アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003232361

作品紹介・あらすじ

九月の午後、藤の咲き匂う古家で、老女が語り出す半世紀前の一族の悲劇。一八三三年ミシシッピに忽然と現れ、無一物から農場主にのし上がったサトペンとその一族はなぜ非業の死に滅びたのか?南部の男たちの血と南部の女たちの涙が綴る一大叙事詩。

感想・レビュー・書評

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  • まだ上巻の半ばだが、とても面白い。しかもなんで面白いのかよくわからない。訳文がいいのか。

    ポー、ラブクラフトを連想する。あとシャーロック・ホームズの長編の後半とか。あるいはドストエフスキーか。これは怪奇小説とミステリーに属する小説だと思う。ノーベル賞とか考えずに、高尚な小説とは思わないで、楽しめる小説だと思う。

  • 解説より「アブサロムは、イスラエルの王ダヴィデの三男で父親に最も愛されたが、妹タマルを陵辱し捨てた異母兄弟のアムノンを殺害し逃亡する。」
    割とそのまんまだね。

  • 感想は下巻に。

  • 母親のヨクナパトーファ・サーガがきっかけ
    (英文卒英語教師)

    父親も妹も読書家ってすごい一家だな。。

  • ■本書を選んだきっかけ
    ・福永武彦氏の「風土」を、読みかけにしてしまっているが、その巻末で、池澤夏樹氏が「風土」に関連して、フォークナーとヴァージニア・ウルフに言及していたので、本書を手に取った。
    ・しかし実際には、池澤氏が言っていたのはフォークナーの「響きと怒り」であり、本書ではなかった。

    ■上巻までの感想
    ・率直に言って、読むのが苦痛ですらあったというのが正直なところ。→下巻でそれは覆るけれど
    ・本書は、ある一族の発生から終焉までを描いている小説である。1861年から65年ごろまでのアメリカ南北戦争が大きな要素になっており、その前後で物語が動いていくが、小説の中での「現在」は1910年ごろであり、戦争終結からかなりの年月が経った後である。つまり、出来事を同時代的に(時間をおって)記述していくのではなく、過去に起こったものとして、現在に生きている登場人物たちの口を借りて物語っていく形式である。
    ・もちろん、そのような小説の表現の手法(過去の出来事を思い出して物語っていくこと)自体は珍しいものではないが、本書の場合、その語りの手法が独特かつ複雑であり、また最大の魅力ではないかと思う。この点が本書の感想の核心になるので詳細は後述するが、上巻を読み始めた時点では、それぞれの語り手が話す内容が、かなり断片的であり、時系列もそれほど整理されていないような印象を受け、さらには、語り手が知り得ない内容は当然、話されることはないし、もしくは故意に語られていないのではないかという内容すらある(ローザが侮辱を受けたとする内容の詳細など)。
    ・またその一方で、読者の私からするとそれほど重要性を感じない、細部と思われるような箇所がかなり紙片を割いて説明されているような印象も受けた。そもそも、本書の全体を通して、語り手が全ての出来事や過去に生きていた物語の登場人物たちの心情などを全てその場で見聞きしていたとは限らないのに、何かこう得々として語っているような語り口なのである。本書はサトペンという男の築いた財産と、広大な屋敷と、何人もの息子・娘をめぐる物語だが、例えば上巻では、主要な語り手の一人はミスター・コンプソンであり、それは彼の父が、そのサトペンと友人の間柄であり、父から伝え聞いた話をさらにその息子に聞かせている、という舞台設定である。だからミスター・コンプソンの父がいくらサトペンと親しくても、起こったことの全てを見聞きできているわけではないし、しかもそれにもかかわらず、彼は語りの中で、それぞれの「登場人物」がどんな感情で、どんな動機からどのような行動をとったのかまで(推測と前置きしていることもあるが)言及することがある。そのように、推測や断片的な伝聞に基づいて話している割には、それぞれの人物の行動の背景にまで入り込んで話そうとしているから、かえって実態を分かりにくくしているようで、それが上巻の読みにくさの要因であると思われる。
    ・過去に何があったのか分かりそうでつかみきれない、そうした「語り」はこれが推理小説であれば話を面白くさせることにもなりそうだが、本書の上巻の時点では、続きが気になって仕方がないという風にも感じなかった。

  • 老女ミス・ローザが語り出す半世紀前に起きたサトペン一族の悲劇。
    まるでギリシア悲劇を読んでいるかのよう。

    父やミス・ローザの語りのなかで浮かび上がるトマス・サトペンの悪魔的な像が、読む者を否応なく魅了する。

    息継ぎまでの長い、時に混濁したようなセンテンスは中毒性が多いにあり!!

    さて、続きが気になる。

  • 『響きと怒り』といい、意識の流れ描写がすごい好き。いろいろごっちゃごちゃで正直わけわかんないけど、だからこそ間にある一言が刺さるというか。
    『響きと怒り』と同じく妹が中心かと思いきやまさかの“虚ろないれもの”。理想化するってことは、生身の人間を無視するのに等しいんだなあ。でもだからこそ危うくって美しいんだよね、ボンとヘンリーの関係性が好き。

  • 突然まちに現れたサトペンについて、ミス・ローザがクエンティンに語ること。それについて父が補完すること。お祖父さんがサトペンの最初の友人だったことで、この物語は始まる。
    しかしその複雑な語りの真相が掴めない、一体この物語はなんなのか。
    サトペンの息子、ヘンリーが大学で知り合った友人のボンを妹ジュディスの結婚相手として連れてきた辺りで物語は急変を見せる。恋愛にも似たヘンリー、ジュディス、ボンの奇妙な近すぎる関係は一体‥‥? しかし、その間に展開するサトペンとその妻エレン、姪のミス・ローザとのやはり奇妙な関係も歪で不思議で目が離せず、難解ながらも不思議と読み進めてしまう魅力のある本。
    響きと怒りを読み終わった後だったため、語り手が前作で自殺したクエンティン君なのがなかなか出だし混乱した。ヨクナパトーファ・サーガ、重厚である。

  • 八月の光、響と怒りも読んだ上で、個人的には一番おすすめ。人間の思想や感情や意識そのものをセンセーショナルに描けるのがフォークナーの凄まじいところだと思う

  • うわー、面白い。難しい。サトペン一族の興亡を描くことで、南部アメリカの歴史を描く。何層にも積み重ねられた言説から、サトペンたちの姿が浮かび上がる。こういうの読んじゃうと、小説ってやめられなくなるよなあ。もっと若い時にもっと読んでおくべきだったな。

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著者プロフィール

一八九七年アメリカ合衆国ミシシッピー州生まれ。第一次大戦で英国空軍に参加し、除隊後ミシシッピー大学に入学するが退学。職業を転々とする。地方紙への寄稿から小説を書きはじめ、『響きと怒り』(一九二九年)以降、『サンクチュアリ』『八月の光』などの問題作を発表。米国を代表する作家の一人となる。五〇年にノーベル文学賞を受賞。一九六二年死去。

「2022年 『エミリーに薔薇を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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