マルセロ・イン・ザ・リアルワールド (STAMP BOOKS)

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制作 : 千葉 茂樹 
  • 岩波書店 (2013年3月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001164039

マルセロ・イン・ザ・リアルワールド (STAMP BOOKS)の感想・レビュー・書評

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  • アスペルガーに近い症状を持つマルセロが、父の要望で、夏の間法律事務所でアルバイトをすることになる。知性は高いけれど物事へのこだわりが強く、コミュニケーションが苦手なマルセロにとって、これまで通ってきた養護学校の温かな環境から出てリアルワールドに飛びこむのは大きなストレスだ。
    じっさい、行ってみると、アクの強い弁護士秘書たちやら、いけすかない弁護士のいけすかないどら息子やらがいたりして、摩擦のたえない日々。それでも同じ部署で仕事を教えてくれるジャスミンという少し年上の女性は、思ったことをずばずば言うけれど、包み隠すところがなく、マルセロにとっていちばん理解しやすい、気を遣わなくてすむ存在になる。
    そうこうするうちに、事務所のゴミ箱から拾った1枚の写真をもとに、マルセロは事務所が闇に葬ろうとしている大きな問題があることに気づく。それを解決することは、自分の父親を危うい立場に追いこむことにつながる。人生ではじめて大きな板挟みにおちいったマルセロは、はたしてどうするのか……。

    ゆるやかなミステリ仕立てのストーリー自体でもさることながら、マルセロが言葉の表の意味と裏の意味を深く考えながら、物事の真の意味を知ろうとする、その誠実な語り口調がとてもいい。わたしたちはふだん、とてもざっくりと、いいかげんに周囲のことをわかったつもりになって、適当に流しているのだけど、なにひとつゆるがせにしないようにすると、とても大変で、でも同時にほかでは味わえないおかしみや、正面突破ならではの痛快さが生まれてくる。

    ストーリーには関係ないところにも美しいやりとりや場面がたくさんつまった、すばらしい作品だった。

  • 認知障害をもつマルセロが、夏休みの間だけ父親の弁護士事務所で働くことを通じて、「リアルな世界」で生きることを学んでいくお話。
    「リアルな世界」では当たり前にみんなが使う、表情や、皮肉や、暗黙のルール。マルセロはそう言ったことを理解することができません。なので、1つ1つを「なぜ?」と問うていく、その様子にはっと気づかされることが多い。
    なぜ心が正しいと思うことをしてはいけないのか?自分の家族や立場を守るためなら、正しいことを無視してもいいのか?
    リアルな世界に生きる身としては、何かを守るために正義を曲げることだってあるという言い分に、共感することは容易です。それでも、マルセロの「なぜ?」という問いかけは、忘れてはいけないもののように感じました。
    自分が生きる「リアルな世界」を客観的に見るおもしろさ、そしてマルセロの成長を見守る面白さがつまった1冊。

  • 発達障害の17歳マルセロが,「リアルな社会」を知るために法律事務所でインターンシップをする.

    不安を覚え,トラブルを乗り越え,成長していくお話.

  • 「リアルな世界」を経験してほしいという父親の望みに応え,ひと夏の間,法律事務所で働くことになった,マルセロ.心を揺さぶられる日々のなかで,次第に自らの進むべき道を見いだしていきます.社会に出ていく若者が経験する不安や成長を,発達障害(アスペルガー症候群)をもつ17歳の少年の内面から描いた,さわやかな青春小説.

  • 発達障害のマルセロは弁護士の父親から夏休みに自分の弁護士事務所で働き、世の中を経験し迎える高校3年生を普通学級の高校へ行くように言われる。
    リアルな世界を体験し、最後には自分で決めるように言われる。その弁護士事務所でマルセロは、事故で傷ついた少女の写真を見て父親の隠すある事実を知り、父親に向かっていく。

    発達障害の少年の成長の記録は、厳しいものだった。
    それでも、マルセロは強くたくましく成長していく。

    こういう障害についてよく知らないけれど、こんな作品をとおして理解が進むといいな。
    いろいろ、良かったなあ。

  • マルセロ・サンドバルは、発達障害(アスペルガー)の17歳。
    宗教的なことに強い興味(こだわり)を覚える。
    母オーロラ
    姉ヨランダ
    マローン先生 女性のラビ

    法律事務所を経営する父に、ひとなつ、そこで働くことを提案される。
    父アルトゥーロはマルセロにパターソン(施設)の外の世界を知ってほしいのだ。

    メール係に送られるマルセロ。そこの責任者ジャスミンはマルセロを歓迎しない。
    事務所には、共同経営者の息子スティーブン・ホームズも働いていて、ジャスミンを手に入れるためにマルセロに協力させようとする。
    そこでマルセロは一枚の写真に出会ってしまう。

    一枚の写真
    一枚の手紙がマルセロを大きく動かす

  • 151027読了。
    千葉さんの訳は好き。『ひねり屋』で惚れて、『HOOT』『スターガール』けっこう読んだ。今回、たぶん15年ぶりくらい。
    主人公マルセロは内なる音楽や「回顧」と呼ぶ瞑想が好きな17歳の、アスペルガー症候群もどきの少年。今まで守られた、安全で規則的な世界でのびのびと生活していたけど、法律事務所を共同経営している父から、この夏を法律事務所で働かないかと提案される。仕事ぶりが評価できれば、父の薦める一般の公立学校と、今まで通っている養護学校とどちらに行くか選べるという条件付き(もちろん、マルセロは養護学校に残りたい)。
    働けマルセロのとまどいや苦労が自分のことのように感じられて、もっとゆっくり考えたいのに、もっと予想通りに生活したいのにという気持ちを常に感じさせられる。その中で、メールルームでの上司ジャスミンはマルセロの意識の歩調に合わさっている感じがして、最後まで最良の理解者だった。
    マルセロは、法学生のウェンデルに言いつけられた仕事の途中、半分顔を失った少女の写真を見つける。マルセロの父やウェンデルの父が弁護している、フロントガラス会社の商品により傷ついたものだろう。この写真はどこで撮られたのか、誰なら知っているのか…。調べていくうちに、マルセロは内なる音楽や「回顧」を失っていきながら、自分で決意した正義を実行する。例えそれが、父を裏切ることになっても。
    この話はインターネットや携帯電話が使える時代で、私たちの生活に近いけれど、どこか少しのどかだ。それが、マルセロがまとうオーラなのかしらとあとになって思った。マルセロが、リアルな世界に順応していくのに背中を押したい反面、なにかを失っていく悲しさも感じた。
    マルセロが父を裏切っても正しいと思うことを全うできたのは、きっとアスペルガーや他のなにか特別なものを持った人々の才能なのかもしれない。
    最後、彼が新学期からもリアルな世界で行き続けることを決めたときに、お腹にぐっと力が入った。

  • 原題は『Marcelo in the Real World』。2009年発表作品。

  • 面白かった。
    正しいことは怖ろしい。そう感じてしまうところがどこかあって、あるいはそれが主人公の言う「ぼくの醜い部分」なのかもしれない。「正しさ」は時としてそこにある「普通」や「秩序」を乱してしまうからだ。「普通」の人々は、この「リアルワールド」を生き抜く上で必要なことをしている。別に悪いことじゃない。それは決して正しいことではないけれど。

  • 主人公を「守られた環境」「快適な範囲」から出そうとする父親の試みが、結果的に主人公が自分の手で自分の世界を見つけるきっかけとなる。

    「ぼくはアスペルガーですというとに、自分は嘘つきだと感じてしまう。というのも、アスペルガーや自閉症に苦しむほかの子どもたちと比べると、ぼくの症状からくる困難な点はごくわずかだからだ。この医学用語を使うとき、ぼくはいつも、ほんとうその症状を持つ人たちに迷惑をかけていると思ってしまう。なぜなら、ぼくを見て「あら、そう。そんなにたいしたことないんじゃない。その病気のとこが問題なの?」と思わせてしまからだ。」

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マルセロ・イン・ザ・リアルワールド (STAMP BOOKS)の作品紹介

マルセロは発達障害をもつ17歳。「リアルな世界」を経験してほしいという父親の望みに応え、ひと夏を、彼の法律事務所で働くことに。新しい出会いに仕事に戸惑いながらも、試練の毎日を乗りこえていくが、一枚の写真から、事務所の秘密を知ってしまい…。だれもが経験する不安や成長を、発達障害をもつ少年の内面からえがく、さわやかな青春小説。

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