美しき町・西班牙犬の家 他六篇 (岩波文庫 緑 71-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003107157

作品紹介・あらすじ

隅田川の中洲に理想の町をつくろうとして挫折する奇妙な男たちの物語「美しき町」、"夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇"「西班牙犬の家」など、選り抜きの8篇を収録。芥川・谷崎と共に大正文学を代表する早熟の天才詩人・作家佐藤春夫の、上質の酒の酔い心地のような、小説を読む楽しさを満喫させる短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • ★3.5 文章と世界観が割と好みだなあ。

  • 佐藤春夫。河出文庫から出ている『南方熊楠—近代神仙譚』をだいぶ前に読んだきりだったが、あるきっかけがあって、この文庫を手に取った。一番最後に収録されている『山妖海異』は著者自身と熊楠が生まれた土地である熊野の言い伝えをあれこれ書いた随筆で、これが一番『南方熊楠—近代神千譚』に近い。『星』『李鴻章』『F・O・U』は異国が舞台の話。『西班牙犬の家』『美しき町』『陳述』『月下の再会』は国内が舞台の話だが、いずれもバタくさい。つまり洒落ている。ほら、こんなのも書けるよ、と次々手を変え品を変えいろんな料理を出されている感じ。でも嫌味な感じはなく、とても楽しく読んだ。『美しき町』は、概念を弄ぶことの楽しさと美しさの究極みたいな作品。『陳述』の、心理戦の繰り返しの中でどうにもならないまま破滅に突き進んでいく展開には思わず息をのんだ。

  • 早熟の天才詩人•佐藤春夫の短編集である。
    多彩な作風で、同著者とは思えないほどのバリュエーション豊かな作品になっている。
    私のお気に入りは、若者2人と老人が理想の町を創り上げる『美しき町』と、明末清初の男女の三角関係を描いた『星』だ。
    幻想的で、耽美な世界観に引き込まれ、その時代や場所にタイムスリップしたような心地に誘われる。

  • 西班牙犬の家

  • 表題作二つと月下の再会 F・O・U が好き

  • 散歩の途中で見つけた不思議な家の幻想譚。佐藤春夫の処女作だが非常に詩的な話である。この文章を通して何らかの思想を伝えようとしたわけではない。抒情的な雰囲気と妄想的な感覚を伝えたかったのだろう。この話を読むと、萩原朔太郎の「ウォーソン夫人の黒猫」を思い出す。夢なのか現実なのか。狂気なのか真実なのか。好きな話である。探偵趣味の香りもして。

  • 解説:池内紀
    西班牙犬の家◆美しき町◆星◆陳述◆李鴻章◆月下の再会◆F・O・U◆山妖海異

  • 新書文庫

  • 「西班牙犬の家」「美しき町」「星」「陳述」「李鴻章」「月下の再会」「F.O.U」「山妖海異」

  • 佐藤春夫が描く、「地に足のつかない心地よさ」の短編集。

    これは私の2007年度のベスト。

    たぶん、「いい」とか「すごい」とかいう本と「好き」っていう本は、全然別物なのだろう。
    これは私にとっての、断然「好き」に属するほうの本。
    上手いだとか幸せだとか壮大だとか、そんなことは全く関係がない。ただ、好きだから。
    この本は、私の好み。私の趣味。それだけ。

    特に大好きだったのは、「F・O・U」だろうか。
    人好きのする、かわいくて愛らしい狂人、というコンセプトを見事に私好みのものに仕上げたのがこの作品だと思った。
    「美しき町」も大好きだ。こういう、朗らかで、享楽的で、しかも美しい人たちの話って大好き(笑)。夢みたいな話なんだけど、その夢みたいな話を夢のまま壊さずに語ってくれるところが、ほんとに素敵。

    この短編は、なんにも知らずにほんとに気まぐれで手に取った。こういう本に突然出会うから、やっぱり読書は面白い。
    偶然に感謝。

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著者プロフィール

さとう・はるお
1892(明治25年)~ 1964(昭和39年)、日本の小説家、詩人。
中学時代から「明星」「趣味」などに歌を投稿。
中学卒業後、上京して生田長江、堀口大學と交わる。
大正2年、慶応義塾を中退、
大正6年、「西班牙犬の家」「病める薔薇」を発表し、
作家として出発。
「田園の憂鬱」「お絹とその兄弟」「都会の憂鬱」などを
発表する一方、10年には「殉情詩集」、14年「戦線詩集」を刊行。
17年「芬夷行」で菊池寛賞を受賞。23年、芸術院会員となり、
27年「佐藤春夫全詩集」で、29年「晶子曼陀羅」で
それぞれ読売文学賞を受賞し、35年には文化勲章受章。
小説、詩、評論、随筆と幅広く活躍。

「2018年 『奇妙な小話 佐藤春夫 ノンシャラン幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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