ペロー童話集(完訳) (岩波文庫 赤 513-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003251317

作品紹介・あらすじ

ペロー(1628‐1703)の『童話集』は、民間伝承に材を得た物語集のうちでも最も古いものといってよい。よく知られた「眠れる森の美女」「赤ずきんちゃん」「青ひげ」「長靴をはいた猫」「サンドリヨン(シンデレラ)」を始め、韻文で書かれた「ろばの皮」など全作品を収め、口承文芸研究の視点から注・解説を付した。

感想・レビュー・書評

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  • ペロー(1628ー1703)の童話集ですね。
    口承文芸として最も古い童話集です。「眠れる森の美女」「赤ずきんちゃん」「青髭」「長靴をはいた猫」「サンドリヨン(シンデレラ)」など親しい物語が納められています。
    散文の物語と韻文による物語の二部構成。
    楽しく懐かしく読み進めました。
    解説も興味深いものでしたね。
    知っている内容との比較も面白いですよ。

  • 現代にも伝わる様々な童話の原作にもなっているペローの作品たち。
    ダークさを残した原作の良さがあり大人でも楽しめる物語ばかりです。各童話の最後にペローの教訓が書かれ、風刺の利いた小気味よい一冊となっています。

    『グリゼリディス』
    最高の女性を妻に迎えた大公は、いつしか妻の完璧さに怯え非道な仕打ちを与え続ける。
    グリゼリディスの汚れない美しさと、夫も他人をも思いやる優しい心。そんな彼女に甘えきり傍若無人に振る舞った大公。大公は弱い人間としか思えず同情は感じられません。グリゼリディスにとって必要な試練だったのでしょうか…?

    『ろばの皮』
    亡くなった王妃より一層優れた新しい王妃を選ぶことにした王。その相手はなんと…!読むと『かぐや姫』と『シンデレラ』の要素に気づきます。そして若き王女の“ちゃっかり”した小細工や華々しい登場シーンにブラボーの一言。

    『眠れる森の美女』
    絵本ではなく小説として読んだのは初めて。
    100年眠っている王女のもとへ王子が一歩ずつ近づくシーン、目覚めた喜びを表したシーンは活字だからこその美しさがあります。しかしその先には、めでたしめでたしでは終わらない関門が待ち受けていました。なかなか衝撃の展開です。

    『赤ずきんちゃん』
    こちらはたった4ページ。ここで終わるの?!というラスト。

    『青ひげ』
    好奇心は命取り。

    『ねこ先生』(長靴をはいたねこ)
    無双ねこ。人は見た目に騙されやすい。

    『サンドリヨン』
    シンデレラのフランス語表記。今に伝わる『シンデレラ』とさほど違いはありません。

    『巻き毛のリケ』
    醜いが知恵のある巻毛の王子リケ。隣国の王女たちは、美人だが賢くない姉と、賢いが美しくない妹がいた。美しい姉は特殊な能力を手に入れるが…。恋は盲目。盲目はある意味幸せ?

    上記以外の作品:『愚かな願いごと』『過ぎし昔の物語ならびに教訓』『内親王様(マドモアゼル)へ』『仙女たち』『親指小僧』

  • ペロー作品を換骨奪胎した小説や漫画を読んで、
    元ネタを改めて確認したくなったので購入。
    17世紀フランスで
    太陽王ルイ14世の財務総監を務めたコルベールに認められ、
    王に仕えたシャルル・ペローが、
    韻文で書いた物語をサロンで朗読し、出版、
    続いて散文の童話を上梓――それらを束ねた作品集。
    民間伝承を纏めて教訓を加えた内容だが、
    その頃の上流階級のサロンで発表されたものには珍しく、
    子供を意識してわかりやすく書かれていたという。
    後世の文学者がツッコミたくなる箇所が
    多々あったというのも頷けるが、
    子供に向けて「聡明」「上品」「控えめであること」こそ美徳、
    と説いたのは間違っていないと思うし、一読して、
    女性に過剰な要求をする愚かな男を「ねえ、バカでしょう(笑)?」
    といった調子で描いているように受け取れるので、
    当時としては、
    かなり進歩的な考え方の持ち主だったといえるのではあるまいか。
    ちょっと驚いたのは「赤ずきんちゃん」。
    日本ではグリム版がポピュラーなので、
    結末の違いに絶句してしまった。
    それにしても「ねこ先生」は賢くてかわいくて堪らんにゃあ(笑)

  • 眠れる森の美女は、ペロー版がいい。
    上流階級子女の教育用。
    よい結婚することが女の幸せ!

  • ブログ更新:『完訳 ペロー童話集』
    http://earthcooler.ti-da.net/e9291101.html
    「おばあちゃん、なんて大きな歯をしているの?」
    「お前を食べるためさ」
    そして、こういいながら、この悪い狼は赤ずきんちゃんにとびかかって、食べてしまいました。

  • 新書文庫

  • 口承されてきた人々の物語をまとめたという点でたしかにペローの業績は先駆的だったのかもしれない。シンデレラや赤ずきんちゃん、眠り姫、ロバの皮…どういうわけかどの地方においても、細かい違いはあれど、物語の形は似通っている。時間や生活環境の違いに応じて、様々な形を見せる。
    ということは、こうした物語を語り継ぐひとの心は、こうした物語を求め、なおかつ、この物語がひとの心に深く溶け込んでいるということが考えられる。
    ペローの業績は、こうしたひとの精神の欠片を調査し集めただけではないように思える。彼は、こうした物語の原形を探ることではなく、こうした欠片たちを、フランスという国のひとの心に沿って語りなおしたところにあると思う。
    ボーモン夫人の『美女と野獣』もそうだが、フランスの心性というものは、ひとが為す行動とそれを為すひとの姿形というものに対して鋭敏な反応を見せるように思える。ひとの好意を得るにもまずは服装・身なり・お化粧。それに加えて、気の利いた社交術に一途な思い。こういったものがなければ報われることもないし、誰からも愛されない。
    因果応報というものは、何か物事を為してからしか自身の行動を見直せないひとの在り方であるが、この因果応報というものこそ、ある種の習慣をはぐくみ、ひとの行動をコントロールする規範となる。
    ある意味、フランスというのは、こういう因果応報を共同で信じて暮らしてきたそういう集団のことなのだと思う。
    姿形にひたむきな姿勢というスタイルを維持するための因果応報のモラル意識。宗教というものがどこか、形式的で政治的な感じがするのは、宗教や芸術そのものが目的ではなく、手段であるからだと思う。
    序文にも書かれているが、子どもたちは、こういう物語を吸収し続けて学んでいく。物語に書かれていることが正しいかどうかは問題ではなく、物語から学べるのは批判意識だと、池田某は言っていたが、フランスでは、こうした物語を通じて自身の行動やスタイルを吟味していく。フランスの物語はどこまでも教育的なものであった。

  • 教養として読了。
    長靴を履いた猫など、有名なのに読んだことのない作品が多く、他にも色々と読み進めていきたい。

  • 童話と共に物語に含まれる教訓が記してあって興味深かったです。教訓のない物語は小説ではない、なんて寂しい時代だと思いますが。
    当時、親が子供へ伝えたい事柄が何だったのかが窺えます。
    でもどんなに性格が良くても、第一に美人である事が条件なものばかり。自分の子供は誰よりも美しい、という気持ちの表れだとしたら素敵。
    『親指小僧』を初めて読みましたが、人食い鬼の女房が可哀想すぎる……。
    口承の昔話が源になっているそうですが、話に尾ひれがついていたり、伝言ゲームみたいに内容が変わっていたりするのかも、と想像するのもまた楽しいです。

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著者プロフィール

Charles Perrault (1628-1703)
17世紀フランスの作家、詩人。ルイ14世の宮廷に仕えた政府高官だったが、晩年に民話をもとにした作品を次つぎと公表し、フランス民話編纂の始祖として知られる。民話に独自のアレンジを加えた彼の作品は、後世に様々な影響を与え、いまでも読みつぎ語りつがれている。

「2023年 『民話の森叢書1 グラビアンスキーの絵本ペロー昔話集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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