食と文化の謎 (同時代ライブラリー 179)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002601793

作品紹介・あらすじ

人間が何を食べ、何を食べないかという問題は、文化の気まぐれや歴史の偶然なのだろうか。人類学・経済学・歴史学・医学・生物学・栄養学などの膨大な知見と楽しいエピソードを披瀝しながら、異端の人類学者ハリスは、食物生産システムを考察して食と文化の謎をあざやかに解明する。

感想・レビュー・書評

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  • 人が何を食べ、何を食べないかは何で決まるのか?をただ経済合理性という観点から追求するとこうなる。頭では強く納得し、でも心ではちょっと否定したい。

  • 地域によって食される食物やタブーとされる食物が異なるのは、エネルギーや栄養素の摂取や、獲得に要する時間や労力と得られる利益との差、環境への影響、人口密度などが異なるからであるという立場が貫かれている。説得力もあり、食文化とその背景の全体像をつかむことができる。

    インドで牛肉が食べられなくなったのは、人口増加と森林の縮小のためで、乳牛は牛肉よりもカロリーや蛋白質が得られる効率が高く、雄牛は鋤を引く農作業に欠かせないことから大切にされるようになった。

    反芻してセルロースを消化できる動物を飼育することによって、人間消費用の作物をわけあわずに肉とミルクを得られた。

    元来、水の豊かな谷間や川岸の木陰をすみかとしていたため汗腺がなく、暑く乾燥した気候と生態環境にはあっていない豚は、肉以外ほとんど役に立たないため、森林破壊と人口増加とともに中東から姿を消した。

    馬肉のタブーが始まったのは、中東に古代帝国がおこったときで、BC900年頃、騎兵の乗り物として使われ始めた。

    ミルクに含まれるラクトーゼは、ラクターゼという酵素によって単糖類に分解されて吸収される。成人になってもラクターゼを持つ人々は世界的には少数派であり、保有率が高い集団は濃緑色の葉野菜を作ることができない地域で、カルシウムを摂るために必要だった。南インドや中国では、濃緑色の葉野菜と豆類からカルシウムを得ることができたため、ミルクから摂る必要がなかった。

    大部分の昆虫は、一定の収穫量に対する時間的、またエネルギー上のコストの点で非常に劣る。食べられる昆虫は、体が大きく、一度に大量に捕まえることができるものに限られている。

    アステカ人が家畜とすることができたのは、シチメンチョウと犬だけで、動物性たんぱく質が不足していた。ただし、戦争カニバリズムは副産物に過ぎない。

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