- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003104170
作品紹介・あらすじ
江戸讃美、戯作者意識、文人的な生活など、荷風の文学的特質をよく窺わせる『妾宅』のほか『小説作法』等19篇を収録。
感想・レビュー・書評
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岩波文庫版の荷風の随筆集上巻は、「東京」をめぐる随筆を集めるコンセプトであったらしい。
確かに、本書所収の文章において、永井荷風はひたすらに東京(市)内を散歩しまくり、明治後半から昭和22年くらいまでのこの地の風景と、本で知っている江戸時代の風情とを比較し、失われてゆく古い情緒への愛惜をしたためている。
荷風の見立てによると、パリは近代化にあっても古い建築物等との美的バランスが保たれていたとのことで、一方の東京の近代化ときたら、付け焼き刃の西洋の物真似や、橋梁などの味も何もない改造を嘆くしかないということのようだ。
その「失われ、滅び行くもの」と荷風自身の主体としての統合性原理が朽ちてゆくプロセスが、常に合致している。そうして荷風自身も老いてゆき、とうとう今で言う「孤独死」を遂げるのである。それは時代の変遷を強烈に呈示するかのような死であった。
「祖国の自然がその国に生まれた人たちから飽かれるようになるのも、これを要するに、運命の為すところだと見ねばなるまい。わたくしは何物にも命数があると思っている。・・・(略)・・・一国の伝統にして戦争によって終極を告げたものも、仮名づかいの変化の如きを初めとして、その例を挙げたら二、三に止まらぬであろう。」(「葛飾土産」1947《昭和22》年、P.266)
戦禍による都市の壊滅は、まさに「東京に生きた」荷風にはすさまじく感じられたことだろう。しかしその後東京は驚くべき回復・成長を遂げてゆくのだが、それは既に荷風のとは全く別の時代の物語である。
最近、荷風は私のお気に入りの作家の一人となったが、やはり私は随筆はあまり好きではないので、やはり小説の方を読みたいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
請求記号 914.6-NAG(上巻) (上野文庫)
https://opac.iuhw.ac.jp/Otawara/opac/Holding_list/search?rgtn=096106
請求記号 914.6-NAG(下巻) (上野文庫)
https://opac.iuhw.ac.jp/Otawara/opac/Holding_list/search?rgtn=096107
うわべだけの付き合いは無用、ひとりぼっちも悪くないと思わせてくれる荷風はすごい。 -
読みたかった「日和下駄」他16篇を収録。「世の中はどうでも勝手に棕櫚箒」
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図書館で借りた。
高等遊民について百科事典で調べたら、『日和下駄』が紹介されていたので、読んでみた。
東京をぶらぶら散歩して、そのときのテーマである「樹」「寺」「路地」などについて、地名や歴史とともに述べるものだった。
東京の地理を知るにはいいかもしれないけれど、そこに興味を持てなかった。
他の随筆も東京について書かれている。
『葡萄棚』は売笑婦との経験を書いているのに、きれいな印象が残った。 -
荷風って、東京が好きだったんですね。
と言うか、江戸が好きだったんですね。 -
日和下駄にはじまる東京散策記は近頃再び散歩の友に
なりました。学生時代、会社員時代と何度か訪れた
場所を今度は、この本+カメラと供に歩いています。
『昨今の淵今日の瀬となる夢の世の形見を伝へて、拙き
この小著、幸に後の日の語り草の種ともならばなれかし。」
と序にある通り、街はどんどん姿を変えています。
それでもその場所の持つ空気や雰囲気にこの本に書かれている
ニュアンスを感じられる場所も時々残っています。
国や都で守り昔の姿のまま残された木々などを
見上げたときは涙がこぼれそうなくらい感動するときも
あります。
荷風が綴る文章はまるで写真をみているように風景が
眼前に広がり日本語の美しさも再認識しました。 -
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大学の授業のテキストです。
うーむ、日和下駄は難しかったなぁ。
荷風は、この時代の人には珍しく、アメリカ行くわフランス行くわ(しかも大した用もなく・・・と言ったら語弊があるが)で、西洋の文学にも精通していて、そんで江戸の戯作も好きで家は代々漢学家で・・・。とまぁこういう具合でして、和洋漢がひとつの本の中にごった返しているんです。なかなか無いですよ。
また、荷風は水が好きだったみたい。流れている水。散歩中に小さな水路でも見つけた日には、その元を辿ってどこまでも歩いちゃうような。生涯孤独だった荷風は、水のながれの何に心惹かれていたんだろう。
さて、下巻も頑張って読むぞ! -
鐘の声が好きです。
風景描写がとても好きです。 -
東京に住み始めた頃買ってみて、この本片手に随分散策しました。結構すごい距離を何事も無いようにブラブラうろついているものです。ちょっとしたタイムトラベルでした。