二つの憲法のできた経緯が要領よくまとめられていて、すごくよくわかる。
いずれも、外国との対抗上急遽作られた感じ。
その中に、どれだけ作成者の理想を込められるか、といったところ。
アメリカ独立やフランス革命を経て、君主を否定する国の形を市民がつかみとってきた憲法とは異なり、一部のエリートにより良かれと思って作られた感は否めない。筆者は良ければ外国のものでもどんどん取り入れればいいじゃないか、という立場。新憲法がアメリカ人の草案により作られたことについては、差し歯も長年使っていればその人の個性になるから、いいものだったんだから、そのまま使おうよ、と言っている。
中国は、民主的な法律形成過程を有しないから、政府のガバナンスが横暴になりやすく、きめ細かく対処できない(特に建築、食品管理)などと思っていたが、少なくとも明治憲法は同等レベル。憲法は、「臣民」の条件付きの権利と「義務」を規定していた。新憲法がなければ、日本は今でもそれを引きずっていた可能性が高い。憲法の形成過程を見れば、新憲法でも民主的な法律形成過程でできたとは言いがたい。
日本では、クーデターでも起きない限り、国の形を決める憲法を作り代える権力の集中やエネルギーは生まれないだろうということは、よくわかった。
二つの憲法の対比ももちろん有意義だったが、戦勝国に中国(中華人民共和国)と韓国等は入っていなかった、とか、9条は国連憲章そのままだった、とか、実際に新憲法を作ったのがどんなアメリカ人だったのか、とか、情報が具体的で正確だから、どんな立場の人が読んでも参考になる客観性とわかりやすさを有する、いい小冊子だと思う。