- Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003110614
作品紹介・あらすじ
権勢に近づかず人に知られることを求めずして一生を終えた柴田宵曲(1897‐1966)。だが残された書は人柄と博識ぶりを伝え、一度その書に接したものに深い印象を与えずにはおかない。本書は、元禄時代の無名作家の俳句を集め、評釈を加えたもの。今も清新な句と生活に密着したわかり易い評釈が相まった滋味あふれる好著。
感想・レビュー・書評
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著者:柴田宵曲(1897-1966、中央区、俳人)
解説:森銑三(1895-1985、刈谷市、日本文学)、小出昌洋(1948-、東京都、編集者)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
元禄時代のあまり著名ではない作者による俳句を集め、句意とともにその情景を評した著作である。
たいへんにわかりやすいだけでなく、ひどく説得力がある。偏に、評者がそれらの句を自家薬籠中のものとしているからであろう。
森銑三による評者の解説がまたよい。
「宵曲子が逝いてからやがて二十年にもならうとする。しかし私等は折に触れては子のことを思ひ続けて生きてゐる。子の如きはどんな時代にも一人二人はゐてほしい人物である。さうした人がゐなくてはこの世があまりに味気ないものになつてしまふ。」
さらに、解説氏による「人物清虚、権勢に近づくことをせず、博交を求めず、自ら人に知られることをも求めず、一隠者としての一生を終えた」という人物評は、かくあるべしという自分のとっての理想像でもある。
柴田宵曲の別の著作も読みたくなった。 -
元禄、まだ芭蕉の影響が強い時代の、無名の俳人たちの句を取り上げ、解説と鑑賞を加えた本。
ひとつには、元禄の句の広がり、のびやかさを味わうことができる。時に驚くほど現代的な感覚のものもある。
ふたつには、鑑賞自体が美しい。俳句を知らぬ私などでも、案内されて一句の世界に導かれる。慈味あふれるといってよい。
みっつに、解説をよむと、如何に宵曲が周りから親しまれていたか、その人柄の温かさ、彼らの周りにあった空気に触れることができるようである。
名著であろう。