宮沢賢治詩集 (岩波文庫 緑 76-1)

制作 : 谷川 徹三 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003107614

作品紹介・あらすじ

野や山を友とする自然体験、法華経に傾倒した宗教体験、貧しい東北農民を眼前にみる社会体験の三位一体の上に発想・表現される宮沢賢治(1896‐1933)独得の魅力に満ちた詩群から146篇を収録。一瞬一瞬心に映るものの中に万象の永遠の姿をみるという賢治の世界は、今日ますますその不思議な輝きを増し、読者をとらえてはなさない。

感想・レビュー・書評

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  •  心象のはひいろはがねから
     あけびのつるはくもにからまり
     のばらのやぶや腐植の湿地
     いちめんのいちめんの諂曲(てんごく)模様
     (正午の管楽よりもしげく
      琥珀のかけらがそそぐとき)

    宮沢賢治の小説は苦手だが、詩は好きだ。「雨ニモマケズ」や「永訣の朝」もいいが、「春と修羅」が一番好きだ。何を言っているのかはわからないのに、何が言いたいのかはなんとなくわかる、この不思議な言葉の連なりが好きだ。

     いかりのにがさまた青さ
     四月の気層のひかりの底を
     唾(つばき)し はぎしりゆききする
     おれはひとりの修羅なのだ
     (風景はなみだにゆすれ)

    『銀河鉄道の夜』から連想される、聖人君子みたいな賢治はここにはいない。ここにいるのは、潔癖さゆえのフラストレーションに悶える、ひとりの孤独な青年だ。遠くに聞こえる雷鳴のような、青白い炎のゆらめきのような、何かひとつでもバランスが崩れれば今にも荒れ狂いそうな、破滅的なエネルギーの予兆。

     ああかがやきの四月の底を
     はぎしり燃えてゆききする
     おれはひとりの修羅なのだ
     (玉髄の雲がながれて
      どこで啼くその春の鳥)

    荒ぶる魂は、ときに文法や文脈をも破壊する。しかしその逸脱に、私はほとんど本能的な悦楽を覚える。形式上は破綻しているそれらの言葉は、交響曲のように重なりあい、響きあって、ひとつの世界を形成しているのだ。これが計算に基づくものなのか、感性によるものなのかは、私にはわからない。しかし賢治のように、既存の言葉を破壊してなお、言葉によって人に感銘を与える者がいるとすれば、それは「詩人」と呼ぶよりほかないではないか。

     まばゆい気圏の海の底に
     (悲しみは青々ふかく)
     ZYPRESSEN しづかにゆすれ
     鳥はまた青ぞらを截(き)る
     (まことのことばはここになく
      修羅のなみだはつちにふる)
     ………
     ………

  • 私は、  有 明   という詩が、一番好きです。

  • 春と修羅のかっこよさにやられた高校時代でした

  • まことのことばはうしなはれ
    雲はちぎれてそらをとぶ
    ああかがやきの四月の底を
    はぎしり燃えてゆききする
    おれはひとりの修羅なのだ


    青もとい靑の印象が強い詩集。ふと泣ける。言葉の断片が詩集を閉じても浮かんで来てしまう。明るい雨の中のみたされない唇、とか。抒情的な透明感が物凄いと思う。岩波文庫の書体も古めかしくて色っぽくて好い。

  • 今でもあえて旧字体、旧かなづかいの編集を貫くのは、その方が作者の意図がより伝わると考えてのことかもしれないなあ。改行、字下げも含めて、まるで絵のようなのだ。やっぱり一番感動したのは「永訣の朝」。高校の時にも読んだが、今読むとまた違った印象を受ける。この詩に「松の針」という続編があるのは初めて知った。

  • 本を開くと、イーハトーヴを流れる風の透明さと、土の匂いと、生い茂る草と、光る花々が見える。詩のことばで書かれた科学のことばは、木の芽のようにやはらかく、時には金剛石のように硬く光る。賢治の「ほんたう」を求めるこころのひたむきさに打たれ、泣きたいような気持ちになります。いつでも傍に置きたい本です。あまりに深く囚われているのでうまくレビューが書けません。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/701651

  • 雨ニモマケズ、はとても有名な作品ですが
    ほかにも素敵な作品がいっぱい収録されています。

    言葉の使い方が繊細で
    こういう表現があるんだ、とはっとさせられる作品がたくさんあります。

    その中で特に気に入ったフレーズを抜粋します。
    「グランド電柱」から
    「雲と雨とのひかりのなかを」
    真っ黒い雲のなかでキラキラ光る雨の様子が目に浮かびとても素敵な情景に感じしびれました。

    「停留所にてスヰトンを喫す」から
    「あゝ友だちよ
     空の雲がたべきれないやうに
     きみの好意もたべきれない」
    この表現がなんとも気持ちを絶妙にあらわしていて
    ぐっと心を掴まれました。

    ほかにもいい詩はいっぱいありますが
    特に気に入った作品です。

    宮沢賢治は、素敵な詩人だと改めて思いました。

  • 子供みたいなみずみずしい感性なのに文章は理知的で、でも幻想的で癖になる

    有名な「春と修羅」「雨ニモ負ケズ」、収録されてます。一読の価値ありな詩集です!

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