ジ-ンズの少年十字軍 (下) (岩波少年文庫 584)

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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145847

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  • 久々に再読
    一回目の感想―『王への手紙』『白い盾の少年騎士』のトンケ・ドラフトに続く、西村由美訳オランダ作品。オランダの作家ではミリアム・プレスラーがすごいと思っていたが、『王への手紙』(オランダで過去50年間に出された子どもの本の中から第一位に選ばれた)を読んでうなり、今度はこの『ジーンズの少年十字軍』だ。結局翻訳者の数によって紹介される作品数にかなりのアンバランスが生じる訳だが少ないだけに真に価値のあるものだけが提供されるという利点もあると思う。ただ受身で待っているだけとは言え、オランダは私の中では児童文学の宝の山のような存在だ。

    20世紀からタイムスリップしていきなり13世紀の少年十字軍の子どもたちの群れの中に投げ込まれるという設定。こんな時私ならどうするだろう。彼はどんな気持ちだったのだろうと、歩きながら仕事をしながら物語をひきずって随分と考えた。よい物語にはそういう力がある。カバー絵はすばらしいが、欲を言えば挿絵もほしかった。
    20081220
    二回目ーこの時代の死に対する感じ方、人を殺すこと、生き物を殺して食べることなどすべてひっくるめてリアルに描いている。児童文学だからといって手加減していないので歴史小説としての重みを感じる。

  • 今年、もっとも、ページをめくる手が止まらないのを感じた本。
    同じ翻訳者のオランダ中世小説の王への手紙よりさらに自分に合っていたかも。

    タイムトラベルもので、13世紀の少年十字軍と周辺の町を描く。
    あっさり順応する様子にはビックリするけど、ごく普通の主人公と、ごく普通の子供たちが、一種の夢に動かされ、巨大な集団になったとき、どう動いていくかは誰にも制御できない空気があって、この先どうなるんだろう、とドキドキが止まらなかった。
    行き場所のない大量の子供が長距離を移動する、それだけなのに、こんなにドラマが詰まっている。

    とにかく子供が死にまくる。
    でもいちいち止まっていない中世人。
    ドライ。
    まあ、生きる中にたくさん死があった時代なんだろうね。

    今時のタイムトラベルものだと、主人公が現代の知識や科学で一挙ヒーローに、という展開が多いけど、この主人公はもっと地道にやっていて、そこも面白かった。

    なにより、子供の集団、というものが、ひとつの魔物だという事実が無理なく描かれている。
    無知で残虐で、純粋で宗教的な憧れを持っている子供の集団というのは、それぞれ悪知恵を持つ大人の集団より不気味なものだ。

    少年十字軍の宗教的リーダーである、ニコラースを主人公サイドにしない作り方が面白い。

    ラストはあっさりしていて、ちょっとびっくり。

    15歳のドルフ。
    大人から見れば少年だけど、子供たちのなかにいれば、十分リーダーだろうね。

    最後に個々の人物について自分用のメモ。
    タデウス修道士、もっとウラがあるのかと疑っていてごめん。小児性愛とかじゃないのね。。。
    ペーター、賢いけどどこか抜け目なく怖い。最後に造反とかするのかと思った。ごめん。
    マリーケ、かわいい以外はあんまり魅力がわからなかったごめん。モテモテ少女。
    カロルス、イケメン王子の突然の死にびっくり。しかもずっと、カルロスだと思ってた。ごめん。

    レオナルド。
    クールなイケメン。
    初っ端から全ての対応がクールで、読者の心と十字軍の子供の心をがっちり掴む。
    棍棒で熊を撃退させる男。無双すぎる。頭脳だけじゃないフィボナッチ数列。
    飛び抜けて作者に愛されてたっぽいキャラ。
    たまに出てくる、レオナルドを表す、学生は、という書き方が可愛いです。
    あっさりマリーケをもらっていく(つもりでいる)ラテン野郎でした。ヒューヒュー。

  • 終わり方がやや唐突? レオナルドの存在がいい。

  • 上巻に。

  • 最後に仲間のみんなが駆けつけてドルフを呼ぶところで感極まった。

    彼らはドルフのことを「神の使い」だったと認識するのかもしれない。

    異端などの価値観の違い、盲信、純粋さへの付け込み、裏側に垣間見える政治、死ぬ子どもたち、目論見が露見した末のリンチという容赦ない描写の数々の中に、淡々(誇張されすぎない)絆が書かれているのが感じられる。
    レオナルドとドルフを中心に、彼らのさりげない支え合いや誠実さ、敬虔さが愛しい。
    名作です。

  • この物語の魅力の1つは主人公であるドルフがその他の少年たちとはまったく異質の文化の中で育っているという点にあると思います。  周りの人たちと服装が違う、言葉が違う(古代語なんかしゃべれません)、価値観が違う(迷信、異端呼ばわり、何でも神の思し召し。)、常識が違う。  そんな異質な彼が、ふと気がつくとみんなのリーダーになっているんですよね。  

    現代的な合理性と平等社会で育った彼の言動は中世の人たちの目には時に「異端」と映るんだけど、確実に生きのびる方策を考え実行に移すことができるのが、この齢15歳の少年ただ1人なんですよ。  無秩序で「信仰心」だけの寄せ集め集団(もっともこれが本当の意味での信仰心なのか、単に苦しい今の生活から逃避できるという希望のようなものなのかは、定かじゃないけど)だった「少年十字軍」を、ひとかどの組織にしちゃうんだから、本人が生き抜くための苦肉の策と言えどもやっぱり凄い!!

    (全文はブログにて)

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