対訳 コウルリッジ詩集―イギリス詩人選〈7〉 (岩波文庫)

制作 : 上島 建吉 
  • 岩波書店
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (660ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003222133

感想・レビュー・書評

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  • 対訳でなくても良かったのだけど手軽に入手できるのがこちらだけだったのでようやくコールリッジを。有名なのは3大幻想詩(クーブラ・カーン、老水夫行、クリスタベル)だけれど、どうやら幻想詩はこの3作だけなので、コールリッジ自身は幻想詩人というわけでもなかったらしい。割合としては普通の詩のほうが多く、申し訳ないけれど個人的には幻想詩以外に興味を持てなかった。

    「クーブラ・カーン」は、ある日コールリッジが「パーチャスの旅行記」を読んでる途中でうたたねした夢の中で見た光景、クビライ・ハンが造営した都ザナドゥ(Xanadu)を描写したもので、ボルヘスの「コウルリッジの夢」でこの作品について言及されている。

    「老水夫行」(本書では「古老の舟乗り」)と「クリスタベル」は、どちらもメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』と縁がある。シェリー夫妻とバイロン、ポリドリが集まっておのおの怪談を書き上げたことで有名な「ディオダディ荘」のエピソード、バイロンがその夜朗読したのが「クリスタベル」、結果メアリはフランケンシュタインを書き上げ、その冒頭で「老水夫行」を引用する。

    「老水夫行」は老いた水夫が語る自らの呪われた過去、一種の幽霊船というかさまよえるオランダ人系。神の使いであるアホウドリを射殺した水夫のせいで船は漂流し、他の水夫は皆死んでしまうのだけどゾンビになって蘇ったりしつつ、天使が助けてくれるまで水夫は恐怖体験をし、生き延びた今もその話を語り続けることで償い続けているというもの。

    「クリスタベル」は、貴族の美しい姫君クリスタベルがある晩出会った美しい女性ジェラルダインは実は妖魔、何の目的かクリスタベルの父レオライン男爵にとりいり・・・。おどろおどろしく耽美な設定でとても惹かれるのたけど、実は未完なのが残念。

    略伝を読むと、妻子があるのに妻と同じ名前の女性(どちらもセアラ)と浮気したり(そしてそれを堂々と詩にするわけで)、病気がきっかけとはいえヤク中だし、末っ子キャラで依存心が強くて、現代人的にはそこそこダメンズなコールリッジ。まああの時代の詩人なんてみんなこんなものなのかしら。
     
    ※収録
    <人生詩編>
    人生/ソネット―オッター川に寄せて/ソネット―大学に向けて学舎を去るに際して/家庭の安らぎ/幼子に寄す/子どもっぽいがとても自然な夢/郷愁/宿なし/失意のオード/青春と老年/島流し/墓碑銘
    <政治詩編>
    バスチーユの崩壊/アメリカにパンティソクラシーを建設する見通しについて/ロバの子に寄せて/ひとり寂境にあって抱いた不安
    <恋愛詩編>
    リューティあるいは、チェルケス地方の恋唄/恋/恋の形見/真昼の夢/別離/恋の思い出
    <田園詩編>
    詩章―ブロックリー谷の左斜面を登る/アイオロスの竪琴/このシナノキの木蔭はぼくの牢獄/深夜の霜/小夜啼鳥
    <幻想詩編>
    クーブラ・カーンあるいは夢で見た幻視―断章/古老の舟乗り/クリスタベル第一部

  • 《目次》
    I 〈人生詩編〉
    1. 人生
    2. ソネット――オッター川に寄せて
    3. ソネット――大学に向けて学舎を去るに際して
    4. 家庭の安らぎ
    5. 幼子に寄す
    6. 子どもっぽいがとても自然な夢――ドイツにて
    7. 郷愁――ドイツにて
    8. 宿なし
    9. 失意のオード
    10. 青春と老年
    11. 島流し
    12. 墓碑銘

    II 〈政治詩編〉
    13. バスチーユの崩壊
    14. アメリカにパンティソクラシーを建設する見通しについて
    15. ロバの子に寄せて
    16. ひとり寂境にあって抱いた不安

    III 〈政治詩編〉
    17. リューティ――あるいは、チェルケス地方の恋唄
    18. 恋
    19. 恋の形見
    20. 真昼の夢
    21. 別離
    22. 恋の思い出

    IV 〈田園詩編〉
    23. 詩章――ブロックリー谷の左斜面を登る
    24. アイオロスの竪琴
    25. このシナノキの木陰はぼくの牢獄
    26. 深夜の霜
    27. 小夜啼鳥――会話詩

    V 〈幻想詩編〉
    28. クーブラ・カーンあるいは夢で見た幻想――断章
    29. 古老の舟乗り
    30. クリスタベル 第一部

  • バーティがよく引用する「老水夫行」がいったいどんな詩なのかと思って。
    せっかく船を導いてくれそうだったアホウドリを意味もなく殺しちゃって死骸をくびから十字架のようにかけられて、なんとか生きて帰ってきて、あげくにその体験を結婚のお祝いの場に行こうとしている若いもんをつかまえて語りきかせるなんて!おいおい(笑)と思う。

  • 孤独を恐れる社会的な生き物である彼の悲劇の物語『フランケンシュタイン』を読んだ時から気になっていた、サミュエル・テイラー・コールリッジ『老水夫行』 
    「・・・それはさながら、寂しき道を行く人の恐れ、おののき歩むさま、ひとたび頭を巡らせば、二度と振り向くこともなし。  フランケンシュタインより」 呪いから解放され港へと戻ることができた老水夫と対照的な彼には、名前がなかったね。
    孤独で不安だった彼が船から飛び降りた。あれは、黒い波の彼方へ落ちて行く夢だったね、漱石の第七夜。

  • コールリッジは19世紀イギリスの詩人
    アメリカ・サスケハナに原始共産社会「パンティソクラシー」を実現
    しようとするも挫折し
    その後、アヘン吸引にはまりつつロマン派として名声をなす
    代表作は、アヘンの幻覚を描いたものとして知られる「クーブラ・カーン」など

    ザナドゥに建立されたクーブラ・カーンの壮麗なる歓楽宮は
    多くの戦いと、多くの死者の怨嗟を吸い上げて
    美しい音楽に変える
    そこは生と死を円環としてつなぐ場所である
    それがコールリッジにとっての「世界の終り」だ
    アビシニアの美しい乙女がつまびくダルシマーの音色こそ
    ザナドゥの入り口であると彼は言うが
    現実にその役割を果たすのはアヘン吸引である

    クーブラ(クビライ)・カーンは、ジンギスカンの孫であり
    元の皇帝として、敵・味方問わず多くの人命を奪ってきた
    …暴力の上に築かれる理想
    それをふたたび夢見る者たちのロジックが、のちに多くの悲劇を生む

  • 「クーブラ・カーン」「古老の舟乗り」「クリスタベル」など収録。

  • 「クブラ・カーン」「クリスタベル」「古老の舟乗り」など、幻想詩を漏らさず収録、和訳。

    卒論に古老の舟乗りを組み込みたかったけれど、こりゃあ一大事ですね。
    阿片常用の詩人が描く幻想に憧れて読みはじめましたが、手痛いことになるかもしれません。

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