夜叉ケ池・天守物語 (岩波文庫 緑 27-3)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003102732

感想・レビュー・書評

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  • 天守物語は、姫路の白鷺城天守閣に住む妖精富姫様と鷹匠の道ならぬ恋ですが、なかなか面白かったです。今の姫路城にも獅子頭が展示してある理由もわかりました。
    夜叉ケ池も天守物語も戯曲で短編でしたので、界に入り込めないとイメージがつかみにくく、なれるまで少しずつかかりますかね。

  • 『夜叉ヶ池』雪なす羅、水色の地に紅の焔を染めたる襲衣、黒漆に銀泥、鱗の帯、下締なし、裳をすらりと、黒髪長く、丈に余る。銀の靴をはき、帯腰に玉のごとく光輝く鉄杖をはさみ持てり。両手にひろげし玉章を颯と繰落して、地摺に取る。
    文体の美しさもさることながら、人間の浅ましさを描くこの作品は泉鏡花の有体でない才能を感じさせる。
    白雪の心理描写は、恋が清濁併せ持つことを具現しているように思った。
    残忍さすらも彼が描けば美しい悲劇として映し出される不思議。

    旧い人はどのようにして戯曲を読み、舞台を見て、作品を感じたのだろう。同じ場面で息をのみ、焦がれたのか。そうとまで考えさせる、妖しく艶やかに心に残る作品。

  • 夜叉ヶ池;1903年(大正2年)、天守物語;1916年(大正15年)。
    貞操を守るため魔性に変じた女達の、愛する者への一途さに心惹かれる。人界で虐げられた者達が、魔界でカタルシスを得るパラドックス。巻末の解説(渋澤龍彦氏による)で詳しく分析されている。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      鏡花と言えば、私の中では、この2作かな、、、
      4月には「新版 天守物語」舞台上演がありますが、、、お金が無いのでパス。。。
      鏡花と言えば、私の中では、この2作かな、、、
      4月には「新版 天守物語」舞台上演がありますが、、、お金が無いのでパス。。。
      2014/03/27
    • 佐藤史緒さん
      私は春昼や歌行灯が好きなんですが、これも凄く好きです。
      舞台あるんですね、いいなぁ。私もお金ないからダメですが(´・_・`)
      私は春昼や歌行灯が好きなんですが、これも凄く好きです。
      舞台あるんですね、いいなぁ。私もお金ないからダメですが(´・_・`)
      2014/03/28
  • 先日観に行った舞台が「夜叉ヶ池」を下敷きにつくられたということで初めて泉鏡花作品を手に取りました。
    なるほど確かに大筋はこれだなと。

    人外・ファンタジー系統が好きなのでどちらの作品もサクサク読み進められました。
    泉鏡花の文体に慣れればより深く理解できそうです。

  • 幻想的な、とか幽艷と評されることが多い泉鏡花の戯作。確かにそのとおり。主人公は双方とも女性のモノノケだが、モノノケというには美しすぎる女性たちが、愛する者のために思い悩む物語。そのストーリーがまた美しい。昔から日本人は、見えない不思議なものに対して良い意味での幻想的なイメージを持っていると思うが、まさにそういったイメージを描ききっているような。読み終わったときに、何となく現実世界に戻りたくなくなる、そんな感覚になる作品。現実を忘れたいときは、ぜひ。

  • 鏡花の戯曲二編、澁澤龍彦の解説付。
    夜叉ケ池は百合や晃の清廉さと、妖怪白雪の恋心がせつない。これらを描いた筆力は、戯曲でありながら行間になんともいえない匂いめいたものを感じさせる力を持っている。ただ、彼女らを善、村人を悪に分けてしまうのは少し乱暴だろう。これらは相容れないものだけれど、日照り被害に切羽詰まっているのはどちらか。終わらせ方には救いを見つつも、少し納得がいかなかった。
    天守物語でもそれぞれの場面を想像でき、だが切なさは掻き立てられることなく楽しく読めた。けれどこちらは最後ちょっと拍子抜けしてしまう。澁澤龍彦はこちらに高評価をあてていたが、構造的なことはわからないにしろ、私は夜叉ケ池の方が好き。

  • 歌舞伎座、坂東玉三郎の『天守物語』を観て、この本を読んだ。
    美しい人(男女関わらず)を苦境に追いやる人間たちが妖怪に退治される筋だが、玉三郎様や舞台の残像が残っているせいか、『夜叉ヶ池』までも、背景が思い浮かぶように一気に読んだ。
    台詞の語調も耳に残っているので、目に慣れない文章もすらすらと読め、読むタイミングはとても良かった。
    舞台を観る前だったら、耳にも目にも慣れない表現に難儀したかもしれない。
    玉三郎様がインタビューの中で、
    歌舞伎役者は次々と演目に追われているので、一つの作品をじっくり読み解く、というのは難しいが、舞台にかけている間の1か月間は、毎日声に出して台詞を言っているので、体で読む、『体読』しているようなものだ…
    というようなことを言っていたが、玉三郎様が体読したもを、観客は体で聴く、『体聴』しているようなものかもしれない。
    歌舞伎演目を、初めて通しで文字で読んだわけだが、全部の演目そうしたい。そうすれば、もっと歌舞伎が面白くなるだろうに。
    泉鏡花という作家に関しては、違う作品を読めば、また違う感想を持つと思うので、とりあえず、歌舞伎ネタで感想をまとめてみた。

  • 人外の姫がメインの二つの物語。誰にも知られず生きている二人の、人間を見下す態度はまるで大自然の意志が形を持ったかのよう。大衆の中では逆に浮いてしまうような善良な人間だけが許されるという展開は、所謂日頃の行いがものを言うということが表されているのだろうか。一握りが助かったことに安堵するということは、多くの人間が犠牲になった悲劇を肯定することになる。そんな自分に気づいたとき自分がいかに愚かで傲慢かを見せられたような気になる。

  • 泉鏡花の中では一番好きな本。
    夜叉ケ池は人間世界の描写が多くて、入り込みやすい。

    天守物語は、化生の世界である姫路城の天守閣だけで話が進むぶん、より純粋に感じる。

    どちらも好きだ。

    どちらも間違った道理が通る俗世と、美しい恋の対比がロマンチックである。

  • 夜叉ヶ池が、かなり少女漫画のような内容で良かった。
    するする読めていい。

    漫画にしてみたいなと思った。

著者プロフィール

1873(明治6)年〜1939(昭和14)年)、小説家。石川県金沢市下新町出身。
15歳のとき、尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に衝撃を受け、17歳で師事。
1893年、京都日出新聞にてデビュー作『冠弥左衛門』を連載。
1894年、父が逝去したことで経済的援助がなくなり、文筆一本で生計を立てる決意をし、『予備兵』『義血侠血』などを執筆。1895年に『夜行巡査』と『外科室』を発表。
脚気を患いながらも精力的に執筆を続け、小説『高野聖』(1900年)、『草迷宮』(1908年)、『由縁の女』(1919年)や戯曲『夜叉ヶ池』(1913年)、『天守物語』(1917年)など、数々の名作を残す。1939年9月、癌性肺腫瘍のため逝去。

「2023年 『処方秘箋  泉 鏡花 幻妖美譚傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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