クリスマス・キャロル (岩波少年文庫 551)

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  • / ISBN・EAN: 9784001145519

感想・レビュー・書評

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  • 金貸しのスクルージ爺さんは、ケチで気難しく冷たい心の持ち主です。今日はクリスマスイブだというのに、たった一人の甥を追い返し、書紀のボブ・クラチェットを安い賃金でこき使っています。しかし家に帰ったスクルージの前に七年前に死んだ共同経営者のマーレイの亡霊が現れます。マーレイの亡霊は重い鎖をつけてスクルージに警告します。「この鎖は生前のわしが自分で作ったものじゃよ。お前もわしのようになりたくなければ心を改めよ」
    そしてスクルージの前に三人のクリスマスの精霊が現れて、過去・現在・未来を見せます。
    貧しくも希望のあった若い頃の楽しいクリスマス、金だけを信じて人の温もりを自ら投げ捨てたこと、自分が周りの人々にどのような酷い仕打ちをしたのか、そして人々は自分をどのように思っているのか。
    自分の人生がどんなに冷たいものだったのか、自分が心を閉じずに人々と触れ合えば皆が楽しく良い人生が遅れるのに。スクルージは「わしが心を入れ替えれば、人々を助けることができて、わし自身も人間としての温もりを取り戻すことができるのだろう、まだ遅くはないはずだ。必ずわしは行いを改める」と決意するのでした。

    ===
    ディケンズーー!!おもしろいーー!!
    始まりかたが<まず最初におことわりしておきますが、マーレイは死んでいました。そのことに疑いの余地はありません。マーレイを埋葬したことを証明する記録簿には牧師さんと教会書紀と葬儀屋と会葬者代表とのサインがきちんと揃っていました。会葬者代表としてサインしたのはスクルージでした。(…略…)つまり、マーレイ氏が死んだことは、ドアに打った飾り釘が死んでいるのと同じくらい確かなことだったのです。(P7)>などと長々しく念押しされたのには冒頭から笑ってしまいました。
    このようなテーマは説教臭くなってしまうこともあるのですが、ユーモアと皮肉の混じり合いがとても良く、スクルージが改心して良かったと思えます。
    出てくる人たちもいい人たちで、心からクリスマスを楽しみ、お互いを思いやっているので読んでいても気分がいいですね。

    私は「クリスマスキャロル」の舞台を二種類見たことがあります。両方とも市村正親さん主演です。年末の気分向上にとても良いんですよ。
    一つは一人芝居で、市村さんがスクルージはもちろん、ドアノブから女性の役もすべて演じきります。
    もう一つはミュージカルで、これは再演のたびに年末の気分向上として3回位みにいきました。スクルージの甥と若い頃、甥の妻とスクルージが別れた女性の役をそれぞれ同じ俳優さんが演じて、大切なものを手放したスクルージと、大切に持っていた甥の姿として現れていました。また最初のクリスマスの精霊はスクルージの姉で(甥の母。しかし実際には妹ですよね?姉だと甥がなかなかの高年齢になってしまう…)、スクルージは大切な姉と会話を交わせたという描き方になっていました。

    本も舞台でも、本当にいい気持ちになるお話です。
    ではティム坊やの言葉を皆さんにも。
    「神様のお恵みが、みーんなぜんぶにありますように!」

    • マリモさん
      淳水堂さん
      こんばんはー!クリスマス・キャロル、昔、何かで簡略版は読んだことがあるのですが、全訳はまた読んだことがなく。
      今月読もうと思...
      淳水堂さん
      こんばんはー!クリスマス・キャロル、昔、何かで簡略版は読んだことがあるのですが、全訳はまた読んだことがなく。
      今月読もうと思いつつ積読になっています。クリスマスシーズンの今が読みどきですよね♪
      ミュージカルもあるのですね。
      面白そうなのでモチベーション上げて読みます!笑
      2022/12/15
    • 淳水堂さん
      マリモさんこんにちはー!

      クリスマス・キャロルいいですよ。
      読みやすいしぜひ!
      舞台やミュージカルも数種類あるようです。いい気持ち...
      マリモさんこんにちはー!

      クリスマス・キャロルいいですよ。
      読みやすいしぜひ!
      舞台やミュージカルも数種類あるようです。いい気持ちになれるお話で年を終えられて、舞台向きのお話だとおもいます。

      2022/12/17
  • 冷酷な守銭奴スクルージが、神の慈悲によって改心し善人になる話。要約するとそれだけであり、そう聞いただけで脊髄反射的に読む気を失ってしまう人も多いだろう。まして作者の御都合主義ぶりは、翻訳者ですら認めている(というより、それがディケンズの一般的評価らしい)のだから尚更だ。

    それでも私は敢えて高評価をつけたい。この作品の魅力は、ストーリーやプロットとは別の所にあると思うからだ。第一に、人間描写の妙。特に、大都会ロンドンの下町に生きる庶民の活写ぶりが秀逸だ(その光も闇も含めて)。次に、シニックでハイブロウなブリティッシュ・ジョーク。英国紳士は、たとえ読者が子供であっても手加減はしないようだ(「極めてむなしいもの」の比喩として「アメリカ合衆国の公債」を挙げるあたり)。

    そして何より、クリスマスの情景の素敵なこと! キリスト教徒でないにも関わらず、この作品を読んだあと無性にローストチキンとクリスマスプディングが食べたくなったのは、絶対に私だけではないはずだ(イギリスのプディングとやらは実はあまり美味しくないという噂を聞いていてもだ)。このクリスマスの描写だけでも19世紀イギリスの風俗小説として読んでおく価値があると思う(ただし実際は順序が逆で、この作品の発表によってクリスマスを盛大に祝う習慣がイギリスに根付いたらしい)。

    ディケンズの文章はやたらセンテンスが長くて読みにくいという印象があったのだが、岩波少年文庫の訳は平易で読みやすい。解説も充実しているので、子供だけでなく、大人のディケンズ入門としても手頃だと思われる。

    • 佐藤史緒さん
      nejidonさん、お久しぶりです!
      お気遣いいたみいります。
      お返事遅くなりすみません。
      ここのところコロナのこともあり慌ただしく、ブクロ...
      nejidonさん、お久しぶりです!
      お気遣いいたみいります。
      お返事遅くなりすみません。
      ここのところコロナのこともあり慌ただしく、ブクログからも遠ざかってました。
      でもnejidonさんのレビューは時々拝見して、ほっこり癒されてます♡
      また時間ができたらちょいちょい遊びに来ますんで気長にお付き合いくださいませ☆

      私もクリスマスキャロル大好きです。
      クリスマス前にと思って読み直していたところ、またまたハマってしまいました。
      いいお話ですよね╰(*´︶`*)╯♡

      nejidonさんもお身体にお気をつけてお過ごしください!
      2020/12/24
    • 佐藤史緒さん
      えー!ラッカムにツヴェルガー、、、
      私の好きな絵師ばかりじゃないですか、、、
      そんなの見つけたらお財布の紐がゆるんでしまいますよ。
      浮気は猫...
      えー!ラッカムにツヴェルガー、、、
      私の好きな絵師ばかりじゃないですか、、、
      そんなの見つけたらお財布の紐がゆるんでしまいますよ。
      浮気は猫さんだけじゃありませんね(笑
      2020/12/24
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      佐藤史緒さん
      どちらも品切れでした、、、絶版じゃなく品切れですから、復刊リクエストしましょう!

      新書館 | 書籍 詳細ページ | ク...
      佐藤史緒さん
      どちらも品切れでした、、、絶版じゃなく品切れですから、復刊リクエストしましょう!

      新書館 | 書籍 詳細ページ | クリスマス・キャロル
      https://www.shinshokan.co.jp/book/4-403-03021-1/

      クリスマス・キャロル | 太平社の翻訳絵本
      http://www.taiheisha.co.jp/syuppan/picture/lisbeth/05.html
      2020/12/24
  • 子どもの頃、「ミッキーのクリスマスキャロル」を見たことがありました。
    ですが、肝心の話はまったく覚えておらず、「見た」という記憶しか残っていませんでした。

    話が全然思いだせず、長年気になっていたのですが、何度か本の「クリスチャン・キャロル」にチャレンジしたものの翻訳が合わず、最後まで読み切れたことがありませんでした。

    しかし今回、はじめて手にした「岩波少年文庫」で、やっと「クリスマス・キャロル」を読み終えることができました。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    スクルージは、ケチで気難しい金貸しのおじいさんです。

    そんなスクルージのもとへ、共同経営者だったマーレイの幽霊があらわれます。

    マーレイは「これから3人の幽霊が、順番にスクルージのもとを訪れる」と告げます。

    そして幽霊とともにスクルージは、自身の過去・現在・未来を渡り歩くことになるのですが…
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    スクルージの過去をみると、なぜスクルージがこんなにケチになってしまったかがわかると同時に、昔からケチで気難しかったわけではないことも、わかります。

    自分の過去・現在・未来を見たことで、スクルージの内側は変化していきます。
    スクルージのケチっぷりは前半でしっかり書かれており、こんなにケチなじいさんが果たしてすぐに変わるもの?と思うかもしれません。

    しかし、感情をもったひとりの人間だったスクルージの姿を、まず過去で見ることで、「まあ、この過去があるなら、スクルージのケチが治ることもあるかもしれないな」と、ちょっぴり思えてくるのです。

    この小説が書かれたのは1843年ごろです。
    訳者あとがきでも書かれているように、当時のクリスマスの様子は現代のクリスマスと全然ちがっています。
    そのため、挿し絵が助けてはくれるものの、小説に書かれている情景を思い浮かべるのに、なかなか苦労しました。
    本作の読者対象は小学5・6年以上になっていますが、それでも、読み解くのに苦労があると思います。

    ただ、「クリスマス・キャロル」が教えてくれることは、とても大切なことです。
    「クリスマス・キャロル」のお話を知っているかどうかで、スクルージだけではなく、わたしたち読み手のこれからの人生の歩み方をも、変わってしまうかもしれません。

    海外の名作小説は、どう翻訳されるかで、読みやすさも印象も、全然ちがってきます。
    少年少女の頃、このお話を読めなかった人も、決して遅くはありません。
    自分が読みやすい翻訳を見つけて読んでみると、生きるヒントが得られるでしょう。
    なぜなら人間の人生は、過去があって現在があり、そして現在をどう生きるかが未来につながっていくのですから。

    それでも、どうしても読むのがつらい!ときは、アニメ映画「ミッキーのクリスマス・キャロル」を見てみてくださいね。

  • 初めて読んだのは小学生のときで、ミッキーのクリスマスキャロルを観たのは保育園に通っていた時かな…。

    簡単に言うと「人の親切を受け取らず、他人の不幸にも目を向けない人は、ひとりぼっちで不幸に死んでいくし、亡霊になった後も苦しむことになるんだぞ」という教訓めいた物語なのだが、子どもの頃の私の記憶からすると、これは「怖い物語」であった。
    しかし、周りの友達や大人に聞くとそんな感想を言う人は誰もおらず、不思議に思っていた。
    何故私だけがそんな感想を持っていたのか。
    それはおそらく「死」というものが関係していると思う。

    「幽霊」や「お墓」、「今は亡き共同経営者」など、この物語には数々の「死にまつわるキーワード」が出てくる。
    ましてや、この物語は何者か分からない語り手から読者に語りかける方式をとっており、この物語に触れあうだけで、自分が死の国に引きずり込まれるような気になってくる。
    そして、この「怖さ」が先行していたために、私はこの物語の真意を受け取ることができなかったのだと思う。

    私自身想像力の足りない子だったなと思うが、本というものの受け取り方は人それぞれ。(開き直り)
    一人くらい、私のような感想を持つ子どもがいても面白いかもしれない。
    そのため、読書感想文や朗読会の題材としてはとても良いと思う。

    現在の私は教訓も読み取れたし、スクルージが最終的には良い人になったことを喜ばしいと思う。
    しかし、冒頭に出てきた、マーレイや他の苦しんでいた亡霊はどうなったのだろうか…。
    今もクリスマスの時季になると苦しんでいるのだろうかと考えると、少し陰鬱になる。

  • キリスト教の隣人愛、自分の周りの人に親切にすることを大切にする教えを改めて教えてくれる本だった。この本が書かれたときは、イギリスの産業革命や宗教改革でクリスマスの行事が下火になっていたときだった。こな本で改めてクリスマスを大事にして、キリスト教の教えを大事にすることを思い出したんだろうな。
    幽霊が過去、現在、未来のスクルージを見せて、クリスマスの大事さ、楽しさを思い出させ、頑固で不親切なままだとこんな悲惨な未来が待っているよと伝えるのは分かりやすかった。けれども、表現が固くて中々読み進めるのが難しかったな。日本以外の文化や習慣は、背景や前提を知らないからすっと頭に入ってこない。けれども、少しづつ知っていければいいなと思う。

  • 『フランダースの犬』に続き、クリスマスシーズンに読む岩波少年文庫。今回はガチです。
    こちらも有名な話ですが、ちゃんと読んだことがないって人も多そう。
    
    あらためて読むと、庶民のクリスマスの描写がすばらしいです。貧しくても小さな七面鳥を貸しかまどで焼いて、リンゴソースとマッシュポテト、クリスマスプディングのご馳走で祝う書記の家族。
    解説によるとクリスマスの風習が廃れていたのがこの物語によって復活したとか。カーライルが七面鳥を買いに行ったというエピソードも。
    
    過去、現在、未来をめぐることで心を入れ替えるという大筋はやや説教くさいんですが、過去は変えられなくても人間いくつになってもやり直せるんだと思うと希望のある話です。
    
    子供向けの物語として書かれていると思いますが、かつての恋人が別の人と結婚して素敵な家庭を築いているとかシビアな話が入っていたり、文章のひとつひとつがさすがディケンズだったりします。
    
    以下、引用。
    
    つまり、マーレイ氏が死んだことは、ドアに打ったかざり釘が死んでいるのとおなじくらい、たしかなことだったのです。
    
    そしてその冷気は、クリスマスが来ても、温度計のたった一目盛りさえ、やわらぐことはありませんでした。
    
    「とにかくクリスマスは、親切と、許しと、恵みと、喜びのときなんです。長い一年のなかでもこのときだけは、男も女もみんないっしょになって、ふだんは閉ざされた心を大きく開き、自分たちより貧しい暮らしをしている人たちも、墓というおなじ目的地にむかって旅をする仲間同士なのであって、どこかべつの場所へむかうべつの生きものじゃないんだってことを思い出すんです。」
    
    店の主人と店員たちは、前かけをきりりと巻いて、みんな感じよくきびきびしています。その前かけを留めた金具はうしろにあり、ぴかぴかのハート型をしていましたが、まるでそれが本物の心臓で、みんなに見てもらえるように身体の外につけたのだと言わんばかりです。
    

  • クリスマスには、こういうお話が読みたいものです。ヤボなことは抜きにして、おすすめ。

  • 有名なタイトルですが、初めて読みました。
    ディケンズの作品は、「大いなる遺産」しか読んだことはありませんでした。
    本作は、1843年に書かれた作品だそうですが、今読むと子ども向けのような印象を受けました。
    訳者の解説を読むと、時代背景や当時のクリスマスの様子などが分かります。

  • 何回読んだかわからない

  • クリスマスの浮き立つ気持ちと町並みと雰囲気と人々が
    これ程幸せに描かれている物語は他に無い気がする。
    料理の表現が本当に美味しそうで素晴らしい。
    特に、クリスマスプティングの描写は、
    ちょっと、すごいことになっている

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著者プロフィール

Charles Dickens 1812-70
イギリスの国民的作家。24歳のときに書いた最初の長編小説『ピクウィック・クラブ』が大成功を収め、一躍流行作家になる。月刊分冊または月刊誌・週刊誌への連載で15編の長編小説を執筆する傍ら、雑誌の経営・編集、慈善事業への参加、アマチュア演劇の上演、自作の公開朗読など多面的・精力的に活動した。代表作に『オリヴァー・トゥイスト』、『クリスマス・キャロル』、『デイヴィッド・コパフィールド』、『荒涼館』、『二都物語』、『大いなる遺産』など。

「2019年 『ドクター・マリゴールド 朗読小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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