荒地 (岩波文庫)

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制作 : 岩崎 宗治 
  • 岩波書店 (2010年8月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003225820

荒地 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 『荒地』。T.S.エリオットの詩集です。新しい訳が出たのでさっそく購読しました。

    5部からなる長編の詩ですが、最初の「I. 埋葬」はこんな風に始まります。

    四月は最も残酷な月、リラの花を
    凍土の中から目覚めさせ、記憶と
    欲望をないまぜにし、春の雨で
    生気のない根をふるい立たせる。

    「あれ」、って思いました。僕が慣れ親しんできた「荒地」とはだいぶニュアンスが違います。

    僕が覚えているのはこうです。

    四月は残酷極まる月だ
    リラの花を死んだ土から生み出し
    追憶に欲情をかきまぜたり
    春の雨で鈍重な草根をふるい起こすのだ。

    だいぶ違うでしょう?

    はじめに紹介したのは岩波文庫から8月に出たばかりの岩崎宗治さんの訳です。あとの方は、僕が学生の頃に読んだ西脇順三郎の訳です。

    西脇といえば、僕らが若い頃は「泣く子も黙る」くらい偉い人で(笑)、なんとなく手が届かない感じの人でしたけどね。英文学者である以上に西脇自身が詩人でしたが。

    訳ですから、翻訳者によっていろいろあっていいですけど。僕は、慣れもあるのでしょうが、西脇のシャープなところが好きですね。「残酷極まる月だ」なんて素敵ですよ。

  • 日本戦後詩に多大な影響をエリオットが与えたことは知っていたのだが、この本を読み進めていくうちに戦後詩の「荒地派」は何か決定的な勘違いをしているのではないか、と思った。
    この本は全体の約1/3が詩本編で、残りが訳注・解説などに費やされており、さながら訳者によるエリオット論の体裁になっている。
    その訳者による訳注を読む限り、エリオットの詩は巧妙に仕掛けが施されている難解かつ宗教的な意味合いを持ち、自分が知る範囲での荒地派とは異なるタイプの詩人であると感じたのだ。
    最後まで読み切るとその疑問もしっかり解けた。
    彼ら「荒地派」は荒地の第1部しか読んでいなかった、という何とも切ないオチだった・・・。
    正直このエリオットに関しては、自分の乏しい詩情ではあまり感受することができなかった。
    上述したように詩集としては歪な構成となっており、詩全体の流れよりも訳注ばかりに追われてしまったという部分が大きいと思う(その訳注も途中から読むのが苦痛になってしまった・・・)。
    おそらく何度も読みこみ、また西洋文化への理解を深めないと楽しめないのだろう。
    いや、読みこむほどに分からなくなるかもしれない。
    もっと成熟してから詩本編だけを読むことにしようと思う。

  • 初エリオット。全323頁のうち、207頁を注と解説が占めるほど難解。「四月は最も残酷な月」で始まる『荒地』は言葉の言語性の否定であり、現実拒否と虚無と絶望らしい。唯一理解できたのは『ある婦人の肖像』=ダンディーなエリオットの自伝。詩からダンディー男の低音ボイスが聞こえそう。婚期を逃した感のある女が男にしがみつくが、二人の会話は噛み合わない。女の求愛を受け止めない男は女を心理的に凌辱したことになるか。女が死ねば男は罪を感じるべきか(ピューリタン的発想)。もっと成熟した大人にならないと、子供には分からないや。

  • 有名な翻訳がほかにあるようだが、私はこの翻訳で初めて読んだし、この翻訳がとても気に入っている。「四月は最も残酷な月。」ではじまる『荒地』は詩でありながら物語が進行し、『火の説教』で見られるような現代に通ずる描写をもちながら、どこか古典的である。表現は詩的で美しい。古代詩や戯作を継ぎ合わせた言葉のコラージュは斬新である。もちろん『荒地』以外の作品もどれもが秀逸である。カバーがよれるまで読んだ。

  • 表現が現代的。
    B.スプリングスティーンの歌詞に通じる所がある。
    あるいはチャンドラーか・・

  • とりあえず原文でも読む

  • なんだこれは、というほど散文的
    なのに詩。
    まるでドラマのような、細切れフィルムのような詩。
    これは影響力があるはずだよね。
    詩が得意ではない私でさえ、先へ先へと読みたくなった。

  • 岩波文庫(赤) 080/I
    資料ID 20102004437

  • 若いうちに読んでおいてよかった・・

  • その名も高いエリオット「荒地」といえば、その重要さのため読んでみたいと思いながらも入手できずに、この歳になってしまった。
    ついに文庫で出版されたこの本、実にすばらしい。
    「荒地」以前の詩数編も入っているが、すべてに極めて詳細な訳注と解釈が併収されており、詩を勉強したい人には一番にお薦めしたい一冊といえる。
    コクトーに魅惑され、シュルレアリスムに興奮し、ストラヴィンスキーに到達した私は、実にモダニズムLOVERなのだが、この「荒地」こそは詩の領域におけるモダニズムの結晶なのだ。
    こんにちの「現代詩」の源流はここにあるのだ、と理解した。
    この詩に出会ったのがもっと若い頃であったなら、私の感性や人生は少し変わっていたかもしれない。だがまだ遅くはない。
    この本を読んでいない人は、是非読んでおいた方がいい。

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荒地 (岩波文庫)の作品紹介

「四月は最も残酷な月…」と鮮烈な言葉で始まる『荒地』は、20世紀モダニズム詩の金字塔である。本書には、『プルーフロックその他の観察』から『荒地』までのエリオット(1888‐1965)の主要な詩を収録し、前期の詩作の歩みをたどれるようにした。引用と引喩を駆使し重層性を持った詩を味読できるよう詳細な訳注を付す。

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