車輪の下 (岩波文庫 赤 435-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003243527

感想・レビュー・書評

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  • ヘルマン・ヘッセの代表作で、世界的名作文学作品。
    あまりにも切ない青春小説だった。とにかく、情景描写が美しく様々な場面が映像として目に浮かぶ。
    天才少年であるがゆえの孤独や挫折が描かれており、現代の社会に置きかえてもそのまま通じる内容。
    少年の繊細な精神や、寄宿学校で描かれる恋愛にも似た友情や、初恋の切ない思い出など、世代を超えた青春の苦悩がみずみずしくも、切ない文書で描かれている傑作でした。

  •  1905年発表、ヘルマン・ヘッセ著。秀才ハンスは試験に合格し、神学校に入学するが、友人の影響で徐々に成績が悪くなっていく。そして友人が放校になったことをきっかけに精神を病み、実家に戻る。彼は機械工となり人生を再開しようとするが、酒に酔って川に転落してしまう。
     ヘッセの自伝的小説らしいが、なるほど確かに田舎の描写が綺麗で、ヘッセが幼少の頃に見た風景が目に浮かんでくるような気がした。
     そしてストーリーは非常に身につまされるものだった。充分、現代にも置き換えられる気がする。例えば、必死に勉強してそれなりの大学に入ったにもかかわらず、自分を見失い、ろくに就職も決まらず精神を病んでいく若者(といっても、ハンスはもっと年齢が若いが)。この小説には、まさにそういう若者特有のナイーブさが描かれている。最後の展開は事故なのか自殺なのかよく分からないが、どちらにせよ、ハンスの心は限界だったのだろう。
     あまりにも敏感な精神を持っていると、ハンスのようになってしまうのだろう。それが良いとか悪いとかいう問題ではない。ただ、思うに、ハンスは閉じた世界でこそまともに生きることのできた人間なのではないだろうか。開いた世界に接していると、どこかしらで様々な他人の影響を受けるはずだ。そこで壊れるかどうかが、大きな境目である。ヘッセ自身もきっと壊れてしまったのだろうが、彼はそれを芸術に昇華できた。一方、ハンスはどん詰まりに行き着いてしまった。

  • 小学生の頃に読んだ本。
    ちょうど学級崩壊が叫ばれていた中、自分の学校生活と
    照らし合わせながら読んだ。

    秀才も、秀才ではない凡人も、何かの歯車がきっかけで、
    人生が思いもよらない方向に回り始めることへの不安と
    恐れを抱いた覚えがある。

    名作。

  • 初めて読んだ。。。
    とりあえず、10代のときに読まなくてよかった。いまだから離れた世代として読めるけど、主人公と同年代として読んでたら良くも悪くも考えることが多すぎる。
    本編とは関係ないけど、平成の世の中に出版される本ではみられない表現が多くて、ひそかにしみじみ。これだけ現代、差別(の可能性があると出版界がとらえる)単語が増えたんだな、と。

  • 中学の時に友人からもらって読んだ作品。全然知識もなかったし興味もなかったが、そういう出会いは今にして思えばありがたいものだった。

  • 少年の青春期の苦悩。作者の人生ともリンクしているらしい。関係ないが、60年前の戦没学生の日記にこの本の名前を見つけ、時代を越えて同じ本を読むことの不思議を感じた。

  • 20世紀前半のドイツの詩人・小説家ヘルマンヘッセ(1877-1962)の自伝的小説、1905年。

    「若さ」という生牡蠣のように傷つきやすく鋭敏な感受性は、或る覚醒を契機に、「社会」という即物性・散文性に対して美的であることを、「社会」の規矩に対して自由であることを、その純粋さゆえに自己を滅ぼしかねないほどの極端な徹底さで以て、希求する。この潔癖にして感じやすい内面の直接的な純粋性は、「社会」という媒介的俗物性とは、本質的に相容れない。そして、この老獪な「社会」にあっては、そうした純粋性への志向それ自体が、恰も罪であるかの如く"矯正"の対象とされてしまう、純粋性のあらゆる疾走が禁じられてしまう。なぜなら、それは、「社会」の「社会」性、"中庸"と詐称されるその欺瞞的安寧を、紊乱しかねない不穏さを帯びたものであるから。よって、「若さ」という感受性は、「学校」という装置に於いて施される"特殊な訓練"を通して、美的志向に羈絆がつながれ、対「社会」向けに馴致されてしまう。純粋さとは、それ自体、反「社会」的だ。純粋さと折り合いをつけ得ない者は、「社会」の即物的暴力性を、まるで罰として、剥き出しの痛覚で以て受け止めねばならない。「社会」とは、即物的な生を――何事とも冷笑的に両立可能であるような中途半端な生を――強要する、暴力だ。現代、その暴力性は、20世紀初頭の比ではないだろう。

    少年は、「学校」と「homosociality」に組み込まれることで、「男性性」が心身に刻み込まれた「社会」人となる。

    一切奇を衒うことのない文体と物語は、その全編がハンスの内面そのもののようだ。

    「偉大な英雄的行為はできるが、日常の退屈な、こまかしい仕事はできない、という気持ちだったのである。そういうわけで、かれは再三再四、絶望的なためいきをつきながら、自分自身をかせのなかへはめこんだ」

    「そしてまたただひとりとして、学校と父親や二三の教師たちの、やばんな名誉心とが、このきずつきやすい人間を、こんなことにしてしまったのだ、ということを、ゆめにも考えなかった」

    「・・・、かれはみじめなきもちになった。あれだけの苦労と勤勉と汗、あれだけの投げすてられたささやかなたのしみ、あれだけの自尊心と名誉欲と、あかるい望みにみちた夢想――すべてはむなしかった。すべてはただ、今あらゆる仲間よりおくれて、みんなに冷笑されながら、最小の見習い小僧として、製作所へゆくことができるため――そのためのものだったのである」

  • Nobel Prize.诺贝尔文学。天才少年は天才のまま育たない。弱い心では車輪の下に挟まれる。才能を持った少年が環境と心の変化に苦悩する様がよこ描写されている。百年以上前のノーベル文学賞作家の作品でした。

  • いわずと知れた名作。
    思春期のひりひりとしたあの感覚が、伝わってくる。

  • 枠の中で、限りなく自由であることを追求したい。それが、うまくいきることなのかもしれない。

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著者プロフィール

ドイツ生まれのスイスの作家。主に詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する文学者。南ドイツの風物のなかで、穏やかな人間の生き方を描いた作品が多い。また、風景や蝶々などの水彩画もよくしたため、自身の絵を添えた詩文集も刊行している。1946年に『ガラス玉演戯』などの作品が評価され、ノーベル文学賞を受賞した。

「2022年 『無伴奏男声合唱組曲 蒼穹の星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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