桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)

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著者 : 坂口安吾
  • 岩波書店 (2008年10月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003118221

桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 全14編のうち既読6編、今回初めて読んだのが8編。
    「桜の森の満開の下」「夜長姫と耳男」「アンゴウ」の3編(いずれも既読)が
    入った1冊はないかと探したら、この本が見つかったので購入。
    テーマは戦争と恋愛に傾いている印象。
    もっとも、執筆・発表年代を考えたら戦争が取り扱われているのは当然だし、
    明日にも焼け出されるかもしれないといった危機感の中で男女が愛欲に溺れる、
    というのも、まあそうか、そういうものかな――と、呟きながら、
    バタイユ『青空』を思い浮かべたが、ともかくも、
    極限状況の中で男より女の方が肝が据わっているというのは、
    リアリティがあって頷ける(笑)

    久しぶりで特に楽しみにしていたのが推理掌編「アンゴウ」。
    タイトルは暗号、暗合、そして作者の名「安吾」のトリプル・ミーニング。
    主人公の疑問・疑惑が氷解した瞬間、こちらの涙腺も緩んでジーンと来てしまう。
    青空文庫にも入っている、ごく短い小説で、未読の方にもお勧めしやすい佳品。

  • 安吾の作品について何か書こうとすると、いつも自制が効かなくなりそうで、怖くなる。
    なので、これも感想を書かないことにする。



    ……というのも淋しいので、「青鬼の褌を洗う女」だけ。
    私がこの話を読んだのは随分前のことで、その時の感想は正直言って「ヨクワカラナイ?」であった。
    しかし、今回このお話を読んで、私はこのヒロインを骨の髄まで抱きしめたくなった。彼女のことが、とても可愛くて、しょうがなくなったのである。

    彼女は言う。すべてが、なんて退屈だろう、と。しかし、なぜ、こんなに、なつかしいのだろう、と。

    淋しさを嫌って孤独を抱きしめ、理屈を嫌って退屈に媚びる。どうして彼女のそんな生き方を、愛しいと思うのだろうか? 私は彼女の生き方に、どこかで憧れているのだろうか? それとも、私のどこかほんの一部、握りしめればつぶれそうなほんの僅かな部分が、そうやって生きてきたのだろうか? 

    まさか!

  • *青空文庫
    「桜の森の満開の下」
    男女の関係ってなんでもありだなってのと、桜の描写の美しさが秀逸。
    これも美と狂気の抱き合わせだな、この組み合わせの相乗効果は間違いない。

  • 「恋をしに行く」を読んだあと、
    何とも言えない放心状態に陥った。

    世界観?雰囲気?
    そういう抽象的な表現しか思いつけないのだけど、
    凄く自分にぴったりときた素敵な作品でした。

    もちろん表題作も素晴らしい。
    ぜんぶおすすめ。

  • 男は寂しかったのだ。そういう印象を受ける。寂しかったから、孤独だったから賑やかな桜の下が怖かったのだ。ちがうだろうか。
    男が都を退屈だと思った気持ちがわかる気がする。私も街を歩くとき退屈だと思ったことがある。お喋りが退屈だと思ったことがある。毎日毎日同じことの繰り返しで退屈だと思ったことがある。人は冷たいものだ。だがなぜか、自然は温かい。男が都を退屈だと思い、山を恋しく思う気持ちがわかる。
    女は本当に鬼だったのだろうか。今、改めて考えてみると、女は男の心の中の残酷な部分を表していたのではないかと思う。つまり、女は男の一部だったのだ。都に行って男の心は明らかに何かが変わった。すると、女も男に涙を見せ、明らかに様子が変わった。男は自分の心に、この女の様な残酷さを持っていたため、桜の下に行くのが怖かったのだ。だって、桜はきれいで清らかだもの。
    納得だ。自分なりに納得した。
    私は満開の桜が苦手だ。寂しいとかでなく、やけに焦って落ち着かなくなるのだ。桜の花がきれいすぎて疲れてしまう。この時をどうすれば一番いいのか分からなくて、途方に暮れてしまう。もし、私が桜の下で心穏やかに過ごすことが出来たとき、心に何らかの変化が起きたといえるのだろうか。そもそも私が桜をここまで苦手に思う原因は?来年の春、実験してみよう。

  • 坂口安吾の代表作といえる2作と他中短編を集めた一冊。
    表紙の解説からリッチ層の恋愛酔いしれ話だったらきついなぁ…とか勝手に心配していたが、共感するところが多々あり。漱石・太宰より現代的でからりとしたエゴイズムという感じで読みやすかった。

    特に「白痴」の井沢が逃れられない「二百円の悪霊」的感覚は痛いほどわかってツライ…どんなに頑張ろうと洒落込もうとお前に手に入れられるのは所詮給料内の幸せだ! っていう自虐ツッコミは自分もしばしばしてしまいます。

    またいくつかの作品で描かれる戦争中の心理がリアル。戦地に赴かない人々の心理描写や直面するいたって現実的な問題は子供の頃に読んだ戦争ものより腑に落ちた。
    全てが壊れればもっと良いものが生まれるのでは…と不謹慎ながら待望する気持ちは、複雑な現代に生きる人の中にも結構潜んでいるのではないかなと思う。

  • 桜の森の満開の下

    青空文庫の電子書籍で読了。
    坂口安吾が1947年に発表した短編小説。山賊が魅入られて手に入れた女に振り回されていく様を描く。
    比較的受け入れ難い残虐なシーンも淡々と描かれている。そのせいかこの作品の主題が読み解く事が出来なかった。ただネットで調べると下記の解釈が自分には1番しっくりきたかも。
    http://homepage3.nifty.com/u2kobo/koboworks/sakura05.htm
    「絶対の孤独」「徹底した他者性」に気づくまでの物語が、ある意味救いのない中で結末で描かれていると考えると納得がいった。
    ちなみに森見登美彦がこの作品をカバーして、現代版にアレンジしているが、そちらの方が圧倒的に感情移入しやすいだろうとは思う。

  • 彼の男女関係を覆う世界観はとても切なく流麗な物に思う。

    孤独と退屈、宿命。そうした悲痛な感情を恋愛と成す。

    感情や関係、環境や過去と価値観。あらゆる形の有たない物が、附随されただけの玩具だと形容は沁々と心を染めてゆく。
    戦争という恐怖や死、巨大な破滅を与える事。未来を実際以上に絶望と見せる物を巧みに駆使された『戦争と一人の女』は傑作だった。

    不可思議を不可思議の儘に留める『姦淫に寄す』や『不可解な失恋に就て』も、それなりの魅惑があった。
    『桜の森の満開の下』は、ただ情景の余りの美しさ。一つ一つの描写に於ける色彩の華やかさには見惚れるものがあった。
    『白痴』では、意外な題材の活かし方にはじめは面白さを見出だせそうには無かったが、空虚と苛立ち、もどかしさ故の“愛”というには覚束ず、それでいてもっと重い感情が産まれたのだと思うとただ感嘆した。
    最後の締めには何とも云えない憐れみにも似た美しい閃光が見えた気がした。

    どの噺にも、男女の現実的で幻想的な、醜悪で神秘的な心描写があり、様々に魅せられた。
    静かな言葉の遣り取りさえもしんみりと美しく、素晴らしいと思った。

  • 桜の下で読んでみた。晴れた日で絶好のお花見日和だったのに、ぞっとした。こええ~~

  • 刹那の悦楽に酔い痴れ、艶やかに咲いた後は、ただ儚く散って涸れるだけ。そんな悲しき女たちの肖像。

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桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)の作品紹介

桜の森の満開の下は怖ろしい。妖しいばかりに美しい残酷な女は掻き消えて花びらとなり、冷たい虚空がはりつめているばかり-。女性とは何者か。肉体と魂。男と女。安吾にとってそれを問い続けることは自分を凝視することに他ならなかった。淫蕩、可憐、遊び、退屈、…。すべてはただ「悲しみ」へと収斂していく。

桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)のKindle版

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