フランバーズ屋敷の人びと 3 めぐりくる夏 (岩波少年文庫 599)

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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145991

感想・レビュー・書評

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  • この物語、恐らくは KiKi が漫画「キャンディ・キャンディ」なんかを読んでいた時代だったらもうちょっと惹かれるものがあったかもしれません。  どことなく舞台設定が似ているんですよね~、あのマンガと。  でもキャンディとクリスチナだったらキャンディの方が魅力的かも・・・・・です。  これはキャンディの方がバイタリティにあふれた女性でクリスチナの方は頑張ってはいるものの、所詮「お嬢様」の域を出ていないから・・・・なのかもしれません。

    第2部の「雲のはて」はカーネギー章を、第3部までの3部作でガーディアン章をとったとのことなんですけど、第2部、第3部と進むにつれ、KiKi にはあの第1部でも感じた「あまりにベタなプロット」が少々どころじゃないほど鼻につき始め、現代を生きる KiKi から見るとクリスチナの「世間知らずの金持ちのお嬢さんの悪意なき無神経さ」が嫌味に感じられるようになり、「これはセックスアピールの少ないハーレクイン・ロマンスか?」みたいな気分が盛り上がってきてしまいました。  (因みに KiKi はあの一世を風靡した「ハーレクイン・ロマンス」っていうやつが大嫌いです。)



    第1部でも感じた様々な描写の躍動感みたいなものは少なくとも第2部の「雲のはて」までは生きていると感じます。  そして、飛行機黎明期の「ヒコーキ野郎」の情熱とか、宮崎さんが絶賛していた「飛行機そのものの描写」みたいなものは確かに凄いと思わされます。  これが女性作家の手になるものである(旦那のアドバイスが多々あったのかもしれないけれど)ことを考えれば尚更です。  でも、そんなある意味男性的な世界観の描写とハーレクイン・ロマンスばりの女々(おんなおんな)したリアル感に乏しい感情的な描写のギャップがどうもねぇ・・・・・・。  何だか二重人格っぽい不安定さを KiKi に感じさせるんですよね~。

    まあ、第一次大戦前後の前時代的な風潮が色濃かったイギリス貴族階級の現実(しかも女性のそれ)というものが、ことほどさように地に足のついていないような雰囲気のものだったということもあるのかもしれないけれど、いずれにしろ「ああ、クリスチナよ、結局お前もそこまでか??」みたいな印象になっちゃうんですよね~。  第一部で感じられたクリスチナが時折見せる「目覚めの兆し」みたいなものが悉くなかったものとされていっちゃっている感じで、何だか読み心地が悪いんですよ。

    「雲のはて」のクリスチナは「ヒコーキ野郎」についていこうと必死で、その必死さはわからないじゃないんだけど、生活をなりたたせるために働いている割には「労働の喜び」とか「社会性」みたいなものを感じさせないし、「めぐりくる夏」に至ってはウィルの死後フランバーズ屋敷に戻るのはいいとしても、手前勝手にかつての雇女中ヴァイオレットが産んだ子供(実はマークの子供)を引き取ると決めてかかったり、女手一つではどうにもならない農園経営をディックが必ず助けてくれると勝手に思い込んだりと「金と身分があれば何でも通用する」と無邪気に思えちゃう貴族階級の身勝手さ(しかも本人にはその自覚も悪意もないところが始末に負えなかったりする ^^;)を丸出しだし・・・・・。

    挙句の果てにマークも亡くなったウィルもディックも、みんながクリスチナを愛していて、対するクリスチナも愛し方が異なりながらも3人とも愛していると来た日には唖然とせざるをえなかったりもするわけで・・・・・。  第2部で初登場した男好きのする(ついでに本人も男好きの)ドロシーの方があっけらかんとしている分まだ嫌味がなくて、クリスチナの態度の方には「上品そうな外見を取り繕いつつも・・・・」的な反感に近いものまで感じちゃう有様です。  まあ、そんな手練手管を無意識のまま駆使できることこそ貴族子女の素養の1つと言ってしまえばそれまでなんですけどね(苦笑)

    乗りかかった船(?)なので、一応最後まで読み通そうとは思っているけれど、何となく気が進まないなぁ・・・・・。

  • ウィルを失ったクリスチナのもとにあの男が帰ってくる。

    ウィルが戦死した後、クリスチナはフランバーズ屋敷に戻ってきた。荒れた屋敷に気落ちするも農場を始めようとする。ウィルとの子イザベルを産み、マークとバイオレットの子ティジーを引き取り、ディックの協力を得て、農場の仕事を進めていたクリスチナ。うまく動き出したと思ったところに、行方不明になっていたマークが帰ってくる。屋敷も農場もマークのものとなり、クリスチナにできることはマークの求婚を受け入れるか、すべて手放してディックと行くかの二択となる。

    マークはめちゃくちゃだがある意味抗えない魅力的な男であるのは間違いない。ドロシーとの結婚を決めたマークが、それでも一番結婚したいのはクリスチナだと言うのが論理的でなく暴力的なマークそのものだと思った。クリスチナとマークの相性はよすぎるのだと思う。結婚すれば毎日が言い争いの嵐だろう。馬に乗るクリスチナを褒めるマークは、クリスチナの魅力だけでなく、クリスチナの本質をわかっている。クリスチナもマークに惹かれるところはあるものの、今回選んだのは、農場を助けてくれた、ずっとクリスチナを愛していた、控えめなディック。

    この選択が吉と出るか凶と出るか、不安要素は戦争とディックの病気。いずれにせよクリスチナはまたマークと屋敷のことや愛の行き先で向き合うことがあるのだろう。

  • 原文で読むため平行して少しずつ。私の中では再読回数№1のこのシリーズだが、何度読んでもすばらしいの一言に尽きる。☆10個でも足りない大好きな作品。あとがき北上次郎

  • 初めての夫を戦火で失うも、一度は逃げ出した屋敷に戻り、男並みの逞しさで「家庭」を再建しようと奔走するクリスチナ。

    現実に振り回され倒れこんでしまいそうなところへ、力強く守ってくれる男・ディックに自分の全てを委ねていく。

    現代との家や家族の捉え方が大きく異なるのも興味深い。

    怪物のような屋敷があり、人間はその周りをくるくる回るコマのよう。

    クリスチナと一緒にくったくたになれます。

  • うん、やっぱりね!というオチ。物語としてはスピード感があって楽しいのだけど、クリスチナがいやなヤツだなぁ~という気持ちが巻を追うに従って膨らんで共感できなくなった…。

    特にヴァイの生んだ私生児を引き取るところとか。子供はおもちゃじゃない。

  • 2巻はクリスチナがウィルとの結婚式に向かう場面で終わっているのに、3巻冒頭でいきなりウィルが戦死していてびっくり!
    彼女がフランバース屋敷の再建に取り組む姿が力強い。
    そして、使用人との恋がちょっとトキメキです。

  • すべてはまるく、おさまるところにおさまったのだけれど。

  • ウィルが戦死し、フランバーズ屋敷を再建することを決意するクリスチナを描く。この三巻目で、ようやくクリスチナが生き生きと動き出した感じ。
    資産をようやく手にし、馬を飼い、農場を始め、マークの子どもを引き取り、自分も出産する。
    自分の弱さを自覚しながらも、生きるため強気にふるまい、家事・家業をとりしきる姿は胸を打つ。
    年老いて頑迷な召使と、知恵遅れの少年と素行の悪い少年、言葉の通じないドイツ人捕虜というつぎはぎのメンバーを使って仕事をする苦労は並大抵ではない。
    そこにディックがやって来て「ああ、ディック」と読むほうもほっとするんだけど、死んだと思っていたマークが現れるのよね。
    クリスチナはマークを愛していないと言いながら、ほんと、マークには甘い。
    そこがいらいら。
    でも、面白く読んだ。

  • ここまでは、小学校と中学校時代に読んでいるんです。でも、今読み返しても、ものすごく読み応えがあって、面白いですよね。
    というか、2巻目ぐらいから、もう、クリスチナ、少女じゃないし、はっきり言って、児童文学の枠からは、はみ出ている感じです。

    遺産相続問題。
    複雑な人間関係の中におかれた子どもたち。
    時代の移り変わりとともに、変化していく価値観。
    そして、それに追いつかない自分の心。
    新しいものも、古いものも愛しているのに、どちらかを選べと突きつけられる選択。

    なんというか、いろんな小説のおもしろさが詰まっています。

  • シリーズ3作目

    <ネタバレ注意>








    1ページ開いた瞬間にウィルが死んでるっていう衝撃的事実w
    2巻との間に何があった…!ていう感じでした。
    クリスチナは21歳になって、親の遺産を手にしてフランバーズ屋敷に戻ってきたところです。
    1巻や2巻で出てきた人たちに会いに行ったり、
    屋敷を立て直したり、火事になったり、そして2度目の結婚…
    など相変わらず立て続けに色々なことがあるので
    読んでて飽きないです。
    ディックかっこいいよディック…

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