幻談・観画談 他三篇 (岩波文庫 緑 12-8)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101285

作品紹介・あらすじ

蒼茫と暮れゆく海上,その薄暗い水面にふっと現れてはまた消える細長いもの…。不審に思った釣客が舟をよせると-。ほかに「骨董」「魔法修行者」など、晩年の傑作5篇をあつめた。

感想・レビュー・書評

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  • 幸田露伴の短編集ですね。
    今日は露伴の命日です。
    勉強不足で、博学多才の露伴の作品を読み進められないので、露伴の娘さんの幸田文さんか、文さんの娘さんの青木玉さんの本を探したのですが、本の山の中に埋没して見付かりませんでした。
    岩波文庫の本棚を探したら、この本が見つかり、紐解いて見ました。露伴の最晩年の幻想小説と言っても良いのか、露伴にはしては読みやすく、砕けた文章で何とか読み進めました。
    流石に博学知識は恐れいるところです。
    作品は五作。何れも読みごたえのある傑作です。
    露伴は私と同様に苦手という方にも挑戦してみては如何でしょうか。

  • 先日、ゴーゴリの「肖像画」を読んだのでその絡みで。
    ワイルドじゃベタなんで〜。

    「五重塔」なんかの文体とは違って全然現代語、
    読みやすいです。
    なかなか味のある世界が展開されていまして、
    こういう煮え切らない気候のときにはマッチするかと。
    ノリ的にはシンプルで艶っぽくない鏡花、ってとこでしょうか。

    露伴晩年の小品を収めた岩波文庫で、
    標題作以外に「骨董」「魔法修行者」「蘆声」の計5編です。

    ■幻談
    「太公望」くらいなら知っていますが、釣人言葉で「お客さん」ってxxxのことを指すんですか??・・・シュールだわあ。
    ■観画談
    増水ってコワっ。
    画中の船頭さんに呼びかけられて・・・
    返事をしたら瓢箪に・・・違うなあ。
    ■骨董
    どうでもいい前振りが秀逸〜 ^^;;
    ”理屈に沈む秋の寂しさ/理屈を抜けて春の面白”、って
    素敵なフレーズじゃありません?
    ■魔法修行者
    ・・・・・言っていいですか?酔客の与太みたいです。
    ■蘆声
    いつから子どもが王様扱いされるようになっちゃったんだろう?そう、子どもは生存に必死だったはずなのよ。

  • 名作。
    『幻談』、『観画談』は本題に入るまでがすごく長くて、何の話だろうと不思議に思いながら読み進めていくと、オチが唐突に現れて、そういう話ね、みたいな。
    確かに薄気味悪くて、好きな話ではある。
    『骨董』は、作者の考えていることが面白いなと感じる。
    骨董品を買い集めることは、高慢税を支払っているということだ、なんて素敵だ。
    それを支払うほどの金を持っていれば、じゃんじゃん支払いたい、とは面白い。
    『魔法修行者』、これが一番個人的には楽しめた。
    魔法とは、本邦では外法や修法、それを過去に修めたとされる人物を挙げて、いかに素晴らしいかということを語る。
    魔法に限らず、何でも極めるということは、それが成功したかどうかではなく、勝つか負けるかではなく、それを成し遂げるために行うすべてのことに楽しみを覚えることであるというのには感動。
    わたしは読書が好きだけど、何冊読んだとか、どんな難読書を読み下したとかじゃなく、ページをめくることにワクワクする、あるいは傍らに本を置いているだけで楽しい、と感じるみたいなことか。
    『盧声』は、会話文が少し混じっているので、読みやすい。それにしても、作者は釣りが好きだな。

  • 幻談、観画談、骨董、魔法修行者、盧声の五編。
    中でも幻談と骨董が印象深い。

    幻談は淡々と物語が進むが、小説のようで随筆のように感じられる箇所もあり、読み通したあと落語を聴いた気持ちになる。
    美しい日本語で綴られる話は、静かに気持ちが折り重なって、気づいたら重みを持ち始めている。

    骨董では、真物真筆を大金で買うときの大金は喜悦税や高慢税というもので、「関西の大富豪で茶道好きだった人が、死ぬ間際に数万金で一茶器を手に入れて、幾時間を楽しんで死んでしまった。一時間が何千円に当たった訳だ、なぞと譏る者があるが、それは譏る方がケチな根性で、一生理屈地獄でノタウチ廻るよりほかの能のない、理屈をぬけた楽しい天地のあることを知らぬからの論だ。趣味の前には百万両だって煙草の煙よりも果敢ないものにしか思えぬことを会得しないからだ。」という考えを織り交ぜているが、自身は「自分も高慢税は沢山出したい。が、不埒千万、人生五十年過ぎてもまだ滞納とは怪しからぬものだ。」と言っているのが失礼ながらチャーミングだった。

  • 【読んだきっかけ】ブックオフで見つけて読みたくなった。
    【内容】露伴晩年の短編集
    【感想]美事な日本語で読みやすかった。明治大正あたりの、漢文の素養のある人の文章は語彙もリズムもしっかりしていて、本当に勉強になるし、読んでいて心地いい。
    ⑴幻談…口述でこの文章はすごい。ただ、解説で川村二郎も言っているが、話そのものは無内容。
    ⑵観画談…この短編集で一番良いと思った。辺僻の山中をゆく大噐氏が画中に見える、そんな描写。
    ⑶骨董…「趣味の前には百万両だって煙草の煙よりも果敢ない(はかない)」。露伴先生の趣味に対する考え方に好感。
    ⑷魔法修行者…日本の魔法についての概略がわかる。
    ⑸盧声…少年と釣りの描写が好い。

  • 幻談、観画談、骨董、魔法修行者、蘆声 の五篇収録。
    前から3作だけ読んで返却してしまった。

    幻談、観画談は昔語りのような怪奇譚。前者は川釣り、後者は山奥の寺を舞台にしている。(私が釣りと縁遠いこともあり)前者はディテイルの想像が難しいが、風景の描写が美しい話だと感じた。

    骨董は徒然草を思わせるエッセイ的な文章だった。筆者の博識さがうかがえる。

    後半2話もいずれ読みたい。

  • とても読みやすいし内容がしゃれている。
    この時代の作家の文章がこんなにも読みやすいものだったのかと改めて思い知る。もちろん難しい漢字も多いのだが、内容がすっと入ってくる。
    爆笑タイプではない落語が好きな人にはお勧め。

  • 幻談。
    筋だけで言えば取り留めもない話の類な気がするが、日が経つにつれて心の奥底沈着してくる。
    この小説の魅力はなんだろうと考えると、語りの美しさという部分なのかもしれないと思った。

  • 江戸出身の作家である幸田露伴(1867-1947)の晩年の小説・随筆集。『幻談』(1938)『観画談』(1925)『骨董』(1926)『魔法修行者』(1928)『蘆声』(1928)所収。

    『幻談』僅か三十頁余に綴られた単純な筋の小品だが、出色。恰も名人話芸を聴いているかの如き名文。解説によると、口述筆記に基づくものだと云う、然も在りなん。露伴はどんな調子でこの物語を談じたのだろう。

    収録作品の其処此処に、「江戸」と云う時代が長らく堆積してきた感性が未だ人々の身体に沁み残っていた「東京」の空気を吸って育った露伴が生きてきたであろう「粋な遊び」のエートスが垣間見える。鷹揚としてせせこましからず、嘗て個人にも時間にも沁み渡っていた大らかで陰翳に富む「粋」という感性による悠然泰然とした「遊び」。対して、多くの現代人が享じているのは、依存症的「欲望」に背っ突かれ追い越されまいと強迫的に底無き欠乏に放り込む即物的で平板的な――嘗ての感性からは"野暮"と嗤われてしまうであろう――ただの「快楽」と云えないか。

    「遊客も芸者の顔を見れば三弦を弾き歌わせ、お酌は扇子を取って立って舞わせる、むやみに多く歌舞を提供させるのが好いと思っているような人は、まだまるで遊びを知らないのと同じく、魚にばかりこだわっているのは、いわゆる二才客です」(『幻談』)

    「理屈に沈む秋の寂しさ、よりも、理屈をぬけて春のおもしろ、の方が好さそうな訳だ」(『骨董』)

    「碁を打つ者は五目勝った十目勝ったというその時の心持を楽しんで勝とうと思って打つには相違ないが、彼一石我一石を下すその一石一石の間を楽む、イヤその一石を下すその一石を下すのが楽しいのである。・・・。何事でも目的を達し意を遂げるのばかりを楽しいと思う中は、まだまだ里の料簡である、その道の山深く入った人の事ではない。当下に即ち了するという境地に至って、一石を下す裏に一局の興はあり、・・・と思うようになれば、勝って本より楽しく、負けてまた楽しく、・・・。そこで事相の成不成、機縁の熟不熟は別として一切が成熟するのである」(『魔法修行者』)

    釣りや骨董等々風雅な趣味についての博覧強記、それを語る露伴の軽妙閑雅な文体は、今は無き感性の一つの見事な表れだ。彼の文体自体が、現代と云う時代精神に於ける貧困な感性への批判と云えないか。本書を読んで、今となっては漠として掴めぬ「粋」という美的感性や、「遊び」という人間的営為の本質とは何か、興味をそそられた。

    蛇足だが、「それは雲に梯の及ばぬ恋路みたようなもの」とは美しい比喩だ。

  • なんだかおしゃれな気分になる。
    文章を読む楽しみのような一冊。
    すっ、とひくように幕をひく感じがちょっとたまらない。

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著者プロフィール

1867年(慶応3年)~1947年(昭和22年)。小説家。江戸下谷生まれ。別号に蝸牛庵ほかがある。東京府立第一中学校(現・日比谷高校)、東京英学校(現・青山学院大学)を中途退学。のちに逓信省の電信修義学校を卒業し、電信技手として北海道へ赴任するが、文学に目覚めて帰京、文筆を始める。1889年、「露団々」が山田美妙に評価され、「風流仏」「五重塔」などで小説家としての地位を確立、尾崎紅葉とともに「紅露時代」を築く。漢文学、日本古典に通じ、多くの随筆や史伝、古典研究を残す。京都帝国大学で国文学を講じ、のちに文学博士号を授与される。37年、第一回文化勲章を受章。

「2019年 『珍饌会 露伴の食』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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