3・11以後 何が変わらないのか (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (88ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708638

作品紹介・あらすじ

原発事故の原因究明と処理の仕方、被災者・避難者への賠償や生活支援、「復興事業」の手法を見るとき、そこへと至った過去の過ちや手法が繰り返されているようにみえる。変わらないのは何であり、なぜ変わらないのか。こうした課題が集中的に現れている沖縄と福島の現在と、日本、米国、アジアのグローバルな歴史的状況をふまえ、二つの討議から考える。

感想・レビュー・書評

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  • イメージとだいぶ違った。前半は原発ディスと琉球独立論、後半は日米関係と東アジア。
    原発をディスりたいだけで、震災あんまり関係なかった。

  • 3.11以後の世界をテーマにしたシンポジウムをまとめたもの。
    前半は沖縄と福島、後半は8.15と3.11の共通点と相違について。
    評価は☆3と5のあいだくらい。ブックレットとしてはちょい厚めの二段組み。

    前半。
    沖縄は基地を、福島は原発を、すなわち必要だと思われている(そして近所には来るなと思われている)ものを押し付けられているところが似ている。
    安全性の嘘、札束でほほを叩かれるような扱い、経済や自立も。
    違うのはアイデンティティと東京との関係。
    「経済的自立・政治的自立・文化的自立」それぞれのレベルで独立を保つ必要性の話、
    ネイションは「水平的な同士愛」を目指すがゆえに差が問題化される(同質化→標準を設定→標準、たとえば東京の言葉からの偏差が優劣になる)という話が印象に残った。

    後半。
    8.15と3.11で変わったこと・変わらなかったこと、変わらなさの形についての部分は自分が考えてこなかったことだから興味深かった。
    戦後処理はアメリカが考えてこうしなさいといってくれたので、外見は様変わりしたけれど内心に自発的な変化はない。
    (神様の名前が現人神からマッカーサーに代わっただけってのは「百年の手紙」に見られた)
    親が勝手に「のりこえて」しまっただけで本人には問題解決能力がついていない(ゆえに後で同じ問題がまた起こる)不登校やいじめの問題を連想した。

    しかし経済・安保の議論は知的に面白いけれどやっぱり机の上の話だなー。
    たとえばp66(五十嵐)、日本にはこんなに貯蓄がある、高齢者が金を持っている、政府に頼らず使えという話。
    いざというときに頼れるという安心感がないから溜めるんですよという大澤のつっこみがあるものの、ちょっとびっくりした。
    p75、(水野)ここ数年、日米関係が疎遠になったから、これを好機と領土問題が発生する、というのもびっくりした。
    え、いっしょにたたかおうね、いっしょにぶきもつくろうね、おかねはまかせてね、って約束したのに「ぎくしゃくしている」のか。

    前半(松島・山下)は現場寄り、後半(五十嵐・水野)は学術寄り。
    前半の後に後半を見ると、なんだか上のほうで抽象的なことをふわふわ話しているなあと思ってしまう。
    知的に面白いけどちょっともやもやする。
    それぞれに言いたいことがあるから、互いを補いつつちゃんと討論になっているのは良い。
    拾い読みだけすると誤解しそうな強めの意見が並んでいるのを、司会(大澤)がうまいこと舵取りしてバランスをとっている。

    (大澤)一部の最後で「日本はいざとなったらアメリカがなんとかしてくれるという前提で動いている。日本がアメリカに依存するという問題がまずある」と言っている。
    一方で二部では日米関係がぎくしゃくしたら領土問題がおこったと言う。軍事的な依存は問題じゃないんだろうか。
    「ww2の米軍では人為的ミスがあることを前提に戦略を立てたんですよ、そういう考えが安全設計に不可欠なんです」という話があって、でも「米軍はオスプレイ事故を人為的ミスだというけれど人為的ミスを防げないことが設計ミスなんです」という話も出る。
    一部と二部で矛盾がけっこうある。
    どうせなら前半の人と後半の人の討論も見てみたい。

    二日間の開催で合間に演劇(「世界の果てからこんにちは」)があったらしいんだけど、どんなシンポジウムでどんなプログラムでという説明がないから推測するしかない。
    そこはちょっとわかりにくい。使われる言葉も、ある程度興味を持ってないとわかりにくい。
    その辺の、知ってる人しか受け付けない感じがちょっと残念。

    でも読んで良かった。思考や議論の種としておすすめ。

  • 8・15…敗戦(終戦)、3・11…東北の震災
    両者は、歴史の転換点という意味で共通です。
    8・15はアメリカと戦いました。
    3・11の、放射能被害は原子力。その背後にアメリカがいます。

    8・15以降、復興はアメリカ主導で行われました。
    3・11以降、復興は日本が行います。
    ここに大きな違いがあります。3・11の復興が難航しているのも、これが関係していると思われます。

    8・15以降、日本人の感情はアメリカを迎合する風潮がありました。
    3・11以降、アメリカへの感情は3・11以前とそれほど変化していません。

    日本の戦争で、歴史を変えられた沖縄。
    今も、米軍とのトラブルがつづき、基地問題で日本政府との諍いも続いています。

    この本は、沖縄と福島。大戦と原発問題の比較をベースに行われたシンポジウムの記録です。

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著者プロフィール

大澤真幸(おおさわ・まさち):1958年、長野県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。思想誌『THINKING 「O」』(左右社)主宰。2007年『ナショナリズムの由来』( 講談社)で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』(岩波現代文庫)で河合隼雄学芸賞をそれぞれ受賞。他の著書に『不可能性の時代』『夢よりも深い覚醒へ』(以上、岩波新書)、『〈自由〉の条件』(講談社文芸文庫)、『新世紀のコミュニズムへ』(NHK出版新書)、『日本史のなぞ』(朝日新書)、『社会学史』(講談社現代新書)、『〈世界史〉の哲学』シリーズ(講談社)、『増補 虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫)など多数。共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』(以上、講談社現代新書)、『資本主義という謎』(NHK出版新書)などがある。

「2023年 『資本主義の〈その先〉へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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