かるいお姫さま (岩波少年文庫 (133))

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141337

感想・レビュー・書評

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  • 「かるいお姫さま」
    なかなか子どもに恵まれなかった王様とお妃様のところに、とりわけかわいいお姫様が生まれました。
    赤ちゃんの洗礼式のお祝い会、王様はうっかり意地悪な姉王女を招待するのを忘れてしまったのです。
    招待されなかった洗礼式に堂々とやってきた王女はお姫様に呪いをかけたのです。重さをなくす、呪いを。

    眠れる森の美女のような冒頭に、良くある物語かと思ったら、王様は見栄っ張りで我儘だし、お妃様はヒステリックだし、お姫様はフワフワと飛び回りながらケラケラ笑う、とにかくカルイお姫様。
    登場人物たちがリアルでそのままドラマに出来そう。

    「昼の少年と夜の少女」
    谷に住む魔女、ワトー。
    こっそりと2人の赤ちゃんを育ててる。
    夜を知らない輝く容姿の少年。
    昼を知らない物静かな少女。
    ある夜、2人は偶然にも出会うことになり。

    魔女が何をしたかったのかが良くわからないのだけど、少女のしっかりぶりが少年の情けなさを支えてカッコイイ。

  • 『眠りの森の美女』を思い出させるお話。表題作よりも同時収録の『昼の少年と夜の少女』が好きです。少女が芯の強い感じで好みな感じでした。

  • ジョージ・マクドナルドの短編(彼の場合、フェアリー・ストーリーと言ったらしいが)も初めて読んだが、なかなか面白かった。
    先だって読んだ長編物語もそうだったが、描写が細に入り、非常に美しく、また、ところどころに持ち前のユーモアが垣間見れたりする。
    また、ここに収録された二編となると、訳者泣かせだと思うが(原書では)たぶん、言葉遊びや歌のパロディなども味わいどころなはず。マクドナルドと縁の深いルイス・キャロル然り、シェイクスピア然り、イギリス文学の面白さの一端がよくあらわれている。
    例えば‘軽い’(light) ‘ 明るい’、そして‘重さ’(gravity)には、‘真面目さ’という意味もあるので、お姫さまは、重さと同時にきまじめさも失ったわけだ。

    同じ魔女の企みがらみでも、表題の『かるいお姫さま』とは、また少し趣が違うもののもう一作の『昼の少年と夜の少女』も、なかなか印象深い作品だった。おそらく、作者独特の死生観も投影されているのだろうが、幻想的な描写の数々がとても象徴性を感じさせる。

    いずれにせよ、面白いので、いろいろ読んでみたくなりますね。

  • 美しくて優しいメルヒェン。

    「かるいお姫さま」魔女の呪いのせいで重さのないお姫さま。湖の中では重さを取り戻すことができたが、魔女の企みによって湖は干上がってしまう。王子が栓になり湖を取り戻そうとするが。

    軽やかなお姫さまの声が聞こえそうな物語。重さがないだけに、悲しい気持ちや重々しい気持ちになることがなく、涙を流さないというのが面白い。

    「昼の少年と夜の少女」少年は昼の光の中で育ち、少女は闇の中で育った。少女が月の光に出会い、少年が夜に出会ったとき、2人は何を見たか。

    少女が月の光から日の中へ、少しずつ考えながら歩んでいくのに対し、少年の夜への恐怖が強いこと。勝手な魔女の子育てにも考えさせられる。

    ふたつの物語はどちらも懐かしい雰囲気。マクドナルドが生み出したこれらの物語はいつの時代も読者を楽しませることだろう。いつまで経っても古びることなく、優しく包み込んでくれる。

  • 姫の洗礼式に招待されなかった王の姉は、姫から重さを奪ってしまった。ふわふわ浮いてしまう姫は湖で泳ぐ時だけは重さを取り戻せたので、ほとんどの時間を、湖で楽しく過ごすようになった。それを知った叔母は…
    魔女である叔母が悪い企みをする場面は怖いけれど、それを上回る王子さまの愛が希望をもたらしてくれる。

  • 子供の頃、日曜日の朝にやっていた海外製のテレビ番組で童話を何週かにわたって放映していました。まだ布団が敷いたままの中に潜り込んでテレビを見るのは至福の時間。
    
    お姫さまや王子さまの出てくるお伽話やファンタジーが中心だったと思うのですが、ちゃんと覚えているのはこの『かるいお姫さま』のみ。昔は『ふんわり王女』というタイトルでした。
    
    呪いによって重さをなくしたお姫さまがフワフワと飛び交う様子とか、いかにも特撮なんですが全体的に絵本みたいなかわいい映像だったと記憶しています。
    
    重力がないので物事を真剣に受け止めることができないお姫さまという、ファンタジーでありながら風刺のきいた物語。
    王様がお妃に向かって「一人くらい子供を産んでくれ」というあたりとか、ジェンダー的に読むこともできそうです。
    ほかの話は忘れちゃったのに本屋でこの本を見つけた時、あ、これはあのときの物語だと思い出したのは、ほかの童話とはちょっと違ったからなんでしょうね。
    
    同時収録は『昼の少年と夜の少女』。こちらは魔女によって昼しか知らずに育てられた少年と、夜しか知らずに育てられた少女の物語。
    
    こちらの方がより観念的で「あなたの昼とわたしの夜」なんて言葉もあったり、訳が硬すぎることもあって難しいです。こんな育て方をした魔女の闇が気になる。
    元気いっぱいの少年よりも、夜の庭園の美しさを讃えたり、知的に真実に近づいていく少女の勇気が光ります。
    
    ジョージ・マクドナルドはルイス・キャロルとも親交のある作家なんですが、今まで意識して読んだことがなかったので他の作品も続けて読んでみようと思います。


    以下、引用。

    王さまは、お祝いの会にみんなを招くための招待状を、全部自分で書きました。そして、言うまでもなく、書き忘れをしでかしました。
    
    そんなときお姫さまは、笑いの精になったかのように笑いますが、ただ、その笑いには何か足りないものがありました。それが何だったのか、私にはうまく言えません。あるいはそれは、悲しむことのできる人にしか出せない、細やかなニュアンスのようなものかもしれません。とにかくこのお姫さまには、「ほほえむ」ということはなかったのです。
    
    たぶんお姫さまにとっていちばんいいのは、恋に落ちることだったでしょう。しかし、重さのないお姫さまとしては、落ちろと言われても困りますし、落ちることができるくらいなら、そもそも何も困ることはなかったわけです。お姫さま自身が恋というものについてどう思っていたかというと、世の中にはそんな蜂の巣があって、落ちると甘い蜜とするどい針の両方にぶつかるなどということは、夢にも知りませんでした。
    
    この王子さまが、そんなに完全な相手を求める権利があるほど完全な人だったのかと聞かれても、私にはなんとも言えません。
    
    フォトジェンは横柄に言いました。男というのはみんなこんなふうに横柄で、女の人に教えてもらわないかぎり、決して直らないものなのです。
    
    いいえ、それどころか、よく考えてみると、いま見ているこの姿のほうが、この小さな生きものの本来あるべき姿に近いのかもしれません。なぜなら、全体の形が完璧に見えるのは以前も同じなのですが、いまは各部分がそれぞれに完璧で、その完璧さによってそれぞれの部分がうまく結びつきあって、全体としてより高い完璧さに達しているからです。
    
    君のきれいな目が見えるのだって、その中に光があるからなんだよ。その光のおかげで、ぼくは君の目を通して、まっすぐに天国までも見ることができるんだ。君の目は、空の彼方の天国にむかって開いている窓なんだね。星はそこで作られてるのに違いないと、ぼくは思うよ。

  • C・S・ルイスやJ・R・R・トールキンらに影響を与え、ルイス・キャロルらと共に、イギリス児童文学の基礎を創った作家、ジョージ・マクドナルドの作品です。
    呪いにより、体重を失ったお姫様が、王子様の助けを借りて、体重を取り戻すというユニークなお話の「かるいお姫さま」と、他に「昼の少年と夜の少女」の1編が収録されています。

  • 『かるいお姫さま』
    お姫さまと周りの人達の会話のちぐはぐな感じが面白い。
    魔女への仕返しが可愛い。

    『昼の少年と夜の少女』
    私はこっちの方が好き。
    フォトジェンが、怖がっているニュクテリスを置いていっちゃったり、ニュクテリスの前ではヘタレなのが可愛い。
    そもそも、ワトーはどうしてこんな事したんだろう。単なる興味本位?

  • 魔女にのろいをかけられて、ふわふわ浮いてしまうお姫さま。<重さ>がもどるただひとつの場所である湖も魔女のたくらみで干上がり、お姫さまはしだいに弱ってゆきます。お姫さまを救う方法とは?「昼の少年と夜の少女」も収録。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    おお、かるいお姫さま可愛かった…
    すごい自由奔放ですな…

  • 軽いっつったらほんとに軽い。
    一見笑っちゃうような話なのに色々と大事なことを見つけられる。
    でもちゃんと児童書。
    さすがのジョージ・マクドナルド。

    2004/05 再読

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