トム・ジョウンズ 4 改版 (岩波文庫 赤 211-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003221143

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  • 読み応えすごくあり!
    ーーーーーーー
    英国サマセットシャの名望家オールワージ氏が帰宅すると寝床の中に赤ん坊が…。無鉄砲だが正直率直、陽気に生き抜いてゆく捨て子トムの波瀾万丈の物語。法律家、新聞社主宰としても活躍したフィールディング(一七〇七‐五四)の健康な精神が生んだ名篇。地主ウェスタンは、愛娘ソファイアの結婚の相手にオールワージ氏の甥ブライフィルを選んだ。だが、当のソファイアが密かに想いを寄せているのはトム・ジョウンズだった。ブライフィルの讒言で、我らの主人公はとうとう世の荒波のただ中に裸同然で放り出される。さて、舞台はアプトンの旅宿へと移る。ジョウンズに危難を救われたウォーターズ夫人が彼を誘惑、ベッドに誘い込む。ちょうどその夜、彼が心を捧げる永遠の女性ソファイアもこの宿に到着。さらには父親ウェスタンも。次々と珍事件が巻き起こり、息つく暇もない。生活を援助してくれるベラストン夫人が実は若い男を漁る「何でも食い」。一方、ソファイアはいやな結婚を無理強いされ…。ジョウンズとソファイアを結ぶ運命の糸は縺れに縺れ、さて、この人生双六の上りにはどんな趣向が仕組まれているのだろうか。

  • 物語は、ジョウンズ君及び、周辺ご一行それぞれがロンドンに投宿しているなかで終幕。第四分冊(第15ー18巻※章に相当)もやはり、室内劇の場面が重なる展開に終始した。

    終幕において、捨て子で親の素性が不明だったジョウンズ君の父母のことが明らかにされる。そして、ずっとジョウンズ君に対して、陰で悪さをしてきたブライフィルらの悪事、本性が露わになる。このへん、善が勝ち悪が滅びることのちょっとしたカタルシスを感じられる。

    全体を振りかえると、登場人物らが生き生きとして、おおいに賑やかな小説だったな、と思う。ジョウンズ君はじめ、登場人物は実に人間味あふれている。つまりは、筆者がしっかりとその人間像を描けているのである。この点18世紀の小説ながら、近代小説の成熟に到達しているように思った。
    舞台演劇に脚色したり、テレビドラマに翻案しても、十分楽しめると思う。

    *******
    <以下、ネタばれ>
    ***

    ちなみに、ジョウウンズ君と「美姫」ソファイアは、終章においてめでたく結ばれるのであった。

  • 女にだらしないこと以外は、眉目秀麗、清廉潔白、気前良し。
    こんなに素晴らしい人はほぼいないと思われるのに、次から次へと不幸に見舞われる。
    生涯の恋人と思い定めたソファイアには絶縁を言い渡され、因縁をつけてきた男を振り払った拍子に大けがを負わせ、殺人犯として絞首刑を待つばかり…のところで残り50ページ。

    現れた目撃者はどういうわけかトムから斬りかかったと事実と違う証言をし、さらにパートリッジからは近親相姦の罪を糾弾される。
    それでもトムの無実を信じてやまない人たちの奔走で、少しずつ事件の全貌が明らかになり、瀕死の渋滞であったはずの相手も、実はたいしたケガではなかったことがわかり、おやおや大団円か…と思ったら、ソファイアの気持だけが頑なに揺るがない。
    この50ページの密度の濃さったら、ないよ。

    そもそも、、ベラストン夫人と別れるための作戦というのが、プロポーズをすることっていうのが面白い。
    プライドの高い人なので、遊びとしての愛人ならまだしも、格下の若い男と結婚して財産を食いつぶされるリスクを負うはずがないというのがナイティンゲイルくんの読みで、しかしこと人をだますことに自信のないトムは、直接プロポーズをするのではなく、手紙で求婚するのである。
    当然それは巡り巡ってソファイアの目に留まる。
    思えばあんな時もこんな時も、トムは女の人とベッドを共にしていたことを思い出せば、さすがのソファイアだって、そりゃあ許せないのは分かります。

    ではこの長い物語の落としどころはどこか?
    ・・・やっぱり大団円じゃない?
    じゃあどうやってそこに持って行く?

    いやいや、力業ですな。

    それにしても、ベラストン夫人とソファイアのお父さんであるウェスタン氏の極端な人となりが、怖い。(笑)
    トムとの恋愛に邪魔だと思えば、自分が庇護していたはずのソファイアにとことん意地悪を尽くす。
    善き母から、悪魔の化身くらいの振れ幅。
    ウェスタン氏に至っては、猫かわいがりに可愛がり、この世で一番愛している可愛い娘であるソファイアが、ブライフィルとの結婚を承知しないというだけで「この女郎(めろう)!」呼ばわり。
    一生部屋から出さず、パンと水しか与えないと騒ぐ。
    ええと…人格障害か何かお持ちなのでしょうか。

    18世紀の大作家フィールディングから19世紀の大作家ディケンズへ。
    イギリスの文学は確かに繋がっていると思う。
    そう言えばこの作品、シェークスピアの「真夏の夜の夢」のドタバタ感にも通じるものがあるかもしれない。

  • やっと完読

  • 2010.10.16 購入

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