北風のうしろの国(下) (岩波少年文庫 228)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001142280

作品紹介・あらすじ

北風のうしろの国からもどってきたダイヤモンドは、そこで聞いた小川の歌を口ずさみながら、ロンドンの貧しい暮らしにあえいでいる家族や友だちを助け、励ますようになる。空想と現実を自由にかけめぐる、19世紀イギリスの古典的名作。小学5・6年以上。

感想・レビュー・書評

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  • 以下、引用。
    29
    「これ、すてきじゃない、母さん?」と、ダイヤモンドは言った。
    「ええ、きれいね」と、母さんは答えた。
    「何か意味があると思うんだけど」と、ダイヤモンドは言った。
    「母さんにわかるのは、さっぱりわからないってことだけよ」と、母さんが言った。

    49
    この本を読んでいる子どもたちのなかには、天才ってなあにと思う子もいるかもしれないが、さて、説明したほうがいいだろうか、それとも、やめておいたほうがいいだろうか? では、ひとつ、ほんの短い答えだけを書いておくとしよう。天才とは、だれにも説明してもらわないで、物事の本質を理解する人だ。神さまは、ときどきそういう人たちをお創りになって、その人たちを通じて、いろんなことを私たちに教えてくださるのだ。

    125
    どんなに立派な館でも、近くに、いや、すぐそばに森がなかったら、宮殿と呼ばれる資格はありません。それも、近ければ近いほどいいのですが、ぐるっと森に囲まれるのがいいというのではありません。
    でも、宮殿と名乗る以上、一方の側には森がなくてはなりません。

    129
    たとえば、有名なあのお姫さまが百年間眠り続けたというのは、なんといいことだったでしょう! おかげで、ふさわしくない若者たちに、うるさくつきまとわれずにすんだんですからね。そして、ぴったりな王子さまがキスをした、まさにその瞬間に、目をさますことができたではありませんか。私としては、もっとたくさんの娘たちが、おなじような運命が訪れるまで眠っていられたらいいのにと、願わずにはいられません。

    173
    父さんはそれに対してはほとんど何も言わず、パンとバターに考えごとを添えて食事をすませると、すぐに立ち上がって、こう言った。

    181
    「おととい、女の人が一人、ここへ来たんだ。すごくきれいな人でね、すごくきれいな服を着てた。婦長さんがその人にね、青と金の服で来てくれてありがたいと言ったら、その人はね、子どもたちは地味な色が好きじゃないだろうから、って言ってた。」

    184
    どうしてあたいは、泥んなかじゃなく、夕日のなかで暮らせないんだろう? どうして夕日は、いつだってあんなに遠いんだろう? どうして、あたちたちのおんぼろな通りには、全然来てくんないんだろう?

    193
    月んなかって、どんなだと思う? すごくきれいな小さな家でね、青い窓に白いカーテンがかかってるんだよ!

    320
    「ここが大好きだと思ってたのに」と、ダイヤモンドはつぶやいた。「でも、ちっとも好きじゃなくなっちゃった。どこかが好きになるのは、そこにだれかがいるからで、そのだれかがいなくなったら、そのどこかはどうでもよくなっちゃうのかな。」

    332
    マクドナルド一家は、一八七五年に「かくれが(The Retreat)」を離れましたが、その三年後にそこを買い、「ケルムスコット・ハウス」と改称して住みはじめたのが、有名なデザイナーで、作家で、社会活動家でもあったウィリアム・モリスです。モリスはそこを、住まい兼工房にし、馬車置き場だったところを改装して、労働者のための講演会や集会を開く場所にしていましたが、マクドナルドの想像のなかでは、その屋根裏にダイヤモンドたち一家が住んでいたのかもと思うと、とてもうれしくなってきます。

  • もう一度北風のうしろの国へ。

    ダイヤモンドは父を助けて辻馬車の仕事をし、病気になった貧しい少女ナニーを助け、生まれた子どもと歌を歌う。美しい北風に再び会い、共に旅する日を楽しみに。

    純粋で優しく賢い子ども。ナニーとジムは頭が弱いというつもりでダイヤモンドを「神さまの赤ちゃん」と呼ぶがこれほどダイヤモンドを表した呼び名もないだろう。疑いもせず、夢の世界を本物として愛するダイヤモンド。天使の夢のあたりから、この子は長く生きられないことがわかっていたかもしれない。北風との旅の様子はまるで銀河鉄道の旅のよう。悲しみの中にきらめきを残したラストだった。

  • ファンタジーながらに宗教的世界観がしっかりと形作られていて、大人でも学ぶところはある。ただの童話として読むか、作者であるマクドナルドが生きた背景にまで目を向けるか、自分で小説の深さを決められる。

  • 主人公の純粋さと真っ直ぐな心根が、物事をよい方向に切り開いて行く様が、灯火のように感じられるストーリー。彼の振る舞いは今のように苦しい時代には参考になるようにも思う。周囲の悪意を相手にしない、正しいと信じたことを実行する、思い込みを捨てて素直に物事を受け入れる、何より本質を見ること。惑わされないこと。
    しかし彼は、純粋さと悟ってしまったゆえに早くに天に召される、予想通りの結末になってしまった。ある意味北風のうらがわの国に魅せられていたから仕方のないことなのか。キリスト教的な考え方をある程度飲み込んでいないと、理解しがたいかもしれない。
    他には当時のロンドンの様子がよくわかり面白いというか、主人公の助けた少女の仕事に衝撃を受けた。そんな仕事、あったのか。資本主義の強烈な現実がなんとも言えない対比となっていた。

  • (上)の途中までは大変よみずらかったけど、北風の後ろの国に行ったあたりからは俄然読みやすくなった。
    ダイヤモンドがいい子過ぎるのは夭折する子への神様の贈り物なのかな。
    マザーグスの詩のことをほとんど知らないので本編の詩の理解がいまいちできなかったのが残念!

  • どうして、北風が現れたんだろう?って考えていました
    何かメッセージを伝えるためとか?
    ファンタジーな事を考えていたのですが
    ハヤカワ文庫版の解説を読んだら残念な気持ちになったよ
    つまり、ダイヤモンドは、死の世界をさまよっていた?
    北風のうしろの国は、もっとハッピーなおとぎの国のイメージがいいなぁ

    ヒノヒカリ姫のおはなしや、マザーグースらしい詩もあっていろんな楽しみある本でした

  • この作品に影響を受けたというナルニアをたしかに思い出すところもあった。でもナルニアほど宗教くさくないのがふしぎ。むしろ聖人たちが世俗的なキャラクターとして登場したり。

    真の純粋さを持っているのはダイヤモンドだけで、彼が救ったナニーだって、そんなダイヤモンドのことを、頭のねじがゆるんでいると思っている。

    「北風のうしろの国」について直接書かれた部分は意外なほど少ないのだけど、それを心のなかにずっと抱いているダイヤモンド坊やが、それを自らの力として生きていくあたり、けっこうファンタジーの力を理念的にえがいているような気もしないではなかった。

    ヒノヒカリ姫の話が、とてもきれいで好きだった。

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