あらくれ (岩波文庫 緑 22-1)

著者 :
  • 岩波書店
3.23
  • (0)
  • (4)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 73
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102213

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 明治の文豪・徳田秋声が自然主義作家として最盛を誇った時期において終期の作品「あらくれ」が収録されています。
    徳田秋声は島崎藤村や田山花袋に比較すると知名度はそれほど高くないですが彼らと並び称して自然主義文学の興盛に一役買った作家で、泉鏡花と共に紅葉の門下として活躍し、私小説を夏目漱石に推挙され文壇で成功を収めており、地味ながらも日本文学史を語る上で欠かせない人物といえます。

    実家で邪険にされ、養家の義父母に育てられた、荒くれた性格の女性「お島」が主人公。
    気性が荒く、体を動かすことが好きなお島は、大きくなるに連れて女性らしい体つきとなり、周囲の男たちがちょっかいをかけてくるようになる。
    特に使用人の作は何かとつけ嫌らしい目つきでお島を見てきており、お島は作が大嫌いなのだが、お島と作の縁談の話が持ち上がる、というのが話しの始まり。
    作中はお島目線で語られるため、作は頭のトロい非常に不快な男性として描写されるます。
    作との縁談は客観的に見ると悪い話でもないと思われるのですが、お島は実家に逃げ帰ります。
    その後、別の男との結婚や実の両親との軋轢、別の男との出会い、出産や商売の失敗など、平穏に生きる選択もあったはずなのにそれをせず、何かを埋め合わせるようにひたすら荒くれ者として生きる女性の生き様を描いた作品。
    作中、そこで少し我慢すれば、少し折れてやればと思うところがあるのですが、それを拒否して生きるお島の言動は、読む人によっては強い共感を生み、また別の人が読むとうまく生きることのできないダメな女性に映ると思います。
    自然主義文学的にはこれも一つの人の姿であり、それを読んでどう感じるかは読者次第と言えるので、大変成功している一作です。

    本人はそれどころではないのでしょうけど、読者である私的には、お島のドタバタした生き方は一種のコメディのようで、楽しく読めました。
    最後も、生き方が諌められるような終わり方ではなく、次に何をやってくれるのかと期待させる終わり方になっており、個人的にはいい終わり方と感じました。
    ただ、最終的には、破天荒なお島を好きになれるか否かで、感想が大きく分かれる作品と思います。

徳田秋声の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×