カンタベリー物語 上(完訳) (岩波文庫 赤 203-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003220313

作品紹介・あらすじ

花ほころび、そよ風吹きそめる四月、サザークの旅籠で出合った二九人の巡礼たち。身分も職業もさまざまな彼らが、カンタベリーへの道中、順番に話をすることになって-中世イギリス最大の詩人チョーサーの代表作。バーン=ジョーンズの挿画を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 『デカメロン』と並び称される、14世紀英国の枠物語。様々な階級の巡礼者29人によって語られる中世物語集。

    ボッカッチョ『デカメロン』を読み終えたので引き続きこちらを。国は異なるがほぼ同時代の作品ということもあり、違和感なく入り込める。内容も似たような感触だ。ただ詩人チョーサーの特色ゆえなのか、文章がまわりくどくて読みにくいところはあり。その説明いる?さっさと物語を進めてくれ、などと600年以上も前の大詩人に内心つっこんでしまった汗。

    3分割されている本文庫版だが、上巻である本書は実質的に4つのストーリーを収録。最初と最後に感動系、間に下世話な話が挟まっているという、いい感じで配分されている。特に最後に来る<弁護士の話>はドラマチックな感動が大きく、非常に良い読後感をもたらしてくれた。次巻以降も期待できるものである。

  • 総序の歌
    騎士の物語
    粉屋の話
    家扶の話
    料理人の話
    弁護士の物語

    チョーサーについて

  • 昨年ボッカチオ『デカメロン』を読了し、中世文学に興味を持ちました。そして本『カンタベリー物語』は『デカメロン』を下地にしていると聞き、読んでみた次第です。

    文庫本で3冊にわたる本作、上巻を読了した時点の感想は、本家デカメロンよりも読みやすい、と感じました。

    本家は10人が1日1話、10日間話を披露するというものでしたが、本作はひとり1話のようです。で、セッティングはまあデカメロンと類似の形式で、ある宿屋で一緒になった身分も職業も違う者たちがカンタベリー寺院へ共に巡礼に出向く道すがらにそれぞれが語るというものです。

    本上巻では序章と5つの話(騎士の話、粉屋の話、家扶(wikiでは親分と訳されています)の話、料理人の話、法律家の話)が収録されています。

    一番目を引いたのは粉屋の話。彼は、年の離れた若い奥さんを貰った大工の話をするのですが、下宿の学生が悪知恵を働かせて奥さんを寝取るという筋です。学生がノアの洪水にかこつけて大工をだまくらかすのですが、中世で広く旧約聖書の内容が信仰生活の下地に息づいていることを感じさせました。また、中世ルネサンスの入り口にあり、キリスト教的宗教的雰囲気がきしみ始めていることも感じました。

    ちなみに解説によると、粉屋というのは下衆の代名詞?のようでして、今読んでいる別の英国モノの小説で、粉屋(mill runner)の娘からイイトコに嫁に行ったというくだりがあり、粉ひきの父親をもって何がわるいのか、と読んだときは感じたのですが、下層の出であることの婉曲表現であったようです。

    ・・・
    やはり当時の人々の生活・文化などが分かる点が面白いと感じました。英国中世の文化についてはDan Jones氏のマグナ・カルタ関連の著作に幾つか言及があるのを見ましたが、こうした物語の方が圧倒的にビビッドであると感じました。

  • まずは高貴で気高い「騎士」の説明から入る。彼は騎士道を愛し、従者も1人だけ連れていた。次に「女子修道院長」。微笑む姿は誠に無邪気で恥ずかしそう。食事作法に良く熟達しており、スープを一滴たりともこぼさない見のこなしに加え、フランス語を巧みに操った。彼女は秘書役の修道女1人と司祭3人を連れていた

    →この時点で7人いる

    次に狩りが好きな「修道士」。他の修道士達と違って、聖アウグストゥスの教義に則れば仕事にあくせくして働かなければならないことに反感を持っており、狩りにご乱心なのだ。

    次に「托鉢修道士」。奔放で陽気な、大変位のある重要人物。大変優しく懺悔を聞いてやり、快く赦免を行なっ
    た。名をヒューバードと言った。

    次に「豪商」。売り買いや金策に対しては堂々として威厳があった。

    次に「オックスフォードの神学生」。高価な服やバイオリンを揃えるよりも、アリストテレスの哲学書を20冊買
    った方がマシだというほど真面目な神学生だった。自分が勉強できるように支えてくれる周りの人々に常に感謝の意を忘れなかった。

    次に「高等法院弁護士」。セント・ポール大聖堂によく出かけたことがある。ウィリアム征服王の時代以来生じたあらゆる判例や判決をきっちり対処しており、かなり忙しそうだった。

    次に「大地主」。この高等法院弁護士の連れで、楽しく生きることが彼のモットーでエピクロスの申し子だった。

    →この時点で13人いる

    次に「小間物商」「大工」「織物師」「染物師」「綴織師」もいた。彼らは同じ格式高いギルドのメンバーだったが、「料理人」も同伴させていた。

    →この時点で19人いる

    次に「船長」。デヴォン州から来ているようで、はるばるやってきたようだ。

    次に「医学博士」。医学と天文学に精通しており、極めて健康的な生活を好んだが、聖書の勉強はほんの少しだけだった。

    次に「女房」。バースから来た耳が遠く、かつて夫が5人もいたというすごいおばさん。しかし本当にすごいのは
    ここからで、彼女はエルサレムに3度、ローマにも言ったことがあり、ブローニュにも、サンチャゴ・デ・コンポ
    ステラにも、ケルンにも行ったことがあった。

    次に「主任司祭」。信仰心に厚く、善行に富んでいたし、思いやりがあってすごく勤勉だった。自分が民の代表として正しい行いをすることで民の手本となろうとする素晴らしい人物だった。

    →この時点で23人

    最後に「荘園管理人」「粉ひき屋」「教会裁判所召喚史」「免償説教家」「食料仕入れ係」と「私自身(チョーサー)」がいた

    →合計29人

    これは物語の序章であるが、ここでチョーサーはこう付け加える

    「私がこの語りにおいて彼らの言動を率直にそのまま述べたとしても無礼なやつだと思わないでください。
    なぜなら、皆さんは私と同様によくご存知の通り、誰でも人のいう通りに言わねばならないという責任がある場
    合、できるだけその通りに1語1語繰り返さねばならないから。」

  • レヴュは下巻にて。

  • こうして読んでいくと、なんと失われたものの多いことか、と感じさせられる。そして、それを取り戻そうとする研究者たちの仕事には賞賛の念を禁じ得ない。(訳注も解説もすごい)

  • 中世物語の傑作。

  • チョーサーが、1387〜1400年に書いた本である。上巻では騎士の話、粉屋の話、家扶の話、料理人の話(未完)、弁護士の話が入っている。「騎士の話」はギリシアが舞台、同じ姫を愛した二人の騎士が決闘するのだが、周りをまきこみ、神々まで巻き込んだ試合になっていく。「粉屋の話」は大工の女房が大学生と不倫をする話、「家扶の話」はあくどい粉屋が二人の大学生を泊めたために、女房と娘がやられてしまう話である。「弁護士の話」は信仰ぶかい高貴な姫がいろいろな苦難に襲われるが、信仰で救われる話である。

  • 同じ作家ばかり続けて読んでいるのもどうかと思い、積読から引っ張り出してきた。
    分冊になっている本が基本的に苦手なのだが、これは一つずつ話が異なるからいいかなと思って手にとった。
    「デカメロン」も積んでいるのだがあちらは基本的に艶笑譚と聞いており、今の気分ではなかったのでやめた。
    巡礼に向かう道すがら、様々な職業の人達が旅のつれづれを慰めるために話を語りだす。高潔な愛を語った「騎士の物語」の後に卑俗な「粉屋の物語」「家扶の物語」をもってくるという配置の妙がいいな。
    「騎士の物語」はよくある宮廷恋愛もので面白かったが、恋の結末のつけ方はいまいち納得いかなかったな。まあでも二人の振る舞いを比べれば、恋の勝利者がどちらになるかは明白ではあったか。
    最後の「弁護士の物語」はキリスト教的受難の物語なんだろうけど、現代に生きる女性の身から見てしまうと、色々腹立たしい部分が多い。歴史作品を読む際はその時代の視点で見なければいけないと分かってはいるんだけどね。

  • イギリス文学、否、英語という言語そのものの黎明期に燦然と聳え立つ巨塔。美しいファンタジーからの下ネタ、という冒頭のコンボで騙されているうちに読み終わ……らないです。終盤にいくにつれて、これ何のペナルティですかっていう気分になります。読みきった時の爽快感が忘れられません。

  • 面白く無い訳じゃないけど、期待してたほどじゃないという感じ。

    でも、解説を読んで改めて考えてみるとなるほどこれがどういう意味で評価されているのかがよくわかる。

    軽いタッチの短編を登場人物たちの語りという形式で統合した作品なのだが、そこには当時の科学的見識が満載。

    著者であるチョーサーの博識ぶりが伺える。

    語り口の軽妙さもおしゃれで、センスがいい。

    おそらく僕の知識では本作のすごさを理解しきれないため、この程度の評価になってしまうのだろう。

    今後、いろいろな本を読んで行ったら、僕自身のレベルアップにしたがって段階的に評価の上がっていく作品なのかもしれない。

  • かなり昔に読んだ本
    ファンタジーってジャンルとは 違うと思うけど まぁ細かいことは・・

    ファンタジーをよく読んでいた頃に やはり読んだものです
    定番というか あまりにも有名なので読んでいて損はないのでは?と思います^^

  • 宗教的敬虔さから庶民の物語まで幅広く、物語としておもしろい

  • 29人って多いだろう。

  • 2回目の三年生のときに英文学系の授業のレポートのために読んだ本。

  • 236夜

  • 中世ヨーロッパ文学の頂点にいるらしい作品です。
    身分や職業の違う人物たちが巡礼の途中のホテルで一緒になった時に、それぞれがお話をしていくという一種のオムニバスになっています。
    かなり古い作品ですが、これが中々読みやすい。百年戦争のさなかに書かれたとは思えないですね。それぞれの話もバラエティーに富んでいて、ちょっとずつ読んでいくのは中々楽しいものです。

    全3巻 所有

  • すばらしい作品です。
    学校の授業の試験で必要なため、読みましたが、
    自分は中でも「騎士の物語」が一番好きです^o^
    やはりああいう終わり方の話が自分的には好きです。
    つづけて、中・下巻も読んでいこうと思います。

  • カンタベリーへの巡礼の間、同宿した様々の身分・職業の人間が、旅の退屈しのぎに自分の知っている物語を順に語っていくという、「枠物語」(frame story)の形を取っている。
    そこには皮肉げな笑える話であったり、中世における身分毎の“世界観”を垣間見れるものを感じる。

  • (編集途中)

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