白鯨 中 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003230824

作品紹介・あらすじ

"モービィ・ディック"との遭遇を前にして、エイハブ船長ひきいるピークオッド号の航海はつづく。ほかの捕鯨船との"出あい"を織りまぜながら、鯨と捕鯨に関する"百科全書的"な博識が、倦むことなく、衒学的なまでに次から次へと開陳されていく。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻
    https://booklog.jp/item/1/4003230817

    上巻の感想で「中巻では本格的に捕鯨がはじまるかな」とか書きましたが、
    本格的に始まったのは作者メルヴィルによる鯨レポートだった(笑)
    メルヴィル自身が捕鯨船に乗っていたこともあり、物語としても経験が元になっているのですが、それにしても鯨についての語りがこの中巻の半分を占めています。
    そのため”私”という一人称は、ピークオッド号の唯一の生き残りイシュメールでもありしかし作者でもあり、二人が綯い交ぜになっているような感じになっています。

    この鯨語りの目線が多岐に及んでいます。
     鯨の種類、習性といった化学的(当時の)根拠を述べるもの。
     そもそも旧約聖書の時代から現代の捕鯨に至るまで、人間は鯨とどのようにかかわってきてどのように捉えてきたのかを鯨の絵や鯨を使った生活用品や工芸品など、美術や伝承としての論点から語ったもの。
     鯨の体の作りはどうなっているか、どうやって解体するか、鯨の食べ方(スタッブの焼き方拘りとうんざりするコックさんのエピソードがなかなか楽しい)、捕鯨で命を落とすのはどんな場合かなどというような作者メルヴィルの捕鯨船員としての体験からくるもの。
     他の捕鯨船の話として、狂信者に精神的に乗っ取られた船、鯨に沈められた船のエピソードも語られます。

    さて、私はあくまでも読書を”物語”として楽しむ…というか論文としては理解できない…のですが、
    その私がこの鯨レポートを非常に楽しく読めました。
    なにしろ鯨の体のつくりについては「鯨の口の中に入ってみると、右側には○○がありしばらく進むと△△に行きつき…」などと観光ガイドのようで、文学としても非常に楽しい。
    最近は、楽しく読める科学生物本が増えているけれど、この「白鯨」も科学的には素人のはずのメルヴィルが作家として述べている事が実に生物本としても興味深いのです。

    さらに白い鯨は恐れられているけれどそもそも人は゛白゛を怖れてきた歴史があり…、などと文学的考察を熱く語ったりしていて多角的な目線で語られています。
    この小説の原題は「モービィ・ディック」ですが、日本語訳が゛はくげい゛となると語呂も良いし、ただ゛鯨゛というより゛白い鯨゛と言うことで迫力と特殊感が増しますね。
     
    物語の舞台であるピークオッド号の話では、鯨を挙げたり、他の捕鯨船と行き合ったりしながら、エイハブ船長最大の目的である白鯨のモービィ・ディック追跡を続けます。

    上巻序盤でイシュメールが「心の友!」となった気高き野蛮人クイークェグとの親しい関係は相変わらず。鯨を仕留めた後には「捕った鯨の上で解体するクイークェグと、私(イシュメール)は一本のベルトで繋がっていて、彼が海に沈んだりしたら私も命を共にする」とかいう作業をしています。。 

    この後このピークオッド号は沈没の悲劇に向かうはずですが…、いまのところ膨大な鯨薀蓄や鯨考察、多種多様な捕鯨者たちの物語にあまり悲劇性が感じられずただただ思ったより興味深く読みやすい、と感じているところ。(読みやすいからと言って理解しているわけではないかもですが)

    • 淳水堂さん
      アテナイエさん
      コメントありがとうございます!
      題名モービィ・ディックなのになかな会行きつかない〜(笑)

      >図書館から鯨図鑑やら海...
      アテナイエさん
      コメントありがとうございます!
      題名モービィ・ディックなのになかな会行きつかない〜(笑)

      >図書館から鯨図鑑やら海の生き物図鑑を引きずってきて、それを眺めながら鯨レポートを読みました。 
      それはすごい!!
      生物学的に正しいかとかはもういいや、として読みました。
      白い鯨は図鑑にないんですね。モービィ・ディックは特別変異かな。

      >しまいには大笑いしながら、メルヴィル~あなたがそうでるなら……
      メルヴィルと飲み会したら、一人で鯨語りを続けてるんだろうか、とか思いました(笑)

      2019/08/01
    • アテナイエさん
      メルヴィルと飲み会は楽しそう。間違いなく酔う前から鯨の一人語りをしていそう(誰が聞くの? もちろん淳水堂さん)。真剣に見たわけではなく、イメ...
      メルヴィルと飲み会は楽しそう。間違いなく酔う前から鯨の一人語りをしていそう(誰が聞くの? もちろん淳水堂さん)。真剣に見たわけではなく、イメージ喚起のため鯨図鑑をちらりと眺めてみると、鯨の種類は意外と多いし、潮の吹き方やら、食べ物やら生態もなかなか興味深いし、なんといってもプールほどありそうな大きさに圧倒されますね。もしこれが真っ白だと……たぶん怖い。まるまる太った一反以上木綿?
      さすがのメルヴィルも独り語りに飽きてきて、プロット修正へ。シェイクスピア悲劇さながらのクライマックスへと舵を切りだしますよ~。私も読みたくなってきたました(^^♪
      2019/08/01
    • 淳水堂さん
      アテナイエさん
      メルヴィルの時代の鯨認識がみえて面白いですよね。
      イルカはクジラだ!クジラは魚だ!クジラは食う!みたいな。
      イルカとク...
      アテナイエさん
      メルヴィルの時代の鯨認識がみえて面白いですよね。
      イルカはクジラだ!クジラは魚だ!クジラは食う!みたいな。
      イルカとクジラは現代では別物扱いですが生物学的には同じですよね、これはメルヴィルのほうが正しいんだろうなあ。
      メルヴィルが現代の、クジラとイルカは別物!食べちゃダメ!魚ではない!を聞いたらどう言うんだろう(笑)。

      メルヴィルでは「代書人バートルビー」を読んだことがあり、人間の暗い面を書く作家と思っていましたが、怒涛な鯨語りに、案外面白い人じゃないかと思いました。
      メルヴィルによる博物館解説ツアーなんてあったら参加してみたかったなあ。骨の前で一時間くらい語りそう(笑)


      2019/08/01
  • これはやはり現代人が思い浮かべる「小説」ではないな。
    小説でもあり、詩でもあり、ルポタージュでもあり、哲学書でもあり、、、
    様々な知識・教養を背景に圧倒してくる、こちらのあまりの教養の無さに怯えてる始末というのが本当のところ。
    なお上巻でもそうだったが、挿絵もなかなかgood。

  • これほど壮大なスケールを舞台に描かれた小説を私は他に知らない。北米の港を旅立ち北大西洋をゆき、南米大陸南端をかすめてアフリカ大陸の希望峰を越えてさらに東へ、インド洋から(おそらくマラッカ海峡を抜けて)南シナ海へ、そして太平洋に至る。
    単に航海の途が壮大なだけではない。広大無辺な空と海の広がりが描かれ、雄大なのである。のみならず、壮大で力強い自然のありようから、創造者の存在を感じ、詩的な言葉でその思いを語る場面もある。観念的なスケールも大きいのである。
    同じ時代に書かれた小説であっても、欧州の貴族社会のドメスティックな狭い舞台だけで終始するものもあり、そういう狭苦しさに飽きてきたとき、この「白鯨」のスケール感は圧倒的である。

    また「 捕鯨船という海に浮かぶ無法者のとりで 」という表現がある(50章/110p)。捕鯨船ピークオッド号には、人種も宗教も出自も多様な有象無象な男どもが集う。その点、オカの上の物語よりずっと彩り豊かなのである。

    ところで、邪道と思うのだが、斯様な読み方で「白鯨」通読に臨んだ。
    ストーリーテリングを担う本筋の「物語」章と、鯨学を記述する「博物学」章。全135章余を斯様に二大別し、先に上中下3巻の「博物学の章」を全て通読し、その後で上巻から「物語の章」を一気に読み通す、という方法である。
    果たしてこの読み方が奏功するかは不明である。上巻の「博物学の章」の多くは唐突に挿入される感が強い。だが中巻くらいから、物語の出来事に関連した背景知識として「博物学の章」が織り込まれるような展開もある。例えば64章「 スタッブの夜食 」で二等航海士スタッブが鯨肉ステーキを食う場面があり、続く65章で「 美食としての鯨肉」なる蘊蓄が補足されるという按配。そういうカットバックのような構成の妙も多少出てくる。その点「物語の章」まとめ読み作戦のデメリットを感じないでもない。この点は全巻通読後に考えることにする。

    ただし、と言及しておかねばならないのだが、その「博物学の章」が全て退屈なのではない。例えば、捕鯨船の甲板で行われる、鯨の解体作業の段取りや技法、釜を使って鯨の部位を加工するノウハウ、さらには大工仕事や鍛冶屋の仕事内容まで詳述されていて興味深い。19世紀前半頃の、家内制手工業的な技術の到達点がわかって面白いのだ。

  • 語り手は鯨を魚に分類していたが、彼の詳細な記述からは、かえって鯨は哺乳類なんだなと思えてしまって面白い。

    捕鯨の仕組み、特にボートでの危険な綱の操り方に迫力があり興味津々で読んだ。

    鯨をあげ、脳油を採ると、鯨についての説明がまた細々なされるが、後半の流れが美しく意外にも感動的。

    マッコウ鯨の尾びれの雄大さにホゥとなりながら、鯨の大艦隊の章へ。そこに見る神秘。とても巧みで感心した。

    鯨と同じくらい神秘に感じるのがクイークェグ。俗な乗組みたちとは異質な魅力の持ち主で、物語中で最も好意的に描かれている気もする。

  • 「ボク、もーびーディックだよ」と人の言葉を喋るファンタジーではないんだな。

    メルヴィルさんに「くじらクン」と冠して栄誉を。

    捕鯨に関して興味はなく、仕留めの残酷な場面に痛み、苦しみをもって読んだが、あんなにデカい生き物を人間が海の上でほぼ丸腰で銛とか刃物とか綱とかいう人が操らなければ動かない道具で原始的に、かつ身体能力の高さをもってして仕留めていたという当たり前に気づきびっくり仰天です。

    子供のころの住まいの場所柄か、クジラ肉はけっこうな頻度で食卓に上った(年がばれ)けれど、今は貴重品でしょうか。本文中に鯨肉を食べるのは珍しい行為のように書かれていたが、滋養強壮にいいはずです。マッコウクジラの油はいい香りがするのだそうです。
    捕鯨にも熊送りみたい儀式があるといいのに。

    白鯨の登場はない。このまま出てこなくても良いような気に。本文の挿絵にちょんまげの日本人風なのが出てきたり、ヒンドゥー教への言及があったり、あれ、すんごい遠くの海で繰り広げられる鯨との格闘と思いきや、こちらからしてみると案外ご近所の話で妙な気分になるのだが。

    それにしても章の最後の詠嘆的な節回しがなんともいえず、マントラを唱える如く溢れんばかりの文章が読み手の心を上げてくれるわー。

    • sugikaeruさん
      鎖国中の日本が出て来て、捕鯨産業が日本を開港させるという予言をメルヴィルは的中させていますね。子供の頃、アメリカは日本近海の鯨を取りつくして...
      鎖国中の日本が出て来て、捕鯨産業が日本を開港させるという予言をメルヴィルは的中させていますね。子供の頃、アメリカは日本近海の鯨を取りつくして油だけ取って後は捨てていたので鯨がいなくなったと聞かされました。確かに鯨を捕獲するだけではなく、半殺しにして逃げられたり、死体が海中に沈んでしまったりするのが結構いてこれじゃいなくなるよなーと読んでて気が滅入りました。捕鯨産業ってこれで採算が取れるのか疑問です。
      わたしは今でも時々鯨を食べます。先週ミンククジラの刺身と鯨ベーコンをスーパーで買って食べましたけど美味しかったです。刺身で食べるのなら髭鯨ですね。
      2020/07/30
    • くろねこ・ぷぅさん
      そこ、私もなるほどなぁ!と思いました。
      アメリカからすると日本近海は辺境というか野蛮人の住む未開の地(海)なんでしょうけど、私たちからする...
      そこ、私もなるほどなぁ!と思いました。
      アメリカからすると日本近海は辺境というか野蛮人の住む未開の地(海)なんでしょうけど、私たちからするとご近所なので、いや、そんな獲り放題、ダメでしょ。と思いますよね。

      グリーンピースから責められますが、日本の捕鯨はアメリカのものとは違いますよね。
      そもそも北米の人々は(欧はどうなんでしょうか)食べ物をどっさり残しても気に留めないですよね。韓国とかは残すほど料理を出すのが礼儀のようですし。もったいない感覚はないんでしょうか。

      ニューヨークにいる妹は恐ろしいことに友人知人いろんな人に、タクシーに乗ってもクジラ肉は旨いとか自己主張をしております。ほんとに空恐ろしいです。
      刺身で食べるなら髭鯨と心にとめて下巻に進みます。よろしくお願いします~。
      2020/08/04
    • くろねこ・ぷぅさん
      追伸;
      メルヴィルの鯨愛に影響されてこの⇒時計を買ってしまいました。
      尾羽の動きが鯨熱に浮かされた心をくすぐります(笑)。

      htt...
      追伸;
      メルヴィルの鯨愛に影響されてこの⇒時計を買ってしまいました。
      尾羽の動きが鯨熱に浮かされた心をくすぐります(笑)。

      https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=NbaLWqLsduQ&feature=emb_logo
      2020/08/04
  • 中巻、中々、物語が進まない。洋上である上に、作者が書きたいことを全て書かないと気が済まないくらい饒舌で、もはや訳者の方には脱帽です。すごい、よくここまで語彙を駆使して訳して下さった、と頭が下がる。その語りがいっそ気持ちいいハイテンションで高らかに捕鯨という特殊業を多角的視点から鑑み讃えられています。

  • 中巻ではいよいよ捕鯨が始まる。どのようにクジラを追いかけ、攻撃し、弱らせるのかや、ついに息絶えたクジラをどのようにバラし、油を取るかなど、詳しい説明があって興味深かった。クジラについての様々な説明や、捕鯨や船に関するもろもろの補足は純粋な物語を求めている人には読みにくい部分もある。でも以前読んだユゴーの『レ・ミゼラブル』も途中でパリの下水道の説明が長々と挟まってたりしたし、そういうのも含めて一つの作品となっているから、読み飛ばしてしまうのはもったいないと思う。
    クジラについて語るのはイシュメールなのかメルヴィルなのか。クジラの口の中を「美しく清楚な感じ」と表現する。本気か?と疑いたくなるが、とにかく惚れこみ方が半端じゃない。
    この巻で好きなのは「64章スタッブの夜食」。コックさんにクジラのステーキを焼いてもらうが、焼き過ぎだとケチをつけるスタッブ。でもなんだかんだ言いつつ食べる。そして船に横付けされたクジラの死肉に群がるサメにお説教をするコックさん。この二人のやり取りがおかしい。スタッブは船員たちの中でもいいキャラしている。
    ただ、この作品において一番キャラが立っているのはエイハブでもスタッブでもなく、メルヴィルだと私は思う。

    • 淳水堂さん
      こんにちは!
      中巻まで登録しました。
      マヤさんの感想、サメに説教、キャラな立つメルヴィルなど、
      その通り!って思いました(笑)
      こんにちは!
      中巻まで登録しました。
      マヤさんの感想、サメに説教、キャラな立つメルヴィルなど、
      その通り!って思いました(笑)
      2019/07/29
  • あれ?イシュメ-ルは?(笑)ついに語り手が誰なのか不明なる。それ以前にプロット完全崩壊。小説か鯨百科なのか何なのか謎の本に(笑)
    語り口と壊れ方がオモロ過ぎ、チョット何言ってるかわけわからんと思ってたら突如「読者諸君!」と話しかけられビビる。ちょうど聞いてへん時に「ちょっと人の話し聞いてる?」って言われ焦る時のアレ(笑)でも「白」の章はトリハダだった。
    フリ-ダムな鯨ヲタ本と化し、いよいよ賛否が別れるだろう中巻。
    モ-ビ-ディックも未だ現れずとも、私も海の上、メルヴィルの詩う鯨の尾にことほぐ。

  • 上巻のはじまりで、“財布がほとんど底をつき、陸にはかくべつ興味をひくものもなかったので、ちょっとばかり船に乗って水の世界を見物してこようかと思った” と、まるで『第一阿房列車』の百けん先生のような気軽さでのびのび航海に出かけた主人公が、今巻中盤、危険な場所での鯨解体を行う友人の命綱役(片方が落ちたら綱で引っ張られて一緒に死ぬ)にいつの間にかされているにあたり、

    “自分の置かれた立場を冷静かつ形而上学的に考察した結果(…)わたし個人としての存在はいまやひとつの共同出資会社といった性質に吸収還元されている”

    と、「よく考えたらこの会社ブラックだ」的な感想を抱きはじめたのにちょっと笑ってしまった。人間がちまちまと動きまわり体液を浴びながら巨大な生物の解体を粛々と進める様子は異世界すぎてSFちっくですらあります。頭を落とす場面がかっこいい。


    “ところで、読者諸氏よ、諸君自身は、「はなれ鯨」にして「しとめ鯨」でなくて何でありましょうか?”

  • 『白鯨』新訳版、その中巻です。

    上巻はイシュメールが船出するまでを描いて「物語」然としたところがありましたが、中巻はだいぶ趣が異なります。捕鯨船での日々、マッコウクジラとの死闘、そして鯨にまつわる衒学的・百科全書的な語りと、まさに鯨尽くし。特に第八十七章「無敵艦隊」は、鯨のユートピアとでも言うべき光景を描いていっそ幻想的ですらあります。

    イシュメールの語りが「イシュメール自身」から「全知全能の第三者」まで自在に行き来するのも面白いところ。一人称から三人称への振り幅が大きく視点がころころ変わります。最初は読み辛いと感じるかもしれませんが、慣れてくるとこれがまた楽しい。イシュメールの視点と神の視点へ、また神の視点からイシュメールの視点へと行ったり来たりを繰り返すことで、捕鯨船ピークオッドの様相が立体的に浮かび上がってきます。

    狂える船長エイハブ、高貴なる野蛮人クィークエグら、登場人物の魅力も相変わらず。特に、楽天家の航海士スタッブは諧謔においても捕鯨においても中巻の主役ともいえる活躍を見せてくれます。軽口を叩きながら離れ業をやってのけるスタッブの姿は必読かと。

    上巻に引き続き、お勧めします。

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著者プロフィール

1819年-1891年。ニューヨークに生まれる。13歳の時に父親を亡くして学校を辞め、様々な職を経験。22歳の時に捕鯨船に乗り、4年ほど海を放浪。その間、マルケサス諸島でタイピー族に捕らわれるなど、その後の作品に影響を及ぼす体験をする。27歳で処女作『タイピー』を発表。以降、精力的に作品を発表するものの、生存中には評価を受けず、ニューヨークの税関で職を得ていた。享年72歳。生誕100年を期して再評価されるようになり、遺作『ビリー・バッド』を含む『メルヴィル著作集全16巻』が刊行され、アメリカ文学の巨匠として知られる存在となった。

「2012年 『タイピー 南海の愛すべき食人族たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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