八月の暑さのなかで――ホラー短編集 (岩波少年文庫)

著者 :
制作 : 金原 瑞人 
  • 岩波書店
3.56
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001146028

作品紹介・あらすじ

英米のホラー小説に精通した訳者自らが編んだアンソロジー。エドガー・アラン・ポー、サキ、ロード・ダンセイニ、フレドリック・ブラウン、そしてロアルド・ダールなど、短編の名手たちによる怖くてクールな13編。全編新訳。中学以上。

感想・レビュー・書評

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  • akikobbさんのレビューから読みたくて。金原さんの瑞々しい訳で怖がりでも楽しめた。その後が恐怖『八月の暑さのなかで』最後の一言効く『ブライトンへ行く途中で』大人な味『顔』一番嫌な雰囲気『ポドロ島』正統派『ハリー』が印象的。

    • 111108さん
      「怖がりでも楽しめた」って、実はあんまり褒めてないかも?初心者大歓迎ということで‥。
      「怖がりでも楽しめた」って、実はあんまり褒めてないかも?初心者大歓迎ということで‥。
      2023/06/24
    • akikobbさん
      いえ、なんというか、「激辛カレーというからただ辛いだけのシロモノかと思っていたが、食べてみたら辛味の奥に甘味苦味酸味旨味…と複雑な味わいがあ...
      いえ、なんというか、「激辛カレーというからただ辛いだけのシロモノかと思っていたが、食べてみたら辛味の奥に甘味苦味酸味旨味…と複雑な味わいがあることがわかり、辛いものが苦手な私にとって確かに辛いことは辛いのだが、でも美味しいと感じた」みたいな感じでした、私は。怖いっちゃ怖いですよね?!でももっと欲しい!と…。
      2023/06/26
    • 111108さん
      ↑うわー!まさにそうそう!という感じです♪
      これくらいの辛さならまだ違う風味もいけるんじゃない?と。挑戦しちゃおう(๑˃̵ᴗ˂̵)
      ↑うわー!まさにそうそう!という感じです♪
      これくらいの辛さならまだ違う風味もいけるんじゃない?と。挑戦しちゃおう(๑˃̵ᴗ˂̵)
      2023/06/27
  •  「ホラー」短編集なんて言われると構えてしまうけど、読んでみるとなんだか懐かしく、「ふしぎな話」みたいなタイトルで、こういうジャンルの本や作品群には子どもの頃から慣れ親しんでいたような気がする。

     以下、「これくらいならネタバレしても作品本体を読む楽しさは損なわないだろう(私判断)」程度にはネタバレしてるかもしれない備忘録。

    ■エドガー・アラン・ポー『こまっちゃった』(一八三八、一八四五)
     金原瑞人さんによる翻案。原作は、はじめは『The Scythe of Time(時の鎌)』というタイトルで発表され、のちに『A Predicament(ある苦境)』に改題されたとのこと。未読だが、この翻案の次のような状況と同じことが原作でも描かれているのなら、どちらのタイトルも本当によく言い得ている。どんな状況かというと、時計塔の文字盤の窓から顔を出して街を見下ろしていたら、気づくと下りてきた長針が首に当たっていて、顎は窓枠に引っかかって動けない…という状況。
     真面目な話、こういう絶体絶命のシーンを想像できる力って、仕事でも生活でもリスク管理的に大事だったりするけど、作家の場合これをどうエンターテインメントにできるかっていう素材になるんだなあ。まさに時の鎌、苦境、こまっちゃった、ってだけなのに、読んで後悔しない面白さ(?と思うかどうかは人による)。

    ■W.H.ハーヴィー『八月の暑さの中で』(一九一〇)
     短い(十一頁)、その短さがまた怖さを引き立てている。書かないことでこんなにも雄弁に語る小説があるだろうか。

    ■サキ『開け放たれた窓』(一九一一)
     さらに短かった(七頁)。こんなに短い中で、「この人が怪しい」と思わせる人物がこうもコロコロ変わる小説があるだろうか。

    ■リチャード・ミドルトン『ブライトンへいく途中で』(一九一二)
     男が出会う謎の少年の正体は私にはわからなかった。二人の会話もわかるようでわからなかったけど、すごく苦しいときの道のりってこんな感じかもしれない。

    ■ロード・ダンセイニ『谷の幽霊』(一九一九)
     父は煙突の煙、母は川面の霧、という幽霊が登場する。ちょっぴり説教くさいけれどもときにハッとさせるようなことを言うから侮れない上司、みたいな小説。

    ■レノックス・ロビンスン『顔』(一九一九)
     何か人ならぬ者に魅せられてしまった男の話。
     大学生のころたまたま訪れたオルゴール展かなにかで見た、オートマタっていうんですかね、きれいな白い顔の少年の人形が音楽を奏でる機械に妙に心を惹かれ、この人形の少年に恋をする物語とかありそうだなあ、なんて思ったことを思い出した。
     そんなわけで本作はけっこう好き。主人公の父がなぜあんなことをしたのかという謎についてさまざまな解釈ができそう。

    ■E.M.デラフィールド『もどってきたソフィ・メイソン』(一九三〇)
     幽霊話。なんだけど、私も昔夜のお墓やなんかを怖がっていたら、親や祖父母に「お化けなんかより生きてる人間の方がよっぽど恐ろしい」と言われたものです。

    ■フレドリック・ブラウン『後ろから声が』(一九四七)
     喧嘩した恋人が立っているのが見える。彼女が自分に一声かけてくれさえすればそれでいいのにと思いながら、何も言ってくれない彼女の前を通り過ぎるシーンの切なさ、やるせなさ、悔しさ、怒り、ここの心情描写が見事だなあと思っていたら!それだけじゃなかった。

    ■L.P.ハートリー『ポドロ島』(一九四八)
     ヴェネツィア沖のポドロ島に男女三人で行く話。
     友人の妻アンジェラ役を昔の若尾文子で、日本で短編映画になっててもしっくり。「次もダメだったら、あたくし、殺してしまおうかしら。そうするっきゃないわね?」なんてあの淡白な早口で言ってほしい。

    ■フランク・グルーバー『十三階』(一九四九)
     蒸留器を買い求めただけでこんな目に遭うのはちょっと気の毒すぎる…。
     十数年前が禁酒法の時代で、その頃密造酒を作るのに蒸留器を用いた人たちがいて、それ以外にどんな用途でそれを使うのか普通の人にはわからない、そんなニッチなアイテム蒸留器。「あ〜、あったねえ!もうすっかり見なくなったけど」という「あの頃」感に、酒の密造という後ろ暗さも加わって、小道具として面白いんだろうなあ。実感は持てないけど。

    ■ロアルド・ダール『お願い』(一九五三)
     道の舗装の白いところだけ通っていいルールで家まで帰るなど、誰しも子どもの頃にやったことがあるのではないかと思いますが、それを想像力豊かにやれば当然こうなりますわな…という解釈で合ってるかな。
     序盤のかさぶた剥がしの顛末とタイトルとが前向きだから、視点を引いて見ればこれはホラーじゃないと私は信じてるんだ。

    ■ジェイムズ・レイヴァー『だれかが呼んだ』(一九五五)
     最後の一行を読むまで怖さに気付けない私は、推理小説で謎を解けるわけがないのだ。

    ■ローズマリー・ティンパリ『ハリー』(一九五五)
     なんと都会的で現代的なホラー。引っ越してきたばかりの街で孤独な育児をする妻に、理解ある夫風の対応をするが全然わかってない夫、そんな妻も「"頭のおかしい"人はかわいそうなのかもしれないけどやっぱり怖い」という自分の本心をもってしか人と相対することはできず、最後はもうホラーじゃなくてこんなの悲劇、悪夢、地獄。
     妻の怖がり方、個人的にはすごく共感してしまうが故に、愛とか人間性とかの意味でとても刺さってしまい、この人の今後の人生が気になってしかたないよ…。
     金原さん、ラストにつらいの持ってくるなあ。

  • 「だいたい、幽霊なんているのですか?」
    その時風が吹いて、たちまち幽霊は消え去った。
    「かつてはいたのだ」かすかなため息がきこえてきた。
    ─ 62ページ

  • ホラー短編集シリーズの中で一番好きな1冊です。
    読みやすくてすらすら読めちゃいます。
    ゾッとする話がいっぱいあります!

  • 金原氏がノリノリで楽しい。

    このなかで面白かったのは、

    後ろから声が
    十三階

    の二つ。
    後者の作者、フランク・グルーバーは多くのペンネームであらゆるジャンルに書いたとのこと。
    林不忘、牧逸馬、谷譲治みたいなかんじかな。読んでみたい。

  • この一冊には全部で13話収録されている。

    ●こまっちゃった エドガー・アラン・ポー.(アメリカ)
    ●八月の暑さの中で W,F,ハーヴィー. (イギリス)
    ●開け放たれた窓 サキ(H・H・Munro 1870~1916) (スコットランド)
    ●ブライトンへ行く途中で リチャード・ミドルトン (1882~1911)(イギリス)
    ●谷の幽霊 ロード・ダンセイニ.(1878~1957)(アイルランド)
    ●顔 レノックス・ロビンスン(アイルランド)(1886~1958)
    ●もどってきたソフィ・メイソン E・М・デラフィールド(1890~1943)
    ●後ろから声が フレドリック・ブラウン(アメリカ)
    ●ポドロ島 L.P.ハートリー(イギリス)
    ●十三階 フランク・グルーバー(アメリカ)
    ●お願い ロアルド・ダール(イギリス)
    ●だれかが呼んだ ジェイムズ・レイヴァー.(イギリス)
    ●ハリー ローズマリー・ティンバリー.(イギリス)

    --------------------
    岩波少年文庫 読書記録

    記録日:  2018年4月17日(火)

    タイトル:八月の暑さの中で
    (八月の暑さの中で)
    番号:602
    ISBN:978-4-00-114602-8.

    作者(国籍):W,F,ハーヴィー. (イギリス)
    訳者:金原瑞人

    収録タイトル:八月の暑さの中で.

    作者について 生い立ち、経歴、家族、代表作品等

    ヨークシャー地方の裕福な家の生まれ リーズ大学で医学を学ぶ。第一次大戦では軍医として従軍。爆発直前の駆逐艦で気缶軍曹をすくった功績によりアルバート勲章を賜わる。その時に傷めた肺に後遺症が残っていたため52歳で亡くなるまで小説や自伝を書いて過ごした。


    登場人物・あらすじ・場所・時間等

    主人公 ジェイムズ・クレアランス・ウィゼンクロフト. 40歳男性健康。画家
    家族は無く 一人暮らし。
    暑い日にあるアイディアが浮かびそれを一気に書き上げ何故かそれを持って夕刻になっていたが歩き始めた。
    7.8キロほど歩いたころ小さな男の子に時間を聞かれ我にかえる。18時40分だった。
    我に返り周囲を見回すと花の咲いている庭が見えた。看板には石工と書かれていて陽気な口笛とハンマーの音とノミ外資を削る冷たい音がしていた。そして足音に振り向いた。その顔は何故か今日書いた絵の中の男とそっくりだった。彼は石工で墓石の品評会用の最新作を作っていた。その新作墓石には 「ジェイムズ・クレアランス・ウィゼンクロフト 1月18日生まれ 8月20日急死 生の中にも死はあり」と掘られていた。
    ジェイムズはおどろいて、それは私の名前と生まれた日だと告げた。更に今日書いた絵も見せて、実は自分も不思議な絵を描いたと告げる。
    2人はこの偶然をどうしたらいいのか分からなかったが、ジェイムズは石工の家で一晩過ごす(2人で居るのが良いんじゃないか)というアイディアにのった。今11時をすぎた。あと1時間で今日が終わる。石工は道具の手入れをしている。じりじりと時間がたつのを待っている。この暑さの中で。

    感想
    不思議で怖いお話 この後どうなったんだろう?
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    このほかの作品についてはメモにあり

  • 読み継がれてきた、英米ホラー小説のアンソロジー。13編の物語が入っています。
    イマドキのホラーとは違って、グロテスクや血みどろな物語というよりも、じわじわ来る感じです。ふとした時に思い出して、怖くなりそうな気がします。

  • ホラー短編集です。エドガー・アラン・ポーやサキ、ロード・ダンセイニ、フレドリック・ブラウン、ロアルド・ダールなどの短編が収録されています。色んな作家の作品を堪能できる素敵な本です。

  • 本の雑誌社さんの「作家の読書道」で、織守きょうやさんが紹介されていたので、そのうち読もうと思っていた。ら、最近読んだブックガイドでも紹介されていたので、予定を繰り上げ。

    岩波少年文庫だと真面目すぎるかな?と警戒して読んだけど、面白かった。
    さらに、解説では編集の金子さんが、原作はあまりおもしろくない、とかつい入れちゃった。もし、つまらなかったらごめん。などと、ざっくばらんに各短編を紹介してくれる。

    名作と言われているものって、さらに岩波少年文庫さまだったら、面白いと感じない自分がダメなのかと思い込みやすいけれど、つまらなければつまらないと感じていいんだ!と改めて読書自体についても、考えさせられた。

  • 児童向けホラーアンソロジー。とはいえ侮るなかれ。どれもが言わずと知れた名作であるし、やさしい語り口であるぶん恐怖はダイレクトに伝わってくるかもしれません。
    定番中の定番ということなのか、ほとんどが読んだことのある作品だったけれど。やはり「八月の暑さのなかで」は格別かなあ。これ、想像力がなければ怖くもなんともない、ただの不思議な話で終わってしまう気がします。一番想像力の大切さを試される作品なのかもしれません。
    「ポドロ島」もやっぱり気味が悪いし、「十三階」もオーソドックスなホラーで素敵。「もどってきたソフィ・メイソン」も相変わらず酷い話ですよねえ。本当に怖いのは何なのか、つくづく考えさせられてしまいます。
    読んだことがなかったかな、と思うのは「後ろから声が」。オチでざっくりやられました。怖いというか、痛々しい物語です。そして「こまっちゃった」も何とも奇妙な作品。ポーにこんな作品があったとは!

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著者プロフィール

1954年生まれ。翻訳家、法政大学社会学部教授。フィクション、ノンフィクション、児童書など、多ジャンルにわたって翻訳を手がけ、特に海外のYA(ヤングアダルト)作品を精力的に翻訳し、日本に紹介。訳書は550点以上。主な訳書に『武器よさらば』(ヘミングウェイ)、『青空のむこう』(シアラー)、『月と六ペンス』(モーム)、『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』(サリンジャー)、『リズムがみえる』(アイガス)など。エッセイ集に『サリンジャーに、マティーニを教わった』『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』など。日本の古典の翻案に『雨月物語』『仮名手本忠臣蔵』『怪談牡丹灯籠』など。ブックガイドに、『10代のためのYAブックガイド150!』、『13歳からの絵本ガイド YAのための100冊』、『翻訳者による海外文学ブックガイドBOOKMARK』など。

「2020年 『ゴーストダンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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