親和力 (岩波文庫 赤 406-8)

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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003240687

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  • 文豪による丹念な長編小説として向き合うこともできそうな一方で、老人の長話に付き合わされているような(特に第二部)疲労感も否定できない。

    60歳のゲーテが、書店の18歳の娘にバチ恋しそうになり、あやうく理性を保ちつつ夢想を小説にぶつけたのが「親和力」であるという成り立ちを知るにつけ、ファンキーだねと見るか、得るべきところのない逸話と見るか。

    人間関係を、元素の結合力である「親和力」になぞらえて、物理的法則性の中でとらえようとするところが面白くもあり、納得感に乏しくもあり。

    総じて、なんとも言いようがなかった一冊。

  • 前半は心の動きにスピード感があっておもしろい。そして後半、これはたしかにあの『ウェルテル』の作者が持っていた愛とかそういうのだ、懐かしい。

  • あらすじでは単なるシェイスピア的悲劇だが単なる悲劇には留まらないと思う。グレートヒュンのように、オッティリエは聖女となり病めるもの、貧しいものに癒やしと愛をあたえたから。その大いなる愛に包まれてエドアルトは安らかに死んでいく。ウェルテルのように絶望し救いもなく自殺するのとはちがう。微笑みながらやさしく見守るかのようなゲーテの眼差しは温かい。

    極端な性格の登場人物たちはドストエフスキー的。元素同士が引きつけ合い、結合する「親和力」を人間関係に当てはめたがら二組の元素をより攪拌するためだろう。グーツヘルシャフトと農奴制というロシアとの類似、墓や死者についての日本とは異なる感覚、庭園造りにおけるキリスト教的感覚など文化的な面でも興味深かった。名画をそのまま舞台上に再現する活人画は観てみたい。

    最後に男性原理が女性原理によって救われるという構造はファウストと同じである。教養主義小説的に成長するのはオッティリエだが。自分の恋心を作品に投影しているので第一部の4人、建築家がそれぞれゲーテの分身なのだろう。

  •  ゲーテ晩年の代表作。とある貴族夫婦がそれぞれに寄食者男女に恋をしてしまい、夫婦の仲を引き裂かれるというもの。岩波のこれしかハンディな訳文がないため購入したけど、実吉先生の古い訳文はとにかく読みづらい。ひらがなを多用するのは翻訳者の個性かも知れないが、漢字が少ないと拾い読みができないから苦労した。
     エドアルドと少女オッティリエにゲーテとミナ・ヘルツリープの関係が当てはまるのは言わずもがなだが、添い遂げられなかった女を小説の中に埋め込んで、しかも悲劇的ラストと救済に導いているのは、作家だけに許された特権なのかもしれない。一途でちょっと幼稚な中年男エドアルドと、聡明でありながら恋に暴走するオッティリエが、後半になって不幸なすれ違いを繰り返しつつお互いの募る気持ちを高めていくフェイズは、この作品最大のハイライトで、読む手が止まらない。
     それにしても現実のゲーテは、60歳でティーンに本気で惚れたというのがスゴイ。ピカソ然り、イーストウッド(流石にティーンじゃないけど)然り、大芸術家は多情でなければならないという法則でもあるのか? 色ボケ老人の短慮ではなく、恋愛とは、結婚とは何かを考えさせる好著。

  •  ゲーテの小説はウェルテル以来読んだが、あとがきを読んでゲーテの長編小説はウェルテル、親和力、ウィルヘルム・マイステルぐらいしか無いと知った。これからもまだゲーテの著作を読んでいこうと思う。
     ところでこの親和力は化学の用語とその現象からヒントを得て書かれた小説で、本文中にも親和力の説明とその実験が現れる。このような手法は面白く化学的にも惹かれたが、そのような化学的な面が後半は薄らいでいったのは、オッティリエが中心になって話が進んでいく方向になったからだと思われるが、化学的な所を期待したのは裏切られた。しかし情熱的に邁進していったエドアルトとオッティリエの破滅が妙に美しいのは寂しかった。シャルロッテはその時客観的になったわけだが、妙に中心に位置していて大きな苦痛を背負っていたように見える所もまた寂しかった。

  • やっと読了。ひとつ抜けていそうな人たちばかり。やたらひらがなの多い訳は好き。

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