- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003101476
感想・レビュー・書評
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近代日本文学はここから始まり、一つの通過点に至った…。口語を活かした落語のような軽快な語りで綴られる、友情と機敏とペーソス。
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絵のある 岩波文庫
尾崎紅葉 「 多情多恨 」
言葉では 言い表せない人間の感情を描写しようとした心理小説。亡妻への哀しみの感情が 親友の妻への想いに変化する時の曖昧な感情をうまく描写していると思う。
著者の人間描写は とても面白い。漱石の三角関係より 恋愛描写がドロドロしてなくて共感が持てる
あれだけ妻が亡くなったことに傷心し、あれだけ親友の妻を こき下ろしていながら、ちょっとしたことで 亡妻への情合を忘れ、親友の妻への恋心に変わるのだから、人間の感情は薄情なもので、恨まれても仕方ないという人間を描いている
物語のシーンを示す挿絵も多く、小説を引き立てている
丸谷才一 の主人公を 源氏物語の桐壺の更衣を失った 桐壺帝に見立てた解説も面白くて、なるほどと思う
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言文一致体としては完成の域に入っているのかなと思う。これ以前のものは、なにか講談調というか芸人調で、余計な装飾も多かった。
作品の内容としては、天涯孤独の男性が愛していた妻を失って嘆き悲しむ話です。
このころの女性はみんなこんなに行きとどいた世話を夫に対してしていたのかと思うとびっくりします(苦笑)。卵を割るのも妻にしてもらっていたんでは、それは妻に死なれてはその先にっちもさっちもいかなくなるのは当然とも思えます。
しかし、この男性に関しては、妻と言うよりも母親がほしかったのではないかと思われます。もし葉山さんのうちに子供がおらず、御隠居もいなかったらば、主人公にとっては理想郷であったろうし、はなはだ外聞は悪いことになっていたのかもわかりません。
そういう意味では御隠居さんは大変よくできた常識的な方で、身をもって息子の家庭を守ったという意味でgood job!だったと思います。ただ小説的には盛り上がりのないものになってしまったかもしれません。
まあ、どんだけ自分の妻を信頼し、また自分の父やこども雇い人達もいるとはいえど、あまり長いこと、独身男性を自分の家においとくのは好ましくはないよな~と思いました。
また、お島さんは主人公(彼も悪い人ではありませんが)などよりももっとよい縁談があってしかるべきで、姉のあとに彼女を据えようとする姑の考えはちょっと私には理解できませんが。それだけお婿さんとして気に行っていたということなんでしょうか。
主人公の方は悪い人ではないし、いろいろ同情すべき点があるにしても。やはりもう少し人間的に進歩すべきであろうし、そういう視点がないとやっぱりお話的には盛り上がりに欠けるのではないかと思いました。 -
主人公は正直どうなのみたいな人なのだけれど、唯一の親友の人柄が最高で、その人によって主人公も人間的には誠実で実直なひとであるとわかるので、読み続けられるし、それぞれの人間に息が通っている。
最初にあらすじを読んでどんなにドロドロしているかとおそるおそる読み始め、親友二人の中がこじれるようなことにはなってほしくないなーと心配しつつ読み進めても、四分の三までいってもまだ泣き通しで横恋慕する気配がない。おかしいな、とおもったら鮮やかに物事が進み、まるで現代小説のごとき玉虫色の着地点へ…
全て読み終える頃には登場人物がみんな好きになっているから、読者に今後をゆだねる形であったのはほっとした。
中身としては、「失った」主人公の視点からこの時代の円満な夫婦関係を描くことで、それを文化として肯定している形のようだ。
しかしこの作者の文章の多彩さには感服する。
解説が実に興味深い -
主人公は正直どうなのみたいな人なのだけれど、唯一の親友の人柄が最高で、その人によって主人公も人間的には誠実で実直なひとであるとわかるので、読み続けられるし、それぞれの人間に息が通っている。
最初にあらすじを読んでどんなにドロドロしているかとおそるおそる読み始め、親友二人の中がこじれるようなことにはなってほしくないなーと心配しつつ読み進めても、四分の三までいってもまだ泣き通しで横恋慕する気配がない。おかしいな、とおもったら鮮やかに物事が進み、まるで現代小説のごとき玉虫色の着地点へ…
全て読み終える頃には登場人物がみんな好きになっているから、読者に今後をゆだねる形であったのはほっとした。
中身としては、「失った」主人公の視点からこの時代の円満な夫婦関係を描くことで、それを文化として肯定している形のようだ。
しかしこの作者の文章の多彩さには感服する。
解説が実に興味深い -
「多情多恨」。辞書でこの言葉を知って、日本語っていいなぁ、と嬉しくなりました。
源氏物語に影響受けた物語です。分厚いページ数は、侘しい主人公がめそめそしてる場面が大半ですが、その心理描写が巧で、飽きることなくひきこまれました。明治中期の文体は、読みやすくて、お洒落なんですね。
もうちょっと大人になってから、また読みたいと思います。 -
人の心の機微が、とても細やかに鮮やかに書かれていると思いました。
文体というか、全体の雰囲気に懐の深い印象を受けます。
ラストは解説の通りどうとでも取れますが、きっともどかしいような微笑ましいような三人の関係が続くのでしょう。
そうあってほしいと思いました。 -
11/16
金色夜叉とは大違い。
悲嘆にくれ続ける男。 -
後で書きます。