吉野葛・蘆刈 (岩波文庫 緑 55-3)

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著者 : 谷崎潤一郎
  • 岩波書店 (1986年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003105535

吉野葛・蘆刈 (岩波文庫 緑 55-3)の感想・レビュー・書評

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  • ☑吉野葛
    □蘆刈

  • 美しく広がる景色やその辺りの生活が目に浮かぶよう。この本を伴って、作中の辺りを散策してみたい。
    作中に取り上げられるお能や歌舞伎の番組「二人静」「義経千本桜」、「増鏡」の和歌「見わたせばやまもとかすむ水無瀬川ゆふべは秋となにおもひけむ」などがより一層イメージを膨らませてくれる。
    「吉野葛」の義経千本桜の河連法眼館(四ノ切)は、忠信に化けていた子狐こと源九郎狐が、鼓にされた親たちを慕って鼓を持つ静に付き従っていたという話で、作中でも母を慕う津村の気持ちとリンクして触れられています。ただ源九郎狐は哀れで風情がありますが、津村の母への慕情はあまり気持ち良くない。
    母の形見の蒔絵の本間の琴の描写は美しく、頭の中でとても美しい琴が想像されるのですが。
    「蘆刈」はより一層、月、夜の月のイメージがとても冴え冴えと美しい。川の中州での月見、語られる池の上の泉殿での月見、きっと美しい月光でしょう。
    ですがこちらも、肝心の本筋、お遊とお遊への男の父親の想い、代わりに父親が結婚したお遊の妹のお静との辺りは、理解できないというか感情移入できませんでした。

  • 『吉野葛』
    語り手私は小説の種のため、正直のところ、行楽のため、吉野の奥にある国栖へ、国栖に親族のいる友人津村と行きました。津村が国栖へ旅行したのには、目的がありました。
    津村は早くに母を失ったため、常に母を恋したっていました。そして、母の生まれた国栖を訪れたとき、母らしさのある娘を見かけ、嫁に貰いたいと考えたのです。

    “私よりも津村に取って上首尾を齎した(p85)”旅行となりましたが、津村の母への思慕が強く、少し嫌悪感と、恐怖を感じてしまいました。

    『蘆刈』
    淀川の中洲で月見をしていた語り手わたしが出会った男から聞いた話です。
    男の父は、お遊さんの「蘭(ろう)たけた」ところに一と眼でこころをひかれました。しかし、お遊さんは亭主に死に別れ、若後家になっており、亡くなった亭主とのあいだに男の子が一人いたため、なかなか再縁は許されませんでした。そこで、彼はお遊さんの妹おしずと結婚します。

    こころひかれた人の妹と結婚することは、あまり理解できませんでした。周りから大切にされるお遊さんと、そんなお遊さんを大切に思う妹おしず、二人にひかれました。月夜のためか幻想的で、美しいと感じる作品でした。

  •  歴史小説を書くための取材に吉野に訪れた作家が、旧友と合流し、その母の郷里をたずねる旅に同行する。表向きの暮らしぶりからは伺えない昔の吉野が掘り起こされる。
     著名な人の足跡をたどる旅ではないところがしっくりくる。友人が母の家を訪ね歩くうちに出会う在の人々との交流、なくなってしまった吉野の暮らしが愛情込めてつづられている。

  • 吉野葛は、前に春琴抄とセットになった本で読んだので、割愛。
    吉野葛より、この蘆刈の方が、私の好みだった。
    最初は入り込みにくい。関西に生まれ育ち土地勘が多少ある私でも、地名が続くことが辛い辛い。

    でも、一旦、河原で出会った男の語りが始まると、面白くて弾きこまれた。気になる語りで、推理小説のように、どうなるの?と気にならせる流れは、吉野葛と同様。

    全集に書いてあった、谷崎の好みの女性像は、何もせず傅かれる女性だということだが、この話の影の主人公お遊さんこそまさにそれ。そんな女性は、私は嫌いなのだが、お話としては秀逸。

    個人的に面白かったのは、関西人に対する評価と文章表現。「」を使わない会話文。そして「、」でつなぎ、長い1文。谷崎さんの「文章読本」を手元に、谷崎作品を読むと、その工夫や向上心が窺えて素晴らしい。

  • 2つとも素晴らしい作品。『蘆刈』は無駄を極限までそぎ落とした作品だ。現実世界から幻想の世界へと呼びいざなわれる。熟練の筆で書かれた磨かれた文体と構成は実に美しい。『春琴抄』と同じくらいの傑作だ。

  • みかちゅうオススメ!
    日本古来のリアリズムを考えさせれます

  • ※ツイッターより転載

    芦刈読み終わった。ちょ、ラストシーン、谷崎おまwとしか言いようがない、こんなのありかよ、思わず持ってた鉛筆で余白に「ええええええ」って書いちゃったじゃないかよ、うわ、何だこれ。何だこれ。何だこれ。(大事なことなので3回言いました)

    芦刈の感想変遷 序盤「日本語が美しいのはわかったから早く話始めろ」 中盤「谷崎始まったなktkr」 中盤途中「序盤のフリは一体何だったのか。この構成、この文体、この雰囲気こそ彼」 最後「えええええええwww」

    吉野葛読み終わった。前回と同じく最後で落とされたんだけど寧ろ今回は読めたのが最後だけで他は全然読めなくてぼんやりして字面だけ追ってるような感じでこれ読物としてはどうなのと思った。好みだけいうなら今のところは春琴抄が一番好きかな。さて寝ないと。

  • エロエロな谷崎作品とは雰囲気変わって、「吉野葛」は吉野山の奥に進みながら歴史の古層、幼き頃の母の面影を追う話。主人公は小説の材料集めに来て、友人・津村の生みの母を探す話を聴かされる。ついでに嫁もゲットしちゃう津村。ラストの橋の上から津村と婚約者が手を振るシーンは違和感がすごい。あれ、ハッピーエンドじゃあん……

    吉野の自天王……信太妻……妹背山……忠信狐……などなどのモティーフがつながって、歴史と山と記憶の奥へ奥へ潜っていき、その行きつく先には亡き母の面影が待っている。綺麗な谷崎。谷崎は自分で失敗作としたらしいけど、結構好き。
    あと、和歌にもよく出てくる妹背山は、妹山と背山のふたつの山を指した呼称だということを初めて知った。

    「蘆刈」は夢幻能。「卍」と対応するキャラクタもあって、どちらかを先に知ってるとより楽しめる。魔性の女を上品に表現すると「蘆刈」。本人の愛らしさから、本人に求められたわけでもないのに、周囲が世話を焼きたくなるような、そんな魔性の女性が登場する。

    綺麗に終わるのかなアー、と思いきや、谷崎らしい生々しさが出てきて幻想的な雰囲気が段々とはっきりしてくるンだけど……結びでスススと引いて、綺麗に終わる。谷崎らしく建築された幻想小説と言えるのかな。幻想小説て行き当たりばったりみたいなのしか知らなかったのでこういうのもあるのか、と。谷崎の中ではどうでもいいような作品だったみたいだけど。

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永遠の理想の女性たる母への思慕をテーマに卓抜な構想力で描いた傑作2篇。創元社版の写真・挿絵を併収。

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