- Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003224519
作品紹介・あらすじ
美貌の青年ドリアンが人知れず罪を犯してもどった夜、彼の肖像画は奇怪にも口許に残忍な微笑を浮べていた。快楽にふけり醜さを加えてゆく彼の魂そのままに、肖像は次第に醜悪になってゆく。-美貌と若さを保ちつづける肉体の恐ろしい姿に変貌する魂との対比を主題に、ワイルド(1854‐1900)がその人生観・芸術観・道徳観をもりこんだ代表作。
感想・レビュー・書評
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時はきみの百合や薔薇と戦っている
所蔵情報
https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=B17376詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
美しかった。
ヘンリー卿は実に魅力的だ。彼の吐く言葉が毒であったとしても、それは魅惑されずにはおられない美しい毒だ。 -
登場人物は少なく、会話だらけの小説で、読みやすかった。
広がったり、感情的になったり、心の変化が見える誰かの会話を一歩ひいて見れる。読書って、やっぱり面白いなぁ。作者も書いてて楽しかったんじゃないだろうか?
あと、名言集なみに、引用文であろう金言が多い。そんな読み応えのある会話小説。
映画「(500)日のサマー」のヒロインのサマーが、この小説を読んでいる時に出逢った結婚する人。華麗で、哲学的で、奇矯で、無責任で、この数奇な小説がなぜサマーの運命の鍵になったのかをを感じながら読む楽しみ。青春と常識、幻想と現実に揺れて。
そうした官能性が高いぶん、文学的リアリティは欠けていると思われる、でもせっかくなので、この不思議に身を委ね、あちこちに散らばった作品の持つ美学を捕まえようと読んで、楽しかった。 -
登場人物の考えや動機付けが適当で、しっくりこない。
ディティールが適当で、リアリティーが感じられない。
ネタありきで、後は終わらせるためにダラダラ書かれた感じを受ける。
あと、この本の会話部分は洒脱で皮肉な感じだが個人的にどうも好かん。 -
デカダンスを愛する人ならば必読書。
絶世の美青年ドリアン・グレイが次第に退廃生活を始めるが、彼の美貌はいつになっても衰えず、代わりに肖像画に老醜があらわれる・・・という話。
文学を愛する若者ならば一回は夢中になる本じゃないだろうか。
かくいう私もノックダウン。
めくるめく唯美主義的生活が、くらくらするような美文で綴られている。
人間には根源的に、悪に惹かれる要素があるとしか思えない。
美を求める心と同じ強さで。 -
1/7 読了。
『禁色』だー!!! -
以下引用。
とりわけ、作家であり美術批評家であったユイスマンスの『さかさまに』(一八八四)の投じた影は、あまりにも濃いものがあった。なぜなら、ワイルドのこの長編の思想的極限とも称すべき第十一章の、その冒頭に、「数年のあいだ、ドリアン・グレイはこの本の影響から脱することができなかった。いや、おそらくそれから脱しようとつとめなかったといったほうが正確であろう。」とある、「この本」が、『さかさまに』を指すことは、否みがたいところだからである。(解説、p.388~389) -
純真な美貌の青年ドリアンの肖像画は、彼の外面と内面の美しさを反映させ、完璧に仕上がった。ドリアンは描かれた自分の画像がいつまでも変わらない半面、彼自身は醜く老い、純真さを失うであろうことを恐怖し、どうか絵ばかりが変化して実物の自分は美しい見栄えを保てるようにと祈る。いつの間にか青年のその願いは叶っていた。どれほどの悪徳にドリアンが手を染めても、彼の外見はいつまでも穢れを知らない若き日の美貌を保ち、反対に肖像画のドリアン自身はあらゆる悪を身に受けて醜く、老い、下卑た姿になっていく。
良い味出しているなと思うのはヘンリー卿である。ドリアンを本能と官能の道へと誘ったヘンリー卿が諸悪の根源のはずが、別に彼自身はただの傍観者、ドリアンの変化には一切かかわらない人間として、平穏に物語を完走する。
対してドリアンは最後に全ての恐怖から逃れるために良心を殺そうとし、自らに殺されてしまう。この対比には、訳者解説にある、「因果応報めいた陳腐な道徳律の響き」が意図されたものではないはないか、と思わせる。
芸術についての描写は、すんません、難解すぎて分からない。
個人的に大好きなのは、ドリアン自身は一切の芸術を作らなかった。美しいショパンを、空気に流れて消えてしまう形に残らない芸術を、ピアノで弾いただけ、という点である。快楽ばかりを追う自らの人生を芸術にした、というのも、納得の言葉かも。 -
会話の随所に価値観の違いや、ついていけなさを感じるが、そりゃ時代も国も違うわけで。退廃的な雰囲気を楽しむのかもと思いつつ、あまり楽しめなかった。ストーリーは分かりやすく、お芝居みたい。
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某映画を観て大まかな内容は把握しつつ、ずっと手を出してなかった。
主人公の人生よりもその合い間に描かれる美しい描写が魅力的でした。