- Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003206010
作品紹介・あらすじ
インド最古の宗教文献であるヴェーダのうち、紀元前13世紀を中心として永い間に成ったリグ・ヴェーダはとりわけ古く、かつ重要な位置にある。それは財産・戦勝・長寿・幸運を乞うて神々の恩恵と加護を祈った讃歌の集録であって、アーリア人がのこしたこの偉大な文化遺産は、インドの思想・文化の根元的理解に欠かすことができない。
感想・レビュー・書評
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古代の職業詩人が、人々の繁栄や幸福を神に願うために全身全霊を込めて編んだ詩の数々。
ライバルの間で詩は切磋琢磨されて、より力強く、より壮大に、よりめでたくと発展していったのでしょう。
夜によく読むのですが、楽しい気持ちになれます。たくさんの英雄や女神の形をとった観念や自然現象が惜しみ無く魅力的に語られて登場し、まるでお祭りのようです。
ありがたいお経のようでもあります。
ここまで言葉に力を込めることができたのは、神の存在を心から信じることができた時代だからこそ。今の世にこのような言葉を生む力があるでしょうか…。
インドでは富めるものが貧しいものに惜しみ無く与えることは徳であり、また、貧しいものが誰かの力を借りたり、分け与えてもらうよう乞うことは自然な行いであるのかな、と、この本を読んでいて思いました。
やはりその国の風習にはその国の精神が根付いており、他者には容易に批判できないと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
素朴な信仰から、政治的・権威的臭みのある説法、宗教哲学的な洞察、庶民生活に根ざす呪法まで、幾世代も経て発展してきたことを感じさせる興味深いものでした。
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造物主よ、いかなる願望をもって、われらが汝に供物を捧げても、それを叶えてくれ。願わくは、富の主たらんことを。p.318▼勝利をもたらす献供により、祈禱主よ、われらに主権のために勝利を得させてくれ。p.389▼もし寿命尽き、この世を去り、あるいは死の近くに赴いたとしても、われは彼を破滅の膝よりつれ戻す。生きよ、百秋のあいだ健康を増進しつつ、百冬のあいだ、百春のあいだ。p.363▼寛裕なる神よ、われら願わくは幸運に満ちた者たらんことを。常に祝福により、われらを守れ。p.140『リグ・ヴェーダ』BC13世紀 ※アーリヤ人。
宇宙の根本原理(ブラフマン)と自己の本質(アートマン)は同一である。人間の呼吸は宇宙の息吹(風)と通じている。ブラフマンとアートマンの合一。梵我一如ぼんがいちにょ。修行や瞑想による輪廻転生からの解脱。▼バラモンは来世でもバラモン。下層民は来世でも下層民。『ウパニシャド』BC6世紀
※アートマンはサンスクリット語で「呼吸」の意味。インド・ヨーロッパ語であるドイツ語では今でも「呼吸」をatmen(アートメン)という。
沈黙と孤独の中に力強い活動力を見出し、力強い活動力の中に沈黙と孤独を見出せ。苦と楽を平等に見よ。土塊と黄金を等しいものと見よ。非難と称賛を同一視せよ。すべての欲望を捨て、願望なく、「私のもの」という思いなく、我執なく行動すれば、その人は寂静(じゃくじょう)に達する。寂静に達した人はブラフマンと一体となる。▼主体(個我)はこの身体において、少年期、青年期、老年期を経る。そしてまた、他の身体を得る。賢者はここにおいて迷うことはない。個我は存在するが、身体は存在しない。個我は殺されることがない(永遠に存続する)。cf. 仏教「永遠不変の我なんてない」。『バガヴァッド・ギーター(神の歌)』BC5世紀~BC4世紀
※ヒンドゥー教の聖典。サンスクリット語。マハーバーラタの一部。
魔王に幽閉された妻を英雄ラーマが助けに行く。『ラーマーヤナ』BC2世紀
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*ブラフマー。創造神。仏教に入り梵天。天部の最高位。
*ヴィシュヌ。仏教にはいり那羅延天ならえんてん。
*シヴァ。魔神。破壊神。仏教に入り大黒天。戦国武将が勝利を祈願。
最高神は、ブラフマーとして世界を創造し、ヴィシュヌとして世界を維持し、シヴァとして世界を破壊する。
*サラスヴァティ。河の女神。仏教に入り弁才天。芸能・技芸。女神。
*ヴァイシュラヴァナ。仏教にはいり毘沙門天。四天王では多聞天。
*ラクシュミー。美と幸運の女神。仏教に入り吉祥天。毘沙門天の妻。
*インドラ。軍神。武勇神。暴風雨。仏教に入り帝釈天。
*アスラ。幻力、呪力に富む神。後に悪魔(阿修羅)の通称に。帝釈天との死闘の場を修羅場という。
*アグニ。火の神。
*スカンダ。軍神。仏教に入り韋駄天。
*ガンダルヴァ。天上の楽師。水の精女アプサラスの配偶。
*ソーマ。神酒。栄養と活力を与える。寿命をのばし、霊感をもたらす。
*ヤマ。死界の王。死者の王。仏教に入り閻魔。最初の人間。妹ヤミー。 -
『リグ・ヴェーダ』(ऋग्वेद)は,古代インドの聖典であるヴェーダの1つ。サンスクリットの古形にあたるヴェーダ語で書かれている。全10巻で,1028篇の讃歌(うち11篇は補遺)からなる。古代以来長らく口承され,のち文字の発達と共に編纂文書化された数多くあるヴェーダ聖典群のうちのひとつで,最も古いといわれている。
続くヴェーダ:『サーマ・ヴェーダ』『ヤジュル・ヴェーダ』『アタルヴァ・ヴェーダ』(付属文典:『ブラーフマナ』『アーラニヤカ』『ウパニシャッド』)
本書は『リグ・ヴェーダ』のあらましを翻訳によって紹介することを意図したものである。収集するだけでも相当大変だろうが,これが日本語で読めるというのだからありがたい。 -
原書名:Rigveda(英語)
訳者:辻直四郎(1899-1979、中央区、古代インド学) -
インド最古の聖典であるヴェーダのうち、最古にして最も有名な讃歌集『リグ・ヴェーダ』の抄訳。同著者による『世界古典文学全集 3』(筑摩書房:1967年)収録の訳を改訳したもので、ヴェーダ時代より神々への祭祀に用いられてきた諸々の讃歌を収めている。
本書は、『リグ・ヴェーダ』収録の讃歌を(主要な神々に捧げられたものなどを中心に)ピックアップして邦訳したものである。インドラ、アグニ、ソーマなどヴェーダ時代の主要な神々は勿論、ヴィシュヌ、ルドラ(シヴァ)など後代のヒンドゥー教において大きな勢力を有する神々に対する讃歌が数多く収録されており、当時の宗教風景や神話を(断片的ながらも)窺うことが出来る。ヴェーダにて垣間見える宗教思想は後代のインド思想にも深い影響力を有しているので、本書を押さえておくことはそのままインド思想の理解に繋がる。抄訳という性格上原文よりカットされた讃歌が多く、また難解な文章を文語体的に訳しているので「読み物」として読みにくく思えることは事実だが、それでもインド思想の一底流を為す『リグ・ヴェーダ』を手ごろに読む事が出来るというのは大きいだろう。 -
ヴェーダ語から日本語ってとても難しいようで、本文がとても難しかったです。
でもこんな物まで神格化していたのか、とか何を大事にしていたのかわかるようでした。 -
インド神話最初の文献、リグ・ヴェーダです。
賛歌集であって物語としての色合いは薄いものが多いですが、ヤマとヤミーの対話とか、アグニが仕事を投げ出して逃亡する歌とか、面白いです。
引用は私の好きなアーディティヤ神群の歌から。
2013/2/11追加
リグ・ヴェーダに載ってる最高神についての記述を引用。 -
CLAMPからの~?
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神々への讃歌はギリシア神話のそれとは異なり、超越した人格、神格化されておらず、素朴で人の営みや自然への讃歌に溢れていた。
生きることを素直に肯定できる詩に満ち溢れている。
絶版になっていたので、古本屋で探していたが、プレミア?がついて定価よりも高くなっていたりそもそも無かったりして諦めかけていた…増版に感謝。