- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003211632
感想・レビュー・書評
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本巻は、ペリクレス、ファビウス・マクシムス、アルキビアデス、コリオラヌスの各伝記を収める。ペリクレスとファビウス・マクシムスは、ペロポネソス戦争とハンニバル戦争の指導者として、どちらが優れていたのかという観点から比較される。軍事的手腕については、ハンニバルの火牛の計にかかったファビウス・マクシムスに比べ、ペリクレスは失敗を犯さなかったこと、大スキピオに対して、ほとんど嫉妬のように思われる激しさでファビウス・マクシムスが妨害活動に勤しんだ点で、ペリクレスに軍配があげられている。また、アルキビアデスとコリオラヌスの比較では、基本的な観点は、追放を受けて祖国に弓を引いた人間というものである。とはいえここでもプルタルコスはアルキビアデスの側に軍配をあげている。アルキビアデスはシケリア遠征のためにニキアスを陥れ、いったんアテナイでの立場が不利になるや否やスパルタに身を転じ、さらにペルシャへ、それからまたアテナイへ、それからさらにペルシャへと転身していき、しかもその先々で環境に順応する「カメレオン」のような人である。しかしプルタルコスによれば、「民衆を扇動してその機嫌を取る人の方が、民衆扇動家と思われないように多数のものを侮蔑する人々よりも罪が軽い」。だから、民衆を軽蔑していたにもかかわらず、ひとたび民会で追放決議を受けるとローマに弓を引いたコリオラヌスは、市民の忘恩を許す心を持っておらず、それは過度な名誉への執着に由来するとして容赦なく批判される。ソクラテスに愛されたアルキビアデスの乱脈ぶりは後代までの語りぐさだが、プルタルコスの伝記を読むと、不思議と憎めない人間のように思えるから不思議なものである。
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