社会を結びなおす――教育・仕事・家族の連携へ (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (56ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708997

作品紹介・あらすじ

日本社会に露呈している"ほころび"とはどのようなものか。どうやって軌道修正をしていけばよいのか。教育・仕事・家族という三つの領域がきわめて強固で一方向的な矢印で結合し、循環していた従来の日本的社会モデルが破綻するまでのプロセスと要因を分析し、その理解に基づいて新しい社会像を具体的に描きだす。

感想・レビュー・書評

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  • 簡潔にまとまっており、著者の他の本より先に読むと良いと思います。

  • 相変わらず熱い本田先生による憂国の書。
    「社会の維持さえ難しくなるような危機はもう目の前に迫っている(p4)」で始まり、「多くの人々が「このままではだめだ」という感覚を生々しく抱く度合いが高まっている(p52)」で終わっている。熱いけれど分析は冷静で極めてわかりやすい。
    戦後日本の3区分で「戦後日本型循環モデル」がいかに成立・普及し、破綻したか、2つの図と4つの環境要因で明快に説明されている。そして「新たな社会モデル」では従来モデルにはない逆向きの矢印や仕事・教育・家族の3領域を覆う「布団」が示されている。
    「このままではだめだ」と思う1人として、それぞれの領域での関わりを意識していきたい。

  • マル激トーク・オン・ディマンド(第1136回)
    『まず今の日本がどんな国になっているかを知るところから始めよう』
    に触発されて読ませていただきました。

    2014年6月に発行されていますが、今(2023年)読んでも古びるどころか身に迫ってくるようです。
    戦後の日本社会を1973年のオイルショックと1991年のバブル崩壊をターニングポイントとして「高度成長期」「安定成長期」「低成長期」に分けて分析。
    高度成長期〜安定成長期について仕事、家族、教育という三つの異なる社会領域の間が①きわめて太く堅牢で、②一方向的な矢印によって、結合されていること特徴とする「戦後日本型循環モデル」を提示。低成長期にこのモデルが破綻したと分析。
    さらに新たな社会モデルとしてこの三者を結ぶ矢印が双方向的な社会を提示している。
    日本の現状に危惧を感じている方、現状の打破を模索されている方に一読をおすすめします。

  • 以前読んだ著者の本より短くまとめられていてわかりやすかった
    半福祉、半就労
    参考文献も役に立ちそう

  • わかりやすく読みやすかった。日本が好景気だった頃のモデルや価値観で今の時代を生きようとするのはもう難しい。自分もその価値感(結婚するのがあたり前・いい大学に入っていい会社に就職しないとだめ等)に囚われており苦しいと感じているが、自分と周りの状況をみて今に合った生き方をしていきたい。

  • 私も『マル激』を観て「では処方箋は?」と思って読んでみようと思った。問題提起に対して回答が薄かったので、★★★★。
    なかなか深刻なデータをここ数年多くの国民が目にするようになってきている。(ハズ)。なのに、なぜか多くの人はそのことに対する反応を自らで抑えているのか、あえてじっとしているような感じを受けてしまう。
     もしかしたら、それは選挙における自分の1票の価値のように映っているのかもしれない。「どうせ俺の1票なんて何にも変えられやないし、、、。」的に。 人間自分の行動の手応えの想像ができないと、達成できないことと思い込んでしまうようにできている。新しい世の中はこの思い込みの壁の向こう側にあるということは歴史が教えてくれているというのに。革命家と言われた人たちは、おそらくそんな思い込みの壁が見えない奴らだったにちがいない。(革命家だけではない、実業家も、政治家も、何かことをなす人たちはみなそうだ)
     戦後日本型循環モデル期に壮年時代を過ごした者たちはその運を自分の能力や実績と思い込まずに運だと認めて謙虚に残りの余生と資源を有効に引き継ぐことを考え、未来社会とそこに暮らす人たちを暖かく見つめる心を取り戻さなくては、如何なる政策も力を発揮し得ない。未来を生きる者たちだけでは背負うものが大きすぎる。どん底に落ちる前に目を覚まさなければ、、、。
     と本田由紀さんがこの思いを綴ってからもう9年も経っているのか。
     戦後減り続けてきた犯罪数が2022年からプラスに転じてきているという、社会のイタミの兆候が見え始めている。でも、私も含め周りの者はみなマクロな世界に目を瞑りミクロな世界の中を生きているように映る。

  • 「教育は何を評価してきたか」や「『日本』ってどんな国?」の中で触れられてきた、戦後日本型循環モデルと、その破綻、それから、新たな社会モデルについて述べたブックレット。

    二つの循環モデルについて、よーくわかる。

    戦後の循環モデルは、教育と家族と仕事が強固な一方向の矢印で結ばれていたが、それは、人口要因や国際関係要因、エネルギー要因、自然要因がしっかりと支えてきたから。そのため、いい大学にはいっていい会社に勤める。そのために勉強する、ということが目的となり、本来あるべき根本的な意味が喪失されてしまうという、自壊的な性質を持つものであった。

    これが、バブルの崩壊により、一つの矢印が崩れてしまうと、次々にこの循環が成り立たなくなり、更に、少子高齢化やグローバル化、災害リスクなどにより、この循環を支える要因も無くなってきたのが1990年以降。

    ただ、循環している部分も残っているから、壊れ始めた部分の窮状をいっそう厳しいものにしている。

    今まさに、フタコブラクダ化している、格差の原因がここにある。辛い…。

    破綻したモデルにしがみつかないで、双方向に行き来できる新たな社会モデルにするには、メンバーシップ型の働き方から、ジョブ型正社員を増やすこと。

    わかってはいたが、手が出せなかったこの方向に行くしか生き残りはできない、とそろそろ、政府も企業も気づく頃だと信じたい。

    学者ってつらいね、と本田さんの本を読むと思う。すごく頑張ってくれてる。
    私は読むことで応援します。

  • 仕事・家族・教育の3つの社会領域が一方向的に太く・堅牢に結合した「戦後日本型循環モデル」とする日本社会の捉え方には非常に腑に落ちた。
    高度成長期・安定成長期でこのモデルが形成・成熟していったが、バブル経済崩壊の端を発する低成長期になるとこのモデルは劣化が進み、モデルに内在する様々な問題が生じているのが現状。まず、バブル経済崩壊等で仕事の領域が劣化。非正規社員の増加で非婚化・少子化が進み家族領域が劣化。家族の劣化で十分な教育を受けた若者が減るうえ、元々少ない公的支出は依然増えず教育の劣化も進んでいる。
    対策(案)は、循環モデルを片方向から両方向にするというもの。現状分析に比べると、割かれたページ10ページ足らずで、論理展開もあいまいで迫力不足。
    日本社会の現状を把握する上で、非常に有効な本だと思う。

  • 初岩波ブックレット

    「社会を結びなおす」ことが、これからの自分がやろうとしていることなのでは?と思って買って積読だった。

    タイトルは「結びなおす」だけど、書かれているのは結びなおすために必要な現状把握。しかし、現状とそれを生み出した経緯を抑えることは、次に進むために大切なステップ。そういう意味では大変示唆に富んだ内容だった。

    日本社会が限界に達していることは疑いの余地がない。
    私はその限界をユルく溶かしていくように進んでいきたい。

  • 超実力主義社会の「人間らしい働き方」を考える【前編】 | 雑誌掲載記事 | ダイヤモンド・オンライン
    https://diamond.jp/quarterly/articles/-/134

    岩波書店のPR
    日本社会が露呈しているほころびとはどのようなものか.どんな方向に軌道修正をしていけばよいのか.教育・仕事・家族という三領域がきわめて強固で一方向的な矢印で結合し,循環していた従来の日本的社会モデルが破綻するまでのプロセスと要因を分析し,それにかわる新しい社会像をうち出す.「社会を結びなおす」ための見取り図.

    ■著者からのメッセージ
     私が本書を読者に提示したいと考えたのは,現在の日本において,過去への分析に基づいた将来の社会展望ではなく,粗雑な,しばしば事態をもっと悪化させるだけのように見える「改革」が,数多く進められているように見えるからです.たとえば,規制が機能していないところにさらに「規制緩和」と「自由化」を持ち込む,資源や手段が枯渇しているところにいっそうの締めつけや精神論を持ち込む,といった具合にです.あるいは,相互に矛盾するような「改革」が,思いつきのようにばらばらと実施されたりもしています.そうして必然的にうまくいかない状況をごまかすために,社会の内外にわかりやすい「原因」や「敵」を無理矢理見つけ出して叩くことでうっぷんを晴らそうとするようなふるまいが,「強い人」の中にも「弱い人」の中にも広がっているように見えます.
     これでは何も良い方向に進みません.それどころか,混迷や窮状は深まるばかりです.もっと社会を広々とよく見渡して,もつれや凝り固まりをもみほぐし,破れ目につぎをあてる,冷静で地道な営みがどうしても必要です.そのための見取り図を描きたくて,私は本書を書きました.
    (「はじめに」より)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b254436.html

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著者プロフィール

本田 由紀(ほんだ・ゆき):東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は教育社会学。著書に『教育の職業的意義』『もじれる社会』(ちくま新書)、『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)、『社会を結びなおす』(岩波ブックレット)、『軋む社会』(河出文庫)、『多元化する「能力」と日本社会 』(NTT出版)、『「家庭教育」の隘路』(勁草書房)、『若者と仕事』(東京大学出版会)、『学校の「空気」』(岩波書店)などがある。

「2021年 『「日本」ってどんな国?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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