- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003119150
作品紹介・あらすじ
「「生きられますか?」と彼は彼女にきいてみた。」(野間宏『顔の中の赤い月』)-焼跡から、記憶から、芽吹き萌え広がることばと物語。昭和二一年から二七年までに発表された、石川淳・坂口安吾・林芙美子らの一三篇を収録。
感想・レビュー・書評
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昭和21年から27年までの短編小説を集めている。当然、戦争を題材としたものと戦後の窮乏を描いたものが多い。大岡昇平の「野火」、「俘虜記」の前日譚である「出征」が面白かった。
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墓地の春 20160219
顔の中の赤い月 20160319 -
タイトル通り、日本近代の短篇小説選。
これは敗戦から占領期の巻。
サロメを読んだら桜の森の満開の下が読みたくなって手に取った。
なんだか全体的に男が自分の頭の中だけでぐちゃぐちゃ考えているような話が多い。
それでも、そのぐちゃぐちゃを語り手や作者がつきはなしている作品はわりと面白い。
「読めるけど嫌い」「すごいけど読みたくない」「いいけど滅入る」みたいな、作品としての質と好みが釣り合わないものが多かった。
読みたいと思っていた「夏の花」が入っていてうれしい。
原爆投下直前から直後の広島の風景。
尻切れなのは連作の一部だからか?
好きなのは「虫のいろいろ」。
「硝子戸の中」のような病弱日誌。
静かにユーモラスに考える素敵なおじさん。これはぜひちゃんと読もう。
知らない作者を読めるのがアンソロジーの醍醐味だ。
シベリア抑留の日常を描く「小さな礼拝堂」も良かった。
「シベリヤ物語」を通して読みたい。
「桜の森の満開の下」はやっぱり綺麗。
でも時期がちょこっと早かった。
あと少し待つべきだった。
中里恒子、イギリス人の母を持つ姪の埋葬を描いた「墓地の春」はディアスポラっぷりが悲しい。
「蜆」は善悪を懸命に自分に納得させようとしている男に対して語り手の酔っ払いが心底どうでもよさそうなのが面白い。
解説は紅野謙介。
過剰に意味を読もうとし過ぎのように思う。