ツバメ号の伝書バト(下) (岩波少年文庫 ランサム・サーガ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141818

感想・レビュー・書評

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  • やはり冒険小説の傑作か、改訳の必要は全くないが。
    タイトルがツバメ号の〜てのは意訳すぎ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「改訳の必要は全くないが」
      少年文庫は神宮輝夫の個人訳になるから、統一感を持たせたかったんじゃないですか?
      「改訳の必要は全くないが」
      少年文庫は神宮輝夫の個人訳になるから、統一感を持たせたかったんじゃないですか?
      2013/06/26
  • (No.12-89) ランサム・サーガ新訳は、シリーズ半分出たことになります。上・下巻をまとめて書きます。
    今は冬、当然寒いです。雪もちらつきました。
    それなのに本の中では猛暑。夏休みの話ですからね。
    ちょっとだけ暑さを分けてもらいたいくらいでした。

    内容紹介を、表紙裏から転載します。
    『猛暑の夏、ツバメ号、アマゾン号の乗組員とDきょうだいは、高原で金鉱を探すことに。伝書バトで連絡をとりあい、ますます活動範囲を広げます。ところがあやしげな「つぶれソフト」が行く先々にあらわれます。
    見つけたものは、はたして金?炭を焼き、溶鉱炉をつくり、自分たちだけで確かめようとする子どもたち。ところが年上のジョンやナンシイがいない間に・・・・。』

    3家族の子供たちが大集合。それなのに今保護者はアマゾン海賊のブラケットお母さんだけという状況なんです。それなのにブラケット家はリフォーム真っ最中。
    後からウォーカーとカラムの保護者が来るまで、安全に遊ばせなくちゃとミセス・ブラケットは頑張ります。
    家の庭でキャンプすることで何とか我慢していた子どもたち。だけどあのナンシイがいつまでも大人しくしているわけがありません。

    結局いろいろ約束をして、家から離れたところの農家の庭でテント生活が始まりました。
    そういえば今までで初めてかも、あまり子供たちに好意的でない農家のお世話になるのは。タイソン農場の人が意地悪というわけではないのです。まあ普通の人。子供たちもテント生活なのに食事を全面的にタイソンおばさんに面倒を見てもらい、その代わり時間に縛られるというのがストレスになってしまうの。
    完全に自分たちだけのキャンプ生活を勝ち取るまでが、一つの山場になってます。

    子供たち、特に年上の子供たちが他の子に気を配っている様子はいつもながら嬉しいし頼もしいです。ティティを傷つけまいとする思いやり。スーザンの動揺を防ごうとする配慮。
    いつもナンシイの指示待ちをしていたペギイが、ナンシイに行かせるとトラブルになるからと判断して自分が行くことに決めたり。
    状況を判断して対処できるって素晴らしい。
    最後には小さい子組のロジャ、ティティ、ドロシアたちも正しい判断をしました。

    下巻には訳者あとがきの他に素敵なおまけが付いてます。ランサムファンの中山珠美さんの文。私も、ばんざい三百万唱!

  • 巻が進んでいくにつれて彼らのやることの
    スケールはとてつもなく大きくなっていきます。
    ときにジョンたちがいってはいけない道を
    ティティやロジャはいってしまうから大変。
    そしてそこで一事件まで起きてしまいます。

    彼らはどうやら「金らしき何か」を
    ついに手に入れようとしています。
    が、その金までの道がなかなか遠いのです。

    試行錯誤している彼らが
    とってもまぶしく感じました。

  • 久々のツバメ号 & アマゾン号のクルーたち、そしてD姉弟が全員集合した夏休みの物語です。  イースター休暇に猛特訓して AB船員になった D姉弟を含めた3家の兄妹たちのセーリング物語が始まるのかしら?と大いに期待して読み始めた KiKi だったのですが、今回のお話は船からは離れた山の中の物語。  冒頭でこそセーリング・シーンがちょっぴり出てくるものの、彼らのお得意の島でのキャンプの話もなければ、海賊ごっこの話もありません。

    なんでそんなことになっちゃったのか?と言うと、この夏休みの大切なタイミングに子供達の保護者はアマゾン海賊のブラケットお母さんだけという状況なんです。  子供達が生き生きと「自立キャンプ生活」を送るために、ツバメ号のクルーのお母さんやキャプテン・フリントが見えないところで果たしてきた役割の大きさが否応なく感じさせられます。  ブラケットお母さんも決して物わかりの悪いタイプではないものの、余所様(それも2軒)の子供たちを預かる立場になっちゃっているうえに、ブラケット家ではリフォームの真っ最中・・・・ということもあり、てんてこ舞いしています。  そんな彼女が子供達を安全に遊ばせるために譲歩できたのはいつでも目が届く家の庭でのキャンプが限界でした。

    でもそんな状況の中で冒険精神だけでできているようなあのナンシィがいつまでも大人しくしていられるわけがありません!(苦笑)  様々な条件付き(しかもその条件の全てがナンシィには耐え難い)で何とか勝ち得たのが、家から離れたところの農家の庭でのテント生活でした。  そしてこの農家さんがこれまで子供たちがお世話になったどの農家さんよりもある意味で普通の人(つまり子供たちの自主性にばかりは任せておけないタイプ)で、子供達の火の始末には不安があるから自炊なんてもってのほか、食事は一切農家のおばさん仕切り(≒ 食事の時間やらその他細々としたことに制約が出てくる)というこれまたストレスフルな状況を上塗りしてくれちゃいます。

    ま、てなわけで前半の山場の1つが子供たちがそんな環境の中で完全に自立したキャンプ生活を勝ち取るまでのあれこれになっています。  

    これまでの物語の中でも子供たちはそこかしこの農場のおばさんにお世話になっているんだけど、その人たちは日本人の KiKi の目には「物わかりが良すぎる」と感じられるほど子供たちの自立心を尊重し、最低限の危機管理を任せ切るだけの太っ腹な人たちだったことがこの物語で証明されました。

    今回子供達がお世話になったタイソン農場のおばさんはある意味では現代日本の大人とそっくりで「子供のすることは危なっかしい」という価値観をなかなか崩せない人です。  決して意地悪な人ではないのですが、子供たちにばかり感情移入して読むと「大障害以外のナニモノでもない」人になっちゃっています。  でも分別ある日本人の大人として彼女の弁護をしておくなら、これにはたまたま今回の物語の舞台では日照りが続いていて普段なら豊かな水が流れているはずの渓流が涸れ切っちゃっていたりして、万が一どこかに火がついたらとんでもない山火事になるという背景もあるわけですが・・・・・・。 



    さて、子供達が自立したキャンプ生活を勝ち取るために何よりもポイントになったのがこの「水枯れ問題」です。  飲んだり食べたり、洗い物をしたり、水浴びしたりするのに必須な水が得られない限りは井戸のそばからは離れられないという制約がありました。  そこで子供たちは水場を探すために努力をすることになるのですが、子供と侮るなかれ!  ツバメ号(4人)、アマゾン号(2人)、D姉弟(2人)と子供が8人も集まると、「3人寄れば文殊の知恵」で子供一人を0.5人換算したとしても文殊さんにちょっと余るぐらいの知恵やら何やらが出てこようというものです。

    まずは典型的理系少年のディックがある場所で水脈のあるところには必ず生えている(らしい)トウシン草を見つけます。  トウシン草が目印であることをディックに教えてくれたのは学校に来た自称「水脈予言者」で、その人によれば二股に分かれたハシバミの枝で水脈の場所がわかるとか・・・・・



    あれ??  そんな話、どこかで聞いたような、見たような・・・・・・・



    記憶違いかもしれないけれど、「ザ!鉄腕!DASH!!!」で水脈を探す話が何回か出ていて、その中の1つが「アイガモの羽を地面に刺し、その上から桶をかぶせて一晩待ち、翌日その羽が湿っている場所からは地下水が出やすい」というような話だったように思うし、それとは別に「二股に分かれたハシバミの枝を両手で持って、枝が捩れる所からは水が出やすい」という話を聞いたように思います。

    ま、いずれにしろ、そのハシバミの枝を使った水脈占いは他の子たちではどうしてもうまくいかなかったのになぜか ティティ には反応します。  ここに至るまでのティティの苦悩や、そんな彼女を遠くから見守る年長組の子供たちの姿が、実に丁寧に描かれていて素晴らしい!!

    こうして自力で井戸を掘った子供たちは何とか「自立キャンプ」を営むことができるようになり、本来彼らがやろうとしていた大プロジェクト「高原での金鉱探し」に邁進することになります。  相変わらず大人顔負けの子供たちは、見つけた鉱石を自力で砕石・選別をし、次には炭を焼く炭焼きドーム(文中の文言では炭焼きプディング)を手作りし、さらには溶鉱炉まで作り上げます。  もちろんこれらの活動をするのに必要な肝心要の道具(「砕石機」とか「るつぼ」とか「ふいご」とか)なんかは、キャプテン・フリントのコレクションやらリフォーム中のブラケット家のリビングあたりから借り出したものなんですけどね。  それにしても逞しい!!

    この「高原での金鉱探し」がスリル満点の物語になっているのに一役買っているのが子供たちが「つぶれソフト」と呼んでいる見知らぬ大人の存在です。  「ごっこ遊びの達人達」はこの「つぶれソフト」を自分たちの金鉱を狙う横取り屋と位置付けて、その姿が遠目に、時に近くで見える度に様々な物語を作ってくれちゃいます。  最後の最後にこの「つぶれソフト」の正体は判明するのですが、内気すぎるがゆえに子供達との正面切っての対面ができなかったことが却って不審者モードを醸しだしていていい味を出しています。  

    この「帽子チラ見せ、スリル感煽り演出」は映画「明日に向かって撃て!」でP.ニューマン & R.レッドフォードを追う保安官の姿でも使われていたけれど、字面のみの小説でも結構有効ですよね~。  昨今の刺激が強すぎるスリル感に馴らされちゃった子供達には通じないかもしれないけれど、KiKi 世代の人間であれば「必要十分」っていう感じです。

    最後の最後にようやくキャプテン・フリントがご帰還になり、物語最後の大事件・山火事の収拾に一役も二役も買っているのはお約束。  でも、そのきっかけを作ったのが他の誰よりもいち早く山火事発生に気がついた年少組が飛ばした伝書バトであることに感動を覚えます。  (因みに火事を発生させたのは子供達ではなく、どうやら無責任な観光客だったらしい。)  しかも彼らは鳩便でSOSを発するとすぐに消火活動に邁進するのですから・・・・・・。

    セーリングの話を期待していたのに肩透かしを食らったのは事実だけど、この物語はその失望を補って余りあるほど楽しい物語でした。  下巻巻末の「訳者あとがき」によれば、この作品はカーネギー賞の第1回目の受賞作とのこと。  なるほど、納得です。 

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