- Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003231135
感想・レビュー・書評
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人間とは外部から与えられる様々な力によってのみ動かされる、機械と変わりない存在だという内容。
話の運びが巧く、こちらの抱いた疑問が青年の口から次々と飛び出すので最後まで関心を持って読めた。
終盤に出てきた不幸になる人と幸福になる人の話からは著者の人生に対する諦観のようなものを感じた。
この本の内容を楽観的に受け取るか悲観的に受け取るかは読者自身に委ねられていて、その受け取り方こそが幸せになる素質の有無なのだと思った。
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ニーチェの悲観主義とは比べ物にならないぐらいの悲観論です。人間は自分を安心させたい、自らが満足感を得たいという衝動しか持ち得ないといいます。例えば人の手助けだって、結局は自分の満足感に過ぎないかあるいは良心に対する苦痛の回避というものでしかなく、ある意味で苦痛の回避を買った結果にすぎないのだと。恐るべき悲観論。1度読めば、神経毒のように体を蝕んでいくような気な感覚を味わいます。こんな感覚はニーチェ以来です。人間は自己是認を得たいという衝動しかない。こんな思想のどこに救いがあるのでしょう
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マーク=トウェインの人間観・思想が色濃く表れた、エッセイのようなもの。老人と青年の対話に仮託して描かれる。1906年に書かれたという。
構造主義の先駆的な文学ととらえると、非常にすっきりと頭に入ってくる。そういった知識がわずかでもあればけっこう楽しめる。
構造主義の限界や矛盾が指摘されている今日では、この文章もところどころ論理的に誤りがないとは言えない。ただ、当時の著者の逼迫した精神状態を伝えるには十分なほどの、ギリギリの状態というか、筆の力を感じるのも事実。
だからロジック的には一種の頭の体操のような、パズルに近い感覚。でもその心理的背景を真に受けると割と鬱。
ただ、僕は人間を機械とこき下ろすような、一見冷徹な文章の裏に、筆者のある種素直な人間愛というか、皮肉の裏返しというか、生への肯定というか…そんなものも見てとれたような気がする。
「ようするに、気質がすべてだ」という主張は、所詮気質で決まってしまう、そのあきらめにも近いゼロ値を設定することで、ならそっからどうなるかなんて環境と、運任せだ。どうにでもなれ、気楽に行こうじゃあないか・・・(気楽というのも筆者にしてみれば気質の一つかもしれないが)。
そんな意味で、読了後は暗いよりはむしろすがすがしい気分。
最後の老人の〆の台詞もまさにそうだと言える。 -
おもしろかった。当時としては発刊できないほどショッキングな内容だったのだろうか。人間=機械のグルジェフの思想と重なり合う部分が多く、グルジェフがテキストとして使用したのも頷ける。同時代に同じように思考した人が存在するということだけでも驚きです。
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人間は機械と同じだ
「何人のどんな行為にしても、すべてそれらは外的力によって生まれるものだ」と。
という、人間に対しての悲観論ともいうべき見解を、論理だて、比較しながら述べてゆく。
青年との対話形式になっており、
とても面白くスムーズにも読める。
ここまで言われると、はっきり言ってその通りだ、とも思えてしまうから怖い。
信条と気質の対比も興味深い。 -
そりゃ尊敬はするよ、帽子を取って敬意も払うさ、なに、ただ習慣と教育の結果だけでね。