ドラゴンフライ: ゲド戦記 5 アースシーの五つの物語 (岩波少年文庫 592 ゲド戦記 5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (558ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145922

作品紹介・あらすじ

ある少女が、自分の持つ力をつきとめるため、大賢人不在の魔法の学院ロークを訪れる。表題作を含む、アースシー世界を鮮やかに映し出す五つの物語と、作者自身による詳細な解説を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 「私たちは揺るがない確かなもの、遠い昔からある真実、変わることのない単純さを、ファンタジーの領域に求める。ー
    するとそこに多額の金が注ぎ込まれる。模倣と矮小化された“商品化されたファンタジー”は、かわいく安全なものとなり、ステレオタイプ化されてガッポガッポと金を儲けていく。ー
    私たちは長い間、現実と空想の両方の世界で暮らしてきた。しかし、その暮らし方は、どちらの場合も、私たちの両親やもっと前の先祖たちのそれとはちがう。
    人が楽しめるものは年齢とともに、かつまた時代とともに変化していくものなのだ。-
    物事は変化する。
    作家や魔法使いは必ずしも信用できる人たちではない。
    竜がなにものであるかなど、誰にも説明できない。」
    再びアースシー世界に足を踏み入れるにあたってアーシュラ・K. ル=グウィンが記した警句である。

    それは自らが創りあげた美しい世界に目を凝らし、そこに潜むひび割れを鋭く批判する作業である。
    賢人の島ロークの権威が孕む矛盾と欺瞞が語られるとき、ファンタジーの魔法は解けるのか?
    いや、『カワウソ』そして『ドラゴンフライ』はアースシーとリアルな世界を共鳴させることで、物語をより重層的にそして切実に感じさせてくれる。ファンタジーのテーマは剣と魔法だけじゃない。

  • 5作目読了です。ゲドがほぼ出てこないのでゲド戦記シリーズとは呼べないと思うけど、アースシーの世界の物語でどれも面白かった。冒頭のカワウソの話は一番読み応えがあって、カワウソが出会う闇(ゲラックと水銀)と闘っていくところとか、ロークの学院をどう立ち上げたかとか、深い物語になっています。ロークの学院や魔法の世界自体、女性禁止だけれど、ロークの立ち上げには「手の女」たちが深い携わりをしていることが分かったし、なんで女性禁止になってしまったのかなあ。昔から、どこの世でも男性が政をし強い権力を持ち、女性はそれを支えるための存在であり続けたわけだけど、禁欲こそ自分を高め守り抜くことであり、女はそれの邪魔をするという発想なわけですよね。宗教の世界でもそういうことは聞くから、そういうところとも話は繋がっているのだろうか。ゲド戦記1〜3ではストーリーが面白く世界観が良かったけれど、4と5での1番のテーマは、「女性とその立ち位置」になっていると思う。才能があっても虐げられたり、居場所がなかったりと。作家さんが女性の方なので、やはりそういうメッセージなのかなあと思った。

  • ゲド戦記全6部作の内の5作目。
     
    これまでの4巻に比べて、
    ゲドの出番がほとんどありません。
     
    副題にある通り、5つの短編が語られています。
     
     
    今回の5つの作品には共通したテーマがある。
    読んでいて私はそう感じました。
     
    それは『勇気』。
     
    楽な方に流れるのではなく、
    自分の正義を貫く『勇気』。
     
    自分のやりたいことをする『勇気』。
     
    伝統を壊す『勇気』。
     
     
    あなたは『都合のいい言い訳』をして
    結局何もやらずに、後で後悔した、
    なんて経験はありませんか?
     
    もし思い当たることがあるなら、
    この作品を読んで、自分の『勇気』を
    奮い立たせてください。
     
    『勇気』を出したい大人にこそ
    読んで欲しい作品です。

  • 実際に手にしている本は、単行本<ゲド戦記外伝>。
    最後のアースシー解説は少々読むのがしんどかった。

  • アースシーの世界のエピソード集です。「帰還」より生活する人間たちがさらにリアルに語られています。「手の女」たちの結社が、ロークで学院として発展するにつれて、魔法の場が男性に独占され、女性のまじないの営みは俗のものとして貶められていく…。ファンタジーとは思えなくなってきました。
    「ゲド戦記」から冒頭にアースシーの詳細な地図が載っていて、物語世界の設定の緻密さに感嘆しましたが、歴史まで綿密に組み立てられていたのですね。すごい…。

  • 年代順に並ぶ短編集
    まえがきにある作者の物語へのスタンスが面白い
    アーキペラゴへ行き、収集してきた話を書きつけているという
    実際書いている感覚はそんな感じなのかなと想像してみるも、アースシー解説の記述の詳細さにくらくらする

  • 1.2巻は面白くて一気に読めたのですが、3.4.5巻は話しがトントンとは進まず、ちょっと苦手でした。

  • まえがきもなかなか印象的だ ファンタジーの商品化

  • 外伝の位置らしい短編集。

    「ドラゴンフライ」はいよいよ最終巻へ、という感じがしてわくわくした。
    「湿地で」もとてもよかったな。
    大賢人のゲドの話、安心する。

    4巻から急に「男と女」の色が濃くなってきて、そこだけは戸惑う。これを児童書の位置にしておくのはきついのでは。

  • ゲド戦記外伝、短編集。独自の世界観のなかでのファンタジー。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル・グィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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