあさんがとても誠実で、ハイジに対しても態度を変えずに接していてよかった。フランクフルトでは大変なことも多かっただろうけど、こういう出会いはハイジにとっても大きなものだったのかもしれないね。

  • TVでよく取り上げられる「立った!クララが立った!」くらいしかハイジの知識を持っていなかったので読んでみることに。
    そうしたら、まさかハイジが夢遊病になっていたなんて…。

    周りの大人たちの思惑とハイジの無邪気さの食い違い部分に目がいってしまいます。
    後半にはきっと「立った!クララが立った!」が入ってくると思うので、そこを楽しみに読み進めていこうと思います。

  • 上巻はクララのおうちで夢遊病になって、アルムに帰るまで。

    ハイジは非常に快活な子で、それゆえおじいさんともうまくやっていける。
    このつれてこられた子が愚鈍な子だったら・・・と考えると恐ろしくもある(!)。

    翻訳も昔のものなので、この(時代の)本でしか味わえない、翻訳の味も味わいながら、すばらしい世界に没頭しました。

  • ほんとにね、切実で素敵でね、心が震えるのです。

    子ども時代最高に幸せだったのは、

    この作品をアニメーションに仕立ててくれた

    おじさんたちがいたことです。

    ずっと希望を感じて生きてこれたのは、

    この作品を生んだ作者さんと

    そのおじさんたちのおかげです。

  • 有名なアニメでありますがどんな話だったかな?と思い読んでみました。ものすごく小さいころに見ていたそうですが(母談)流石に覚えていなかったので。概ね、こんな話だったかな、と思っているのと同じお話でした。

    この前読んだ米原万理さんの本でハイジがヤギのミルクを飲み、こんなおいしいミルク初めて、と言ったところからヤギ乳ってどんない美味しいものだろう、と思っていたのに実際飲んでみたらクセが強くて…と言う記述がありました。確かにヤギはクセが強そうですねえ。それにしてもハイジはパンとチーズとヤギの乳で大きくなってるなあ、と感心しました。大自然は良いですよね。自分もイナカ育ちなので都会ではなかなか順応できなそうだなあと思い読みました。それにしても大人になってから読んだのでロッテンマイヤーさんの苦労がしのばれました。いやはや、大変な子が来ちゃったもんだ、と(笑)。

  • 本棚の奥から出てきたちょっと古めの岩波少年文庫。  その中の1冊にこの本がありました。

    ハイジ 上 (2003) 1996年6月第42刷
    ハイジ 下 (2004) 1996年6月第38刷
     ヨハンナ・スピリ作 竹山道雄訳

    思い起こせばハイジの物語に初めて触れたのは小学校入学前、そして小学校低学年・中学年の頃には何度も何度も読み返した物語です。  小学校高学年ぐらいになってからは「よく知っているお話」というカテゴリーに入ってしまったためほとんど手に取ることがなくなってしまいましたが、某TV局で放映されていたアニメ(!)に触発され、大人になってから再度入手したのがこの本です。  因みにあのアニメ、Brunnhilde が中学生の頃に本放送が始まり、その頃は「もうハイジっていう歳でもなし・・・・」と観なかったような気がするのですが、その後の再放送で観たのかなぁ・・・・。  結構大人になってからほぼ全編を観て、思わずこの本を購入することになったような記憶がうすぼんやりとあります。  で、まあ、アニメの話はともかくとして、こんな古典的な物語を再読できることこそこのブログ、この企画を始めた趣旨にぴったりあっているのではないか?・・・そんな風に感じたので、今日はこの本を手にとりました。

    久々のハイジの世界ですが、ハイジ、ペーター、アルムおじさん(おじいさん)、デーテおばさん、クララ、ゼーゼマンさん、ロッテンマイアさんという名前が出てくるたびに、あたかも小学校時代は交換日記をつけていたにも関わらず、中学進学、高校進学、大学進学、そして社会人へという人生の過程の中のどこかのタイミングで疎遠になり、その後何年も会っていなかった旧友と再会したかのような思いを抱きました。  現実世界の旧友と大きく異なるところは、現実世界の旧友は時の流れの中で「あれ? こんな考え方をする人だったっけ?」というようなある種の戸惑いを感じることもあるのですが、物語の登場人物に関してはそんなことはなかった・・・・ということでしょうか?  もちろん、子供時代には何となく意地悪な存在として認識していたロッテンマイアさんが、決して意地悪なわけではなく、単なる常識人・・・・そして自然児ハイジを相手にオロオロしている融通の利かないおばさんに過ぎない というようなわずかな軌道修正こそ必要ではあったのですが・・・・・(笑)

    久々に読んだハイジで何よりも感動したのは、いわゆる情景描写の細やかさです。  モミの木のざわめき、雪が積もった翌朝の輝き、朝日・夕日を浴びた山の姿の何と美しい描写!!!  文章を読んでいるとアルプスの美しい景色が頭の中でどんどん空想でき、同時に山の空気さえ感じられるような気分になっていきました。  

    実は Brunnhilde は最近群馬県の山の中に終の棲家を持とうとしているのですが、なぜ自分が海よりは山に惹かれるのか、その理由をあまり真剣に考えたことがありませんでした。  でも、この物語を読んでふと思ったのです。  考えてみたら Brunnhilde が大好きな物語の大半は海辺の物語というよりは山の物語、川辺の物語だったなぁ・・・・と。  「夢見る夢子ちゃん」と親からからかわれていた子供時代。  Brunnhilde の空想の世界に海辺や海上の景色はほとんど表れなかったなぁ・・・・と。  この本は山小屋での読書に適した本だったかもしれないなぁ・・・・と。  いずれ山小屋で再読してみようと思います。

  • 若い編集者の人にオススメの本を聞いたら
    「ハイジ」だという。
    ハイジはアニメで見たことがあるような、ないような
    そんな曖昧な記憶しかなく、手にとってみた。

    ハイジが山に帰りたいのだけど
    うまく言えず、夢遊病になってしまうところ。
    なんともせつなく悲しいが、その後の山に戻って
    美しい自然と優しい人たちの中で心が戻っていく
    シーンでまた涙して、本当にステキな物語だった。
    心が洗われるようだった。というのはこういう
    作品に言うのかと思った。素晴らしかった。

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著者プロフィール

1827年、スイス・チューリヒ近郊の村で医師の娘として生まれ、地元で語学と音楽を学ぶ。弁護士ベルンハルト・シュピリと結婚後、40代になってから小説の執筆を始める。病弱だった一人息子の転地療養に付き添い、マイエンフェルト近郊のラガーツ温泉に滞在した際『ハイジ』の着想を得て、52歳のとき第1部を発表。これが大ヒットとなり、翌年に第2部を発表。ともに世界的な成功を収める。生涯で約50編の作品を残し、1901年、74歳で死去。

「2021年 『アルプスの少女ハイジ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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