放浪記 (岩波文庫)

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著者 : 林芙美子
  • 岩波書店 (2014年3月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003116937

放浪記 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • もう亡くなってしまった、
    祖母の愛読書だった、この本。

    大好きなおばあちゃんであった為、影響を受けて読み、
    その後、私の愛読書にもなった。

    特に、とても落ち込んだり、やさぐれているとき、
    読むとぴったり来て楽しいの。

    だから、「私が『放浪記』を読んでいたら
    近づかない方がいいんだよ…」と心の中で言っていた。

    岩波の月刊誌「図書」で紹介が出ていて、
    復刊かと思ったら、岩波さんではお初に出版のようだ。
    なんだか意外であった。

    今まで愛読していたのは新潮文庫で、
    何度も読んでお風呂でも読むから表紙はバラバラ寸前、
    でもそれがなんだかうれしい。

    今回は落ち込んでも、やさぐれてもいないけれど、
    岩波版出版記念に読みました。

    「私の選んだ文庫ベスト3」で、半藤一利さんが
    大好きな夏目漱石の小説を、出版各社とりまぜて
    気分に合わせて読み比べている、と
    その違いを詳しく教えてくれていて、

    「へぇ~」と、なった。

    私は今まで自分の好きな海外文学の翻訳読み比べは
    趣味でやっていたけれど、(とくに『高慢と偏見』!)

    日本語だったら、そんなに違いはないんじゃ…と
    思い込んでいた。
    だから好きな日本の小説も、
    同じ本を読んでいたなあ、と。

    以前、お笑い芸人の又吉さんが、
    太宰治の小説を各社全部、本棚に並べているのをみて
    「太宰好きが過ぎるよ、又吉君…!」と思っていたの、
    恥ずかしく思っております。

    今回、岩波版を読んで、確かに合点がいきました。

    お世話になった新潮版に申し訳ないけれど、
    岩波版、読みやすいです。

    字体と行間が絶妙なのかしらん。

    あと、注釈がそのページかその次のページにすぐ出てきてくれるから、
    すいすい読めた。

    注釈のしるしがついているとどうしても気になって確認したくなる。

    新潮は後ろについている、
    注釈のところにもちゃんとその言葉がまず書いてあってその下に説明、
    と、私が一番好む注釈のつけかたで、
    確かに量も多く、半藤さんと同じく、
    詳しく勉強したい気分のときは新潮版がお勧めかも、です。

    登場人物の一人、「松田さん」、久しぶりに読んだら、
    登場する部分、意外に少なく感じたな…。
    印象が強すぎて、私の心の中で育っちゃったみたい。

    「松田さん」は、会わない時はとても優しくって親切で、
    そんな人に冷たくしたら悪い、と思うんだけど、
    会うと、イライラして、やっぱり大っ嫌い、見た目も気持ち悪い、となる人。
    (こういう人、いますよね…)

    あと、新聞社の取材である小説家のところへ行き、
    その娘さんと話す。

    「私はいまだかつて私をこんなに優しく遇してくれた女の人を知らない。」
    と言うところが好きだ。

    芙美子さんが、すごく良さそうな問屋さんに就職したり、
    新聞社に入ったり、やっと落ち着けそうになると、
    私もほっとして、「そのまま頑張れ!」と応援するんだけど、
    やっぱり、色々あって、やめたりしちゃうのね。

    昔の友達に会いに行って、話が盛り上がって、
    「その場所に今から行かない?」と言う芙美子さん、
    友達は「だから貴女は苦労するのよ…」と言う。
    私も、そう思う!(でも、一方、憧れているよ)

    そして、今回は特にお義父さんについて注目して読んでいた。

    このお母さんの連れ合いの方は、
    芙美子さんとは血のつながらないお義父さん。

    お母さんの二十歳年下で、
    とにかく苦労の連続、なのだけど、
    決して、二人を見捨てない、

    芙美子さんも、色んな感情が渦巻くときもあるけれど、
    「大事なお母さんを大事にしてくれる人」でもあり、
    やっぱり強い愛情がある。

    「縁」の不思議さにも思いをはせた今回の読書であった。

  • 林芙美子の出世作、なんども改稿し続けた1~3部を収録。
    表紙には「逆境におしつぶされることなくひたすらに文学に向かってまっすぐに生きる」と書かれているけど、まったくそういう風には読めません。少しも埒の明かない暮らしに、しょっちゅう自棄っぱちになっては悪態を吐き、できもしないことを夢見たりして、それでも文学を捨てきれない人、というのが私の受けた印象でした。
    なにしろ、貧乏でも芸術一筋を気どりつつ、生活の苦労は女に丸投げしてきた多くの男性作家とはわけが違うもの。女にとっては、貧しさと、男に依存する/利用されることとが不可分の関係なのだということが、この人の吐き出す思いを読むと、あらためて実感されて、ほんとうに今の時代の女の貧困と、本質的には変わっていないと、つくづく感じます。特に、彼女を愛しているという「松田さん」が、見返りを期待しないと言いながら金を貸してくれることが、むしろ重荷で嫌でたまらない気持ちは、とてもよくわかる。
    いっそ誰かと結婚しようか、いっそ売春でもするか、と、本心とも思えない言葉を吐きつつ、それでも文学を手放さないでい続けたのは、「純粋な志」なんてきれいごとでは済まない、意地とか開き直りとか、複雑なものがあったんじゃないだろうか。林芙美子が、成功してからも、あれはプロレタリアート作家よりも落ちる「ルンペンプロレタリアート作家」だと中傷を投げつけられたように、性的にも、志においても、”純粋”でいるという贅沢が許されないのが、つまり貧困な女ということなのです。
    もっとも、その日その日の気持ちが火花のように飛び散っていた第一部とくらべると、第三部はかなり整理されて、作家のサクセスストーリーの趣には近づいてくるのだけど。しかし第2部の最後に付記された、今は成功して自分の家も構えた作者がふと漏らす恐れや空しさにこそ、林芙美子の直の肉声がもっとも伝わってくる気がします。特に、苦しいなかで支えとなってきたことは間違いないけれど、重荷でもあり自分を縛る鎖であったことも間違いない家族というものを、ふと客観的に眺めてしまう心持ちを描いている部分が、強い印象を残す。家族への相反する気持ちも含め、彼女の率直な筆が時代を超えて共感を呼び続けていることに納得します。

  • 通常の配架場所: 1階文庫本コーナー
    請求記号: 913.6//H48

  • 貧困はこうも人を卑屈にするものかと思いました。また、作者自身の男性との関係のいつまでも未練たらしく優柔不断なところや職を転々とするところなども少しばかり腑に落ちませんでした。正直この作品が後々まで読み継がれていくほどの作品かなと思いました。

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放浪記 (岩波文庫)はこんな本です

放浪記 (岩波文庫)の作品紹介

私は宿命的に放浪者である-若き日の日記をもとに記された、林芙美子(1903‐51)生涯の代表作。舞台は第一次大戦後の東京。地方出身者の「私」は、震災を経て変わりゆく都市の底辺で、貧窮にあえぎ、職を転々としながらも、逆境におしつぶされることなくひたすらに文学に向かってまっすぐに生きる。全三部を収録。

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