夜明け前 第1部(下) (岩波文庫 緑 24-3)

著者 :
  • 岩波書店
3.63
  • (9)
  • (7)
  • (12)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 166
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102435

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本居宣長というと古事記の研究をした国学者ということくらいしか知らず、その主張や思想などは知らなかった。国学が尊王に結びついて倒幕に向かう、なるほど。
    今年の目標の一つが住井すゑの『橋のない川』を読み切ることで、今途中なのだが、あちらを読んでいると国学に対してとてもモヤモヤしたものを感じる。「夜明け前」って、武家中心の世であった中世は夜であったという国学者の主張で、そういう意味の「夜明け」なの?それっていったい誰にとっての「夜明け」?などと少し斜めに考えてしまう。
    半蔵はこれからどうするのだろうか。第一部の最後は「一切は神の心であろうござる」で終わっているけど、それでいいのか?『破戒』といい、なるようにしかならないのだと言われているようで読んでいて無力感を感じる。丑松も半蔵も周りの状況に従うだけ?

  • 島崎藤村の後期の代表作「夜明け前」第一部 下巻。
    上巻に引き続き本書も370ページとボリュームがあり、読み応えがありました。
    上巻のそのまま続編で、引き続き、幕末から明治維新にかけて発生した色々な出来事を背面に、中山道馬籠宿の本陣の主人「青山半蔵」とその周囲の人々の動きが描かれています。

    上巻では、半蔵の出生や婚姻、子の誕生など、半蔵のライフイベントに関する描写が多いように感じました。
    下巻の本作では、参勤交代制度も大きく変わり、時代がいよいよ大きく変わろうとする。
    そんな中で、国学を信奉していた半蔵も、倒幕、そして王政復古に向けて動き出そうとする展開となります。

    上巻の感想でも書いたとおり、この頃の歴史に関する知識が私自身疎いため、勉強しながら読み進めました。
    長州・薩摩の攘夷運動、薩英戦争、天狗党の乱、将軍家茂の薨去、慶喜が将軍の座につき、そして、大政奉還、王政復古の大号令が朝廷より宣言されたところで、一部は幕を閉じます。
    なお、この頃活躍した人物といえば、勝海舟とともに日本の開国を推し進め、長州藩と薩摩藩の仲立をして薩長同盟を結んだ坂本龍馬が有名ですが、本作中ではそのエピソードは出てきませんでした。
    また、幕末の京都では攘夷志士の弾圧をした有名な新選組が活動していましたが、こちらについても書かれなかったと思います。
    同じ頃、渋沢栄一は慶喜の幕臣としてフランスに洋行をしていたり、調べれば調べるほどいろんな歴史のうねりがありました。
    本作中では、恐らく今後の半蔵の選ぶ道とはあまり関係ないと思われるため詳しく書かれず、尊攘派の動きや倒幕の流れが、半蔵に関心のあるニュースとして書かれるのみです。

    いろいろ知らないことを学べた楽しさはありましたが、小説としてはそれら出来事と半蔵に関連は実際のところ薄く、上巻同様退屈を覚えるところが多かったです。
    正直なところ、文字を追いながら脳みそは寝ていた部分もあり、読み返したり読み飛ばしたりしながらなんとか読み切りました。
    大筋の歴史の流れは頭に入っていたので追えていたと思いますが、この時代の国内情勢を知っていないとかなりきついです。
    また知っていても、その歴史的事実と物語の本筋は密接に絡まない(半蔵は倒幕という舞台の役者ではない)ので、盛り上がりにはかける文章が続くものとなります。
    ただ、尊王と攘夷は本質的に異なること、そして国学を学ぶ半蔵にとって、倒幕と王政復古は望んだストーリーであることがよくわかり、2部が期待できる終わり方です。
    王政復古と開国という2つの、反する部分、共存する部分がある出来事が起こることから、具体的に半蔵が動き出すのは2部からなのかなと思いました。

  • ついに慶喜が大政奉還する。純粋な主人公は、無邪気に革命の成功を喜ぶ。
    感想は下巻読了後にまとめて。

  • 幕末の激動の時代の大政奉還の頃までを描く。庶民の主人公なのでこの頃にはあまり登場せず起こったことの説明が多い気がする。

  • 明治維新を木曽路の宿場の観点から教えてくれる。

  • 複雑な時代の荒波にもまれる草莽の人々がよくわかる。

  • 時代背景としては、桜田門外の変以降、攘夷の高まり、朝廷威力の増大(幕府の地位低下)、また、家茂死去と慶喜将軍就任まで。
    天狗党の乱も触れられている。
    宿場を守る半蔵の視点から激動の世の中の変遷を見事に描いている。
    必ずしも武士だけの倒幕ではなかったし、若者の国学への憧れは正義を全うしようとする姿を象徴している。

    第二部では、いよいよ岩倉具視の復権により倒幕への動き、明治維新による国家神道の動きに展開していくのだろう。

  • 湯河原などを舞台とした作品です。

  • ちょっと中だるみ?動かないなぁー半蔵さん。

  • 半蔵は結局動かない気なのか。こんな調子で二部に行くのか。読んでいて辛いが、最後フラグ立ったか? と期待してみる

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1872年3月25日、筑摩県馬籠村(現岐阜県中津川市馬籠)に生まれる。本名島崎春樹(しまざきはるき)。生家は江戸時代、本陣、庄屋、問屋をかねた旧家。明治学院普通科卒業。卒業後「女学雑誌」に翻訳・エッセイを寄稿しはじめ、明治25年、北村透谷の評論「厭世詩家と女性」に感動し、翌年1月、雑誌「文学界」の創刊に参加。明治女学校、東北学院で教鞭をとるかたわら「文学界」で北村透谷らとともに浪漫派詩人として活躍。明治30年には第一詩集『若菜集』を刊行し、近代日本浪漫主義の代表詩人としてその文学的第一歩を踏み出した。『一葉舟』『夏草』と続刊。第四詩集『落梅集』を刊行。『千曲川旅情のうた』『椰子の実』『惜別のうた』などは一世紀を越えた今も歌い継がれている。詩人として出発した藤村は、徐々に散文に移行。明治38年に上京、翌年『破戒』を自費出版、筆一本の小説家に転身した。日本の自然主義文学を代表する作家となる。

「2023年 『女声合唱とピアノのための 銀の笛 みどりの月影』 で使われていた紹介文から引用しています。」

島崎藤村の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×