検証 大阪の教育改革――いま、何が起こっているのか (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708331

作品紹介・あらすじ

大阪維新の会が府議会に提出した「教育基本条例案」の何が問題なのか。それが登場してきた思想的・現実的な背景とは。教育改革の世界的な動向について概観しつつ、条例を批判的に読み解き、真の「格差を超える教育」を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 薄いけど読み応えのある本でした。
    橋下さんの教育改革に批判的な大学教授の著作(でもそもそも橋下さんの教育改革に賛成だっていう教育関係者って会ったことないなぁ)。
    橋下さんの改革についてはもちろん、大阪の教育がもともと持ってた良いところ(外国人、障がい者を全日制で受け入れる「弱者への優しさ」(いわゆるインクルージョン))についても知れてとても面白かったです。
    「教育は急激な変化になじまない」。内田樹さんも常々言ってるけど、本当にそう思います。

  • 本書は橋下徹氏の教育改革について批判的立場で論じたものである。

    筆者は橋下氏の教育改革について、「『無反省な新自由主義』と『むき出しの新保守主義』が合体したものだと位置づけることができる p56」としている。前者はイギリスでの失敗例があるにも関わらず、後者は国家主義の過度な強調という形で、それぞれ推し進めているのが橋下氏の教育改革というわけだ。それに対して筆者は、伝統的に大阪では障害者や外国人も含めて多様性に基づいた教育がなされているのであり、その伝統を壊すのではなく、それを踏まえた上で教育改革を考える必要があると主張する。

    また、批判的立場で書かれているという点は考慮しなければならないものの、橋下氏の教育改革について簡潔にまとめられていたので、それについて知りたいと思っていた自分の希望は叶えられた。維新の会が出した条例案と最終的な妥結案との相違点など、そのおおまかな流れが掴める。

    それにしても、大阪の学校が(在日韓国人に限定せず)在日外国人や障害者に寛容であるという事実には驚いた。問題はその良さを引き継いで、いかに新たな教育を構築していくかだ。グローバルの人材育成や学力に一辺倒なるのは確かに問題だが、大阪府民の学力・モラルなどに問題がないわけではない(大阪の街はやはりマナーが悪いと個人的には思う)。

    ではどうするのか?大阪の教育が上手くいっているとはお世辞にも言えない気がするのだが、そこをどうするのか?紙面上の制約もあるし本書の趣旨も新たな意見の提示ではないのかもしれないが、その具体的方策・提案が是非とも聞きたいところ。

  • 著者は、教育社会学等を専門分野とする大阪大学大学院教授。本書は、橋下大阪府知事(現大阪市長)と大阪維新の会が打ち出した「職員基本条例案」と「教育基本条例案」―特に後者に対して教育学の立場から批判的に検討を加えたもの。筆者は、橋下教育改革の特徴を「無反省な新自由主義」と「むき出しの新保守主義」の合体したものと位置付ける。しかも、筆者が警鐘を鳴らすように、事はけっして大阪だけの問題ではない。日本の将来の、そして何よりも子どもたちのために、私たちは今、ほんとうに真剣に教育の問題を考えなければならないだろう。

  • 大阪の教育に突如としてもたらされた「橋下旋風」によって、大阪にどのような影響があっかについてコンパクトにまとめられた本。大阪の教育の「伝統的スタンス」のキーワードは「公正」という概念だという指摘は面白かった。

  • 大阪での橋本旋風。氏の教育改革は教員改革が中心なのだろうと思う。愚かな教育公務員に変なことを教えられてはたまらないという保護者の危機感が支持につながるのだろう。それに対してどのような分析をするのか,読むのが楽しみだ。

    結構感情的な文章だな。

    中立的な立場ではないと感じる。何かを変えようとする時,特に教育においてはその変更の結果がしばらく時間が経過してからでしか評価できないので,伝統的な立場の人が抵抗勢力とみなされることが多かろう。かといって変更することによって生じる悪い点は伝統的な立場の人から見れば無数に生じるに違いない。一方で,変更しようとする人からすれば良い点ばかりが見られるだろう。

    混在させることはできないのか。BESTMIXということばを選挙戦でよく聞くが,共通する問題意識を土台にして手順はさまざまに工夫して実践することをやってみてはどうだろう。難しいのかな。

    私が所属している組織でも難しいだろうな。そんなコストが高い仕事をするより自分の研究と教育をしっかりすすめたいと思うだろうな。だけど,自分の研究と教育のベストを尽くすためにはそういったマクロな力学のなかで全体の仕組みを変えることも大切だろうな。

    変な感想!

  • 自民党をぶっつぶすといった小泉改革から10年、人々の暮らしはよくなったのだろうか。維新八策を唱えて国政に進出しようとする大阪維新の会。大阪の教育基本条例は、原案は変更され柔らかくなった。大阪で起こっていることがお隣兵庫や広くは全国に広がる恐れがあると筆者は警鐘を鳴らしている。

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著者プロフィール

大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門は教育社会学、学校臨床学。日本学術会議会員。主な著書は『マインド・ザ・ギャップ』(大阪大学出版会、2016)、『日本の外国人学校』(明石書店、2015)、『学校にできること』(角川選書、2010)など。

「2022年 『外国人の子ども白書【第2版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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