- Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
- / ISBN・EAN: 9784002400259
作品紹介・あらすじ
鋭い観察力と軽やかな機転。ことばの達人、清少納言が描く宮仕えの日々。
感想・レビュー・書評
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【配置場所】特集コーナー【請求記号】918||S||25【資料ID】19012278
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第25巻
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エッセイはとりあえず原典に戻ってから読むことにしたいので、秋は枕草子。
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平安の昔、一条天皇の皇后である中宮定子(ちゅうぐう ていし)に仕えた女房の一人である、清少納言によって記されたといわれるのが『枕草子』。それは日本の四季の美しさや自然、宮中での暮らしや行事、人々のようすなどを題材に、清少納言のみずみずしい感性と雅で柔らかな文章によって記録したもの……などと、わざわざ説明する必要もないくらいに有名な古典文学作品である。
しかし、文法を古典学習の中心とした中学や高校の授業だけでは、『枕草子』が持つ本当の面白さや味わい深さを知ることは難しい。これは『源氏物語』や『方丈記』や『徒然草』などにも言えることだが、いわゆる古典文学には、さまざまな旨味が複層的に詰まっているものだから、流すような接し方で味わおうとすることには無理がある。だから「古典の授業で習ったけど面白くなかったから嫌い!」などと片付けてしまわずに、一つの作品だけでも最後まで味わったうえで好き嫌いを決めたいものだ。そういった意味でも、おすすめ作品の一つといえるのが『枕草子』。千年以上も前に書かれた作品だけど、「ウン、ウン、わかる~」と同感したり、「いいなぁ~」ってトキメキを感じたりできるはずだ。
さて、『枕草子』の作者は清少納言とされているのだが、清少納言の自筆本は見つかってはいない。これは『枕草子』だけではなく、『源氏物語』や『徒然草』なども同様で、自筆本ではなく、それぞれの作品に複数の写本が残されている。『枕草子』の場合は、大別して「三巻本」・「能因本」・「堺本」・「前田本(前田家本)」という4種類の系統に分類される写本が存在しているだけである。この新日本文学大系の『枕草子』は、現在主流とされている三巻本系統の写本の中から、第一類に分類される「陽明文庫蔵本」と第二類に分類される「内閣文庫所蔵本」とを底本として採用している。現代語訳は付いていないが、細やかな脚注と「枕草子心情語要覧」と解説によって、比較的読みやすくしてある。それでも読むのが不安な場合は、古語辞典や現代語訳を傍らにチャレンジするのも良いと思う。
近頃は現代語訳も複数出版されているので、わざわざ古文で書かれたものを読まなくても、作品の内容を知ることは可能だ。だから、一作品について一冊読めば事が足りるという考え方もできるし、それも古典の愉しみ方の一つだろう。しかし、現代語訳を含めて、さまざまな本を複合的に読むという愉しみ方もある。写本の異なる注釈書を読み、さまざまな解釈や解説に触れることで、作品そのものの味わいが深まる。古典の授業的な流し読みでは得られない喜びが、それぞれの作品の中に隠されているのだ。
出版社/著者からの内容紹介
才女,清少納言の綴る中宮定子のサロンでの出来事や,自然の移ろいは,〈をかし〉の美意識に貫かれている.そのみずみずしい感性は,千年の時を経てもなお色あせることがない.今なお共感を呼ぶ珠玉の王朝随筆。